人に寄り添うものづくりを――株式会社oveが描く革製品と福祉支援の未来

株式会社ove 代表取締役社長 茶園 尚樹氏

株式会社oveは、革製品の製造・卸売を手がける企業です。オンラインを中心に事業を展開しながら、自社製品の開発やセレクト商品の販売も行っています。一方で、単なるものづくり企業にとどまらず、就労支援施設との連携にも力を入れており、「地球に優しく人に愛を送る」という理念のもと、人に寄り添う事業づくりを続けています。本記事では、代表取締役社長の茶園尚樹氏に、創業の経緯や経営への思い、今後の展望について伺いました。

困っている人に寄り添える仕事をしたい

――会社を立ち上げた経緯について教えてください。

もともとはサービス業に従事していました。大手企業だったこともあり、マニュアルやルールは非常に整備されていましたが、その一方で、状況に応じた柔軟な対応が難しい場面もありました。本当に困って相談に来られたお客様も、単なるご意見やクレームとして寄せられたケースも、同じ基準で対応せざるを得ないことがあり、「もっと一人ひとりに寄り添った対応ができたら」という思いを抱くようになりました。

サービス業であるにもかかわらず、困っている方に適切な対応ができない。その状況に違和感を持つようになり、「それなら自分で事業をした方が、一人ひとりに寄り添ったサービスができるのではないか」と考えたことが起業のきっかけです。

――革製品を扱うようになった背景も教えてください。

車が好きで、趣味で車の内装を革に張り替えることをしていたんです。革の知識もあったので、自分の強みにできるのは革製品だと考え、取り扱いを始めました。実際にやってみると、自分なりに工夫できる余地も大きく、現在の事業につながっています。

“本当に選ぶ”セレクトショップでありたい

――現在の事業の強みについて教えてください。

商品のバイヤー業務から製造まで、基本的にはすべて自分で見ています。ネットショップ業界では、とにかく商品数を増やして横展開する店舗も多いですが、当社は違います。

長く提携している工場で製造している商品や、自社で製作している商品、そして本当に信頼できる取引先の商品だけを扱っています。単に商品を並べるのではなく、「本当に選んだ商品」を扱うセレクトショップでありたいと考えています。

――企業理念にはどのような思いが込められているのでしょうか。

当社では、就労支援施設の方々が製作した商品を販売する取り組みも行っています。その背景には、自分自身の幼少期の経験があります。

私はアトピーがひどく、幼い頃は顔を含め全身に症状が出ていました。そのことで長い間、周囲から心ない扱いを受けることもありました。精神的にも身体的にも苦しい経験でしたが、その経験があったからこそ、「同じように苦しんでいる人の助けになりたい」と思うようになったんです。

現在は、軽度障害のある方々とも一緒に仕事をしています。立つポジションによって大きく能力を発揮してくれる方も多く、そうした方々が活躍できる場をつくりたいと考えています。

信頼関係を大切にした組織づくり

――社内コミュニケーションで大切にしていることを教えてください。

あまり堅苦しい会社にはしたくないと思っています。もちろん売上や仕事の回転率など、言うべきことは言いますが、「私語禁止」のような雰囲気は自分自身が苦手なんです。

2〜3カ月に1回ほど、スタッフみんなでバーベキューをすることもあります。社員たちが自主的に企画してくれていて、現場の雰囲気はすごく良いと思います。

自分は経営に集中し、現場はスタッフに任せる。ポジションをしっかり分けた上で、あとは信頼して自由に働いてもらうことを意識しています。

――どのような人と一緒に働きたいですか。

「一匹狼」タイプの人は、あまり合わないかもしれません。特別に能力が高い人よりも、周囲としっかり連携を取れる人の方が大切だと思っています。

仕事だからといって、人への配慮を欠いたコミュニケーションをする人とは、長く良い関係を築くのは難しいと感じます。結局は調和や信頼関係が、会社にとって重要だと思っています。

海外展開と福祉支援の両立を目指して

――今後の展望について教えてください。

今後は海外展開を本格的に進めていきたいと考えています。現在は中国を含めたアジア圏への展開準備を進めており、販売ルートも少しずつ整いつつあります。

一方で、現状は日々の業務にも多くの時間を割いているため、海外事業には本格的にリソースを投下できておらず、現在は基盤づくりを進めている段階です。

また、就労支援施設との取り組みについても、さらに広げていきたいと思っています。ただ、品質や納期の安定という課題もあり、現状ではまだ調整が必要です。そのため、就労支援施設の方々が製作する商品については、別ブランドとして展開することも考えています。

将来的には、福祉施設の運営にも関わっていきたいという思いがあります。

誠実に、人を裏切らない経営を

――経営の中で譲れない価値観はありますか。

どれだけ利益が出ても、人を騙すようなやり方はしたくありません。世の中には、ギリギリのことをして利益を上げている人もいますが、自分はそういう経営をしたいとは思わないです。

革業界でも、実際とは異なる表示をして販売しているケースを見聞きすることがあります。でも、自分はお客様を騙してまで売上を作りたくない。正直に、誠実に事業を続けていきたいと思っています。

また、今一緒に働いてくれている社員は、以前勤めていた会社の上司や先輩がいてくれてます。だからこそ、恥ずかしい仕事はできませんし、まっとうな経営を続けていきたいという思いがあります。

――休日のリフレッシュ方法を教えてください。

休日は、好きな車に乗ってドライブへ出かけることが一番のリフレッシュ方法です。景色を楽しみながらゆっくり運転していると自然と頭の中が整理され、仕事のことを一度リセットできます。新しいアイデアが浮かぶことも多く、気持ちを切り替えてまた前向きに仕事へ向き合える大切な時間になっています。

また、スタッフと一緒にイベントへ出店して、お客様と直接お話しできる時間もとても楽しく、私にとって大きなやりがいの一つです。これからは百貨店への出店など、新たな挑戦にも積極的に取り組み、より多くのお客様と出会いながら、さまざまな経験を積んでいきたいと考えています。

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