育児の困難に寄り添う居場所づくり――フリースクールオリコスが目指す社会との接点
株式会社inclutia 代表取締役 三村晋也氏
株式会社inclutiaは、千葉県市原市で「フリースクールオリコス」を運営しています。不登校の児童生徒にとっての居場所であり、社会参加や学びの場として、子どもたちと家庭を支える取り組みを続けています。本記事では、代表取締役の三村晋也氏に、事業を始めた背景や今後の展望、育児にまつわる困難への思いについて伺いました。
不登校の子どもたちに、社会とつながる居場所を
――事業内容について教えてください。
フリースクールは、不登校の児童生徒、つまり学校に行けていない子どもたちを対象にした民間のスクールです。学校に行けないことで負い目や罪悪感を抱えたり、塞ぎ込んでしまったりする子も少なくありません。社会とのつながりが断たれてしまう中で、健全な育成が難しくなることもあります。
私の兄も学校に行かなくなってから、ずっと家にいるような状態になりました。また、自分の息子も不登校になったことがありました。もともと教育に携わっていた経験もあったため、そうした子どもたちの居場所、そして社会参加の場所をつくりたいと考え、フリースクールを立ち上げました。
――対象となる子どもたちはどのような年代ですか。
明確に何歳までという定めはありません。基本的には小学生、中学生のお子さんが中心です。これまでには幼稚園の年長の子や高校生が来ていたこともあります。
市原市内でフリースクールは多くなく、当スクールを含めて2つほどです。全国的にもまだ多いとはいえません。不登校の子どもは急増しており、全国で35万人います。行かなくてもよいという考え方が広がる一方で、学校に行かない場合の支援の輪が十分に整っていないことが課題だと感じています。
教育者としての経験と、当事者としての実感
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
自分の兄や息子の経験が大きいです。加えて、私は以前、教育の仕事をしていました。中学校では体育を教え、その後は小学校で全教科を担当していました。その経験を生かして、不登校の子どもたちを支えたいと考えました。
フリースクールを立ち上げたのは2022年9月です。まだ始めてから1年半ほどですが、現在は週1回のアルバイトの方も含めて8人ほどの体制で運営しています。生徒数は出入りがありますが、現在は17人ほどです。
――フリースクールでは、どのような活動を行っていますか。
一つは居場所としての役割です。社会とのつながりを持てる場所であることを大切にしています。もう一つは教育活動です。国語や算数といった学習はもちろん、体験活動なども行っています。学校に近い活動をすることもあれば、独自の活動を行うこともあります。
地域企業とのつながりも少しずつできてきました。動画制作などの仕事をいただく中で、子どもたちが体験学習や見学に行かせてもらえる機会もあります。将来的に、子どもたちが「ここに興味がある」と感じられるきっかけになれば嬉しいです。
家庭も支える仕組みをつくる
――事業の特徴について教えてください。
利用料は本当に微々たるものなので、現在は補助金が大きな支えになっています。ただ、補助金に頼りきりでは不安定です。そのため、事業を多角化していきたいと考えています。
特徴の一つとして、保護者の仕事の支援があります。不登校の子どもを抱える家庭では、特にお母さんが精神的なケアや日常の世話を担うことが多く、仕事ができなくなるケースがあります。私自身も、もう一人の子どもに障害や医療的ケアがあり、人工呼吸器を付けているため、親が常に付き添わなければならない経験をしてきました。
――具体的にはどのような支援をされていますか。
地域企業からSNS動画やイベント動画、PR動画の制作、チラシや名刺、ポスター、ホームページ制作などの仕事をいただき、その一部を保護者の方にお願いしています。編集やデザインを学んでもらい、報酬をお支払いする形です。
在宅でできる仕事であれば、不登校に限らず、障害や医療的ケアのあるお子さんを抱える方も少し働くことができます。現在はフリースクールの一サービスのような形ですが、今後はフリースクール事業とは別に、BtoB支援やプロモーション支援、事務代行など、BPOに近い事業として拡大していきたいです。
育児の困難を解決するソーシャルビジネスへ
――今後取り組みたい新しい挑戦はありますか。
会社としては、不登校の子どもや家庭だけでなく、障害や医療的ケアのある子どもを育てる家庭など、育児に困難を抱える家庭を支援していきたいと考えています。特にお母さんが孤立しやすく、理解や支援が十分に広がっていないことを実感しています。
医療的ケアが必要な子どもがいると、外出するだけでも多くの制限があります。酸素ボンベや人工呼吸器、車椅子が必要だったり、途中でケアをしなければならなかったりします。社会にアクセスしづらいものを取り除くような事業をしていきたいです。
――具体的に考えている取り組みはありますか。
直近では宿泊に関する事業を考えています。医療的ケアがあると、旅行に行くことが難しい家庭が多いです。そうした子どもや家族が泊まりやすい施設設備を整えた場所があるとよいのではないかと思っています。
ホテルにするか、民泊や小規模な宿にするかはまだ検討段階です。ただ、一般的なバリアフリーは段差がない、廊下が広いといった程度にとどまることが多く、医療的ケアのある子どもが安心して泊まれる宿泊施設は少ないと感じています。当事者としての経験を生かし、育児の中で困難を抱える家庭に寄り添う事業をつくっていきたいです。
――現在向き合っている課題は何でしょうか。
人材不足です。特に営業人材が足りていません。当社は動画制作会社やBPO会社として打ち出しているわけではないため、営業面での強みもまだ弱いと感じています。
一方で、仕事を依頼していただくことが、フリースクールの活動や、働きたくても働けない保護者の就労支援につながります。社会貢献につながるという価値を、どう伝えていくかが課題です。
読書を通じて視野を広げる
――お休みの日のリフレッシュ方法を教えてください。
なかなか時間は取れていませんが、本を読むことが好きです。教育関係の本はもちろん、ビジネス書、社会学の本、小説など、さまざまな分野の本を読みます。
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
育児に関するソーシャルビジネスに関心のある企業や個人の方がいれば、ぜひつながれたらと思っています。協業という形もありますし、スポンサーという形もあるかもしれません。
フリースクールとしては、資金面だけでなく、子どもたちの職場見学や体験学習に協力していただけることも大変ありがたいです。不登校の子どもたちを少しでも支援したいと考えてくださる方がいれば、ぜひお声がけいただきたいです。