人に向き合い、必要とされ続ける存在へ――ドリームシアターが大切にするデイサービスのかたち
株式会社ドリームシアター 代表取締役 山根 亮輔氏
株式会社ドリームシアターは、定員14名の地域密着型通所介護、いわゆるデイサービスを運営しています。認知症の方も多く利用するなかで、無理に新しい活動を増やすのではなく、利用者が毎日続けられる日常を大切にしている点が特徴です。本記事では、代表の山根亮輔氏に、事業への考え方や組織づくり、今後の展望などについて詳しく伺いました。
日常の一部として寄り添うデイサービス
――現在の事業内容について教えてください。
当社は介護保険事業として、定員14名の地域密着型通所介護を運営しています。一般的にいうデイサービスで、朝夕の送迎も行っています。
――事業における特徴や強みはどのような点にありますか。
大きなこだわりがあるわけではありませんが、強いてあげるとすれば、「スタッフ力」でしょう。当社では、一般企業の商品や商材にあたるのは、実際に業務を行う職員だと考えており、職員が働きやすく、できるだけ満足度を高く保って仕事ができる環境をつくることで、それぞれが力を発揮できる会社を目指しています。
また、当社では機能訓練やレクリエーションを過度に行わない点も大きな特徴です。認知症の方が多いこともあり、新しいことや難しい活動を毎日取り入れるのは簡単ではありません。この事業を11年続けてきたなかでたどり着いたのは、利用者様が毎日継続できる活動を淡々と続けるスタイルです。
内容は少しずつ変えますが、基本的には通所されて、いつもどおりのことをして、いつもどおり、食事を済ませてご帰宅される――そうした日常の一部を構成する役割を担っているのが当社です。そうすることで職員の負担も軽くなり、利用者様の満足度も保ちやすくなると考えています。
――サービスに込められている想いや理念を教えてください。
とにかく、何であれ必要とされる存在であり続けることを大切にしています。利用者様からだけでなく、ご家族やケアマネージャーにとってもそういった存在でありたいんです。
当社には、ほかの事業所で断られたり、なかなか馴染めなかったりした利用者様がご紹介で来られることも多くあります。なかにはケアマネージャーから話を聞いて難しそうだと感じるケースもありますが、基本的には断りません。まずは一度来ていただき、きちんと向き合ってみる、そしてそのうえで難しいと感じた場合には、ケアマネージャーと一緒に問題解決に向けて改めて考えるようにしています。
そうした姿勢を続けていると、自然とケアマネージャーとの関係性も築かれていきます。このように、関係者とも表面的な付き合いではなく、一緒に同じ方向を向いて問題解決ができる関係でありたいと心がけています。
子どもたちとの生活を守るために
――福祉業界に入られたきっかけを教えてください。
もともとのきっかけは、父子家庭になったことでした。私には双子がいるのですが、子どもたちが2歳のときに父子家庭になり、その際に子育てに理解のある職場を探してたどり着いたのが、福祉業界です。この業界には子育てに理解のある職場が比較的多かったため、働くことに決めました。
過去には、この仕事をしながら、父子家庭への支援を求める市民活動にも取り組みました。当時は父子家庭への支援がほとんどなく、母子家庭と同じような支援を受けられるようにしたいという想いから、仲間と全国組織やNPO法人をつくる活動もしました。
福祉の仕事では、生活のために18時間ほどの夜勤を月に21~22回ほどこなしていた時期もあります。日中は子どもたちをみて、夜は両親に助けてもらうといった生活を何年も続けました。
結果的に福祉の現場に長く関わることとなり、勤めていた施設で一緒に働いていた同僚とともに、自分たちでデイサービスを始めたことが現在につながっています。
経営は、人がいてこそ成り立つもの
――経営において大切にしている考え方はありますか。
武田信玄の言葉に、「人は城、人は石垣、人は堀」というものがあります。私も、まさにそのとおりだと感じています。
どれだけ立派な仕組みをつくっても、人がいなければ経営はできません。私一人で何かをやろうとしても限界がありますし、スタッフがいてこそ会社は成り立ちます。
もちろん、人に関することで失敗することもあります。それでも、経営のなかで「人」を大切にするという考えはずっと念頭に置いてきました。
――採用や一緒に働く人に求めることは何でしょうか。
介護業界では人を選んでいる場合ではないという現実もありますが、そのような状況のなかでも重視しているのは、最低限の社会常識です。たとえば、朝きちんと時間どおりに来ることや、休むときにはLINEだけで済ませるのではなく、電話で連絡すること――そうした基本的なことができる人であれば、仕事はこなせるはずだと思っています。
また、私たちの仕事は、人を相手にする仕事であり、家庭の延長のような部分もあるものですので、誰かが大変なときには助け合う、といった「お互いさま」の精神を自然に持てる人と働きたいです。
――職員の働きやすさのために取り組んでいることはありますか。
介護業界には、給与水準が低く設定されがちな面があります。そのなかでも、できるだけ従業員の満足度を上げたいと考えた結果として、休憩室は一人一部屋用意するようにしています。
この業界では複数人が同じ部屋で休憩を取ることも多いため、「これでは休憩にならない」と感じる人もいるでしょう。私自身もそれが嫌でしたので、一人で休める環境をつくりました。
また、過去には週休3日制を試したこともあります。賃金を上げつつ、それ以上に稼ぎたい人にはダブルワークも認めてきました。会社としてできることは限られていますが、できる範囲で働きやすい環境を整えていきたいと思っています。
細く長く続けることで、会社の価値を高めていく
――今後の展望について教えてください。
今は、会社を細く長く続けていくことが当面の目標です。事業を大きく拡大するというより、現在の会社を維持しながら、最終的には会社として価値がある状態にしていきたいと考えています。
そのためには、利益率をよくして、会社の付加価値を高めていくことが必要です。同時に、従業員の質を高めていくことも大切だと思っています。日々の小さな積み重ねを通じて、会社としての価値を少しずつ高めていきたいです。
――最後に、読者の方にメッセージをお願いします。
世の中には、素晴らしい経営者が数多くおられます。立派なことを語られている方も多いかもしれませんが、私のように人間臭い経営者もいるということを知ると、少しは安心していただけるのではないかと思います。
私のような人間でもなんとかなっていると思っていただければ、それに尽きます。ですので、思い立ったらどんな形であってもぜひ挑戦してみてほしいです。