受け継いできた信頼を、これからの探偵業界へつなぐ

株式会社帝国興信所 代表取締役社長 谷口 卓爾 氏

長年にわたり調査業(探偵業)に携わり、時代の変化とともに求められる役割や責任に向き合ってきたと話す谷口氏。企業調査、個人信用調査、行動調査などを担う中で、何よりも大切にしてきたのは、お客様からの信頼です。個人情報への意識が高まり、調査のあり方そのものが問われる時代においても、長く受け継いできた姿勢を守りながら、社員教育や現場対応の精度向上に取り組んでいます。今回の取材では、事業の特徴や企業としての歴史、教育面でのこだわり、リフレッシュ方法などについて伺いました。

長い歴史の中で受け継いできた「興信所」という看板

——現在の事業の特徴について教えてください。

現在の探偵業には、企業調査、個人信用調査、行動調査といった分野がありますが、そうした中で、私どもは現存する会社の中でも非常に長い歴史を持っていることが大きな特徴です。

この業界では、長く続いている会社でも、40年ほどの歴史というところが多く、中には10年に満たないところも少なくありません。そうした中で、私どもは75年余りにわたり続けることができました。

また、現在、皆さんが目にされるのは「探偵事務所」や「調査事務所」といった名称が多いと思います。その中で、私どもは今も「興信所」という名前を名乗り続けています。若い方にはなじみが薄い言葉かもしれませんが、古くから親しまれてきた名称です。その看板を大切にしながら、現在まで受け継いできたことも、私ども「帝国興信所」の強みの一つです。

先代の背中を見て入り、50年以上歩んできた調査の道

——経営の道に進まれたきっかけを教えてください。

私は2代目です。先代がおりまして、学生時代にその影響を受け、アルバイトとして尾行調査のような仕事に携わったことが、この業界に入るきっかけでした。

その後、いろいろな経験を積み、他のところで働くことも含めて学びながら、後を継いで現在に至ります。この仕事に携わってから、もう50年以上になります。

——経営判断の軸になっている価値観はありますか。

私自身は25歳の時にこの業界に入りました。当時と今では、行政の考え方や法律の問題、個人情報をめぐる環境などが大きく変わっています。昭和の時代、特にバブル前の頃は、個人情報が今よりもはるかにオープンな時代でした。そこから徐々に制約がかかるようになり、現在は非常に難しい時代になっています。

また、以前はあまり想定されていなかったストーカー事案の問題もあります。現在は探偵業者を自分の手先のように使い、相手の個人情報を得ようとする悪人もいる時代です。

そのため、「依頼者に騙されてはいけない」ということを強く意識しています。重大な事件や社会問題が起きるたびに、容疑者が私どものような探偵業者を悪用してはいないだろうかという懸念を抱きます。

だからこそ、依頼内容をしっかり吟味し、法律的な面も踏まえて、受けるべきものかどうかを慎重に判断しています。

——尊敬している方や、影響を受けた方はいらっしゃいますか。

一にも二にも先代です。私にとって先代は兄にあたります。先代はこの業界を昭和の時代に引っ張ってきた存在です。

当時、この業界には前に誰もいないような状況の中で、道を切り開いてきました。その姿が、私にとって最も尊敬する存在であり、大きな影響を受けた人です。

現場で働く社員を支える、制度と教育へのこだわり

——組織運営や社員との関係で、大切にしていることを教えてください。

私どもは昭和の時代から営業してきました。当初、この業界で大きな規模を持つ会社は本当に限られていました。そうした中で、調査業協会などの団体設立にも関わり、社員に対する福利厚生や待遇についても、早い時期から力を入れてきました。

ご依頼を受ければ、当然、調査の現場が発生します。全国に調査員が出張することは日常茶飯事で、時には長期に及ぶこともあります。その際の宿泊や給与体系などについても、社員が安心して働けるよう、制度を整えてきました。

——採用や育成の際に、重視していることはありますか。

この仕事は大変難しい仕事です。応募してくださる方には、まず最初に、この仕事が好きでないといけないとお伝えしています。

この仕事は、人が楽しんでいる時、遊んでいる時に働かなければならないことがあります。旅行やレジャーの時期、正月やお盆なども同じです。皆さんが休んでいる時に、私どもは一生懸命働かなければならない場面があります。

そうした仕事の特性を理解し、それでもこの仕事をしたいと思えるかどうかが大切です。面接の前にも、電話でそうした点に触れ、仕事への理解を持っていただくようにしています。

人の心に向き合う仕事だからこそ、磨き続けるべき技術がある

——今後の展望や、挑戦していきたいことを教えてください。

最近はAIの導入がさまざまな分野で話題になっています。しかし、私どもの探偵業は、AIではどうしても立ち入れない領域があります。人の心の中に触れなければならない仕事だからです。

お客様や対象者に対するフォロー、あるいはカウンセリングのような部分では、ある程度アナログ的な手法や思考も必要です。そうした面について、研修会などの機会を通じて社員に教育しています。

これからもまず大切にしたいのは、お客様のために、お客様の幸せを追求することです。それが私どもに課せられた任務だと考えています。

——現在感じている課題について教えてください。

最近は、人々の住まい方が変わってきました。以前は戸建てや市営住宅、文化住宅のような建物が多くありましたが、今は高層マンションが増えています。そうなると、結婚前調査などで重きを置く周辺取材や関係者取材が、非常に難しくなってきます。

また、現在は詐欺事件なども多いため、各家庭を訪問してインターホンを押しても、なかなか玄関まで出てきていただけません。インターホン越しでは、深い話を伺うことは難しいです。

だからこそ、人にものを尋ねる際の礼儀、言葉遣い、取材の方法が非常に重要になります。特に、結婚相談所やマッチングアプリなどを通じた出会いが増加する中で、結婚詐欺に関するご相談もあります。

事前の予防として私どもに調査を委ねてくださるお客様に、正しい回答をお渡しできるかどうか。そこが最も難しいところです。

走りながら仕事を考える時間が、何よりの気分転換

——お休みの日のリフレッシュ方法を教えてください。

60歳を過ぎてからマラソンを始めました。キャリアとしてはまだ短いですが、もう15年ほどになります。土曜日などには渋谷にある自宅から皇居まで走ることもあります。皇居を周回して自宅へ戻ると、大体20km近くになります。

走りながら、お客様のこと、仕事のこと、社員のことなどを頭の中で巡らせています。楽しく走れる時もあれば、しんどい時もありますが、それでも続けています。

おかげさまで東京マラソンも5回ほど走りました。地方では那覇マラソンから北海道マラソンまで、休みを利用して走っています。これが私にとって一番の息抜きです。

お客様の幸せを追求するという仕事の根本を大切にしながら、これからも社員とともに、必要とされる調査を続けていきたいと考えています。

Contact usお問い合わせ

    お問い合わせ内容
    氏名
    会社名

    ※会社・組織に属さない方は「個人」とお書きくだい

    役職

    ※会社・組織に属さない方は「一般」をお選びください

    メールアドレス
    電話番号
    どこでお知りになりましたか?
    お問い合わせ内容

    プライバシーポリシーに同意して内容を送信してください。