経済格差を教育格差にしない「ゆみねこの教科書」が描く、すべての子どもに開かれた学習のセーフティネット

ゆみねこの教科書教育メディア合同会社 代表社員 檜垣由美子氏

「教科書の説明が、もう少し分かりやすかったら……」。そんな一人の母親としての実感が、月間最大80万PVを誇る巨大な学習支援メディアを生み出しました。ゆみねこの教科書教育メディア合同会社が運営する「ゆみねこの教科書」は、小中高生を対象に、学校の授業に完全準拠した解説やテスト対策を無料で提供しています。

代表の檜垣由美子氏は、日本航空での勤務を経て、未経験からこのメディアを立ち上げました。そこにあるのは「経済格差を教育格差にしてはいけない」という強い信念と、多忙を極める学校現場を支えたいという切実な想いです。個人の情熱から始まった活動が、今や映画や漫画の監修、そして学校現場でのDX支援へと広がりを見せています。

「教育のセーフティネット」を目指して:理念と事業の現在地

――まずは、運営されている学習支援メディア「ゆみねこの教科書」の概要と、大切にされている理念についてお聞かせください。

一言で申し上げますと、小中高生向けの学校の授業に完全準拠した学習支援メディアの運営です。現在は全学年・全教科を網羅すべく、コンテンツの拡充を急いでいます。私一人の手で記事を制作しており、最終的には1万記事以上を目指していますが、現在は約1800記事まで到達しました。最近ではAIも活用しながら制作効率を高め、内容の確認や調整を重ねつつ、直近2ヶ月だけでも200記事以上を公開しています。 

私たちの最大の軸は「無料で開放する」ことです。このメディアを立ち上げたきっかけは、私の娘が高校受験の際、教科書や塾の授業に苦労していたことでした。一緒に勉強を教える中で、既存の教材の難しさを実感したのです。同時に、運営を通じて「経済的な理由で塾や家庭教師にアクセスできない」という子どもたちの切実な声を多く耳にしました。経済格差が教育の格差であってはならない。勉強したいと願うすべての子どもたちが、等しく学べる場を提供し続けることは、絶対に譲れない信念です。

――ビジネスモデルとしては、どのような形をとられているのでしょうか?

現在はGoogle AdSenseによる広告収入を主軸としながら、最近では新たにサブスクリプション型の学習支援サービスも開始しました。 これは「ドリルシステム」というWeb上で自動採点ができる仕組みを、学校の先生や保護者向けに提供するものです。

現場の先生方から「多忙で一人ひとりのサポートまで手が回らない」という悩みを伺い、先生がURLを共有するだけで、子どもたちの採点結果がリアルタイムで管理画面に反映されるシステムを開発しました。これにより、丸付けや宿題管理の負担を軽減し、先生方がより本質的な教育活動に時間を割けるよう支援したいと考えています。

キャリアの転換点:航空業界から教育メディアの世界へ

――檜垣代表のキャリアについて教えてください。教育とは異なる分野からのスタートだったと伺いました。

以前は日本航空(JAL)で発券カウンターの業務に携わっていました。大学は教育学部でしたが、卒業後は全く異なる業界に身を置いていたんです。教育メディアを立ち上げる直接のきっかけは、自宅を建てる際に、自分でキッチンやインテリアの図案を制作し、オーダーメイドキッチンの制作会社の方に提案したことでした。その縁でメディア運営の仕事を任されるようになり、WordPressの操作やデジタルイラストの技術を習得したんです。

「娘に勉強を教えた経験」「Webメディアの運営スキル」「趣味のイラスト」――この3つが自分の中で結びついたとき、「自分でサイトを作ってみよう」と思い立ちました。当初は個人の活動として始めましたが、次第に子どもたちから「勉強が楽しくなった」というコメントが1万2000件以上も寄せられるようになり、この活動はもはや個人の枠を超えた、社会課題を解決するためのものだと確信するようになりました。それが法人化を決意したきっかけです。

――未経験からシステム周りまでご自身で手がけられたのは驚きです。

JAL時代の経験が生きているのかもしれません。当時は非常に複雑なシステムを扱う過酷な環境でしたが、そこで鍛えられたおかげで、新しいシステムを触ることに抵抗がなかったんです。「こうすれば、こう動く」という発見が楽しくて、独学でここまでやってきました。

組織のあり方とこれからの展望

――現在は1名で運営されていますが、今後の組織運営やコミュニケーションについてはどのようにお考えですか?

かつて外注を検討した時期もありましたが、私の想いやニュアンスを記事に乗せることが難しく、現在は、自分自身が中心となってコンテンツ制作に深く関わり、一つひとつ表現を調整しながら記事を作っています。 ただ、今後は全学年・全教科を揃えるという目標を早期に達成するため、また教員免許を持たない私自身の補完として、コンテンツの正確性を担保するための専門家(教授や有資格者)によるチェック体制を整えていきたいと考えています。

――未来に向けて、どのような挑戦をしていきたいですか?

まずはコンテンツの完遂ですが、その先には「学習のセーフティネット」を強固に構築したいという夢があります。ダッシュボード機能を拡充し、先生や保護者が子どもの学習状況をより深く把握できる仕組みを作りたいです。

また、個人的な夢としては、いつか書籍という形でも子どもたちに学びを届けられたらと思っています。例えば、歴史を親しみやすく解説したコンテンツは子どもたちに非常に好評です。「勉強」というより、「読み物」として楽しみながら、いつの間にか知識が身についているような、そんな学習の形を広めていきたいです。「勉強が苦手でも、ここなら少しわかるかもしれない」と思ってもらえるような、子どもたちにとって身近な学習の場を提供できる教育インフラを作っていきたいと思っています。

リフレッシュの秘訣と読者へのメッセージ

――多忙な日々かと存じますが、リフレッシュ方法や趣味はありますか?

子どもの頃から続けているピアノが一番のリフレッシュです。今でもレッスンに通い、発表会に出たり、時にはストリートピアノで演奏したりもします。行き詰まったときに鍵盤に向かうと、気持ちがリセットされるんです。ただ、今の私にとってはコンテンツ制作自体も趣味の延長のようなもので、記事を書いている時間が何より楽しいですね。

――最後に、この記事を読んでいる経営者や起業を志す方へメッセージをお願いします。

私の信念は「やれば大抵のことはできる」ということです。私自身、特別な開発経験があったわけではありませんでしたが 、一歩踏み出したことで、今では月間数十万人の方に見ていただけるメディアを作ることができました。

トライ&エラーを繰り返しながら進んでいけば、必ず道は拓けます。まずは軽い気持ちで、一歩を踏み出してみてください。その一歩が、想像もしなかった未来に繋がっているはずです。

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