小さな店に本場の味を宿し、未来へつなぐ職人の歩み
株式会社パティスリーパーク 代表取締役 チョルス・パク氏
株式会社パティスリーパークは、洋菓子の製造販売を行う会社です。路面店として、自社で一つひとつ手作りすることを大切にしながら、本場フランスでも通用する味づくり、菓子づくり、店づくりを目指して歩んできました。代表のチョルス・パク氏は、職人としての信念を持ち続けながら、変化する時代の中で店のあり方を見つめ直しています。今回は、創業の背景や経営における考え方、社員との関係、今後の展望について伺いました。
本場の味を守る職人の信念
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
当社は、洋菓子の製造販売を行っています。特徴としては、路面店において、自社で全部手作りしていることです。今の時代から見ると、少し時代錯誤に感じられる部分もあるかもしれませんが、そこが当社の大きな特徴だと考えています。
私自身、この洋菓子の道を歩む中で、修行時代にはフランス菓子を中心に学んできました。そのため、開業して約31年となる現在も、作っているものはフランス菓子であり、本場フランスでも通用する味づくり、菓子づくり、店づくりを目指して続けてきました。
単に商品を並べるのではなく、職人として納得できるものを作ることを大事にしています。店の規模は大きくありませんが、小さいお店だからこそ、自分たちの目が届く範囲で、手作りの価値を守りながら営業してきました。
独立に込めた生きる覚悟
――経営者になられた経緯を教えてください。
私の修行時代は、今とはまったく環境が違いました。昭和の時代であり、長時間労働が当たり前で、休みもほとんどありませんでした。正直なところ、このままでは将来ご飯を食べていけないのではないかという、切実な思いがありました。
その問題を打開するにはどうすればいいのかを考えたとき、自分で店を立ち上げて、経営していくしかないと強く感じました。そうした思いから、店を立ち上げることになりました。
――経営判断をする上で大切にしている価値観は何でしょうか。
小さいお店だからこそ、すべて自分が意思決定をしなければならないという思いでやってきました。大きな企業であれば、そういうわけにはいかないと思いますが、小さい店には瞬発力が必要ですので判断は、自分の考えで行ってきました。今の時代では、ワンマンに見える部分もあるかもしれません。ただ、小さい店を続けていくには、経営者が引っ張っていく強さも必要だと感じています。のんびりしていては経営は難しいと思っています。
社員を大切にする店づくり
――組織運営で意識していることを教えてください。
現在は事業を縮小しており、社員2人とアルバイト、そして私の4人でやっている小さな店になっています。以前、社員を何人も抱えていた時期もありましたが、その頃から変わらず大切にしてきたのは、社員を大事にすることです。少し抽象的な表現になりますが、常に社員のことを考え、思いやりを持って接してきました。それが一番大事だったと思っています。時代が変わり、受け止め方も変わってきている部分はありますが、自分としては社員を思う気持ちを大切にしてきました。
――今後、採用や後継者育成を考える場合、どのような人と一緒に働きたいですか。
一言で言えば、情熱を持って仕事に取り組む人です。どんな仕事も大変ですし、それぞれに苦労があります。ただ、その大変さに打ち勝つような精神力を持っていないと、今の時代の中で埋もれてしまうのではないかと感じています。
未来へつなぐための選択
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
現在は、少し縮小の方向へ持っていっています。その理由として、今の洋菓子業界は非常に厳しい時代に入っていると感じているからです。働き方改革をはじめ、限られた時間の中でものを作っていくことの難しさがあります。また、給与面も昔とは違って上がってきています。経営側としては、材料費や人件費、社会保険などを考えたとき、価格転嫁をしていかなければなりません。ただ、日本の社会の中で、お菓子1個に800円、900円、1000円という価格をつけることは、簡単ではないと感じています。収入の格差もありますし、購買力がすぐに追いつくわけではありません。昔であれば、物価上昇があっても1年ほどで価格転嫁が受け入れられ、経営していけた感覚がありました。しかし、今回は1年や2年では収まらず、4、5年はかかるのではないかと感じています。
そのため、今は大きく広げるのではなく、なるべくスマートに、コンパクトな形で続けていくことを考えています。自分自身も作り手であり、生産者でもあります。体が動くうちは、まだ続けていきたいと思っていますし、その先に向けた準備をしていかなければならないと感じています。
また、後継者となる人材がいれば、いずれバトンタッチしていけたらという思いもあります。未来永劫、自分が働き続けられるわけではありません。だからこそ、店をどうつないでいくかも、これから考えていきたいことの一つです。
仕事と余暇を楽しむ姿勢
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
休みの日でも店にいることがあります。今日も店は休みですが、仕込みをしていました。仕事が趣味というわけではありませんが、ものづくりが趣味なので、店にいて作業をしていること自体が、ある意味ではリフレッシュの一つになっています。
また、60歳を過ぎてから、若い頃にできなかったサーフィンを始めました。若い頃は、休みもなく長時間働いていて、休みの日は疲れて何もできない時代でした。今は湘南の方まで行って、まだうまくはありませんが、サーフィンをしながらリフレッシュしています。
ワークライフバランスという言葉もありますが、仕事と余暇のどちらかに偏りすぎるのではなく、よいところでやっていければいいのではないかと思っています。
――最後に、読者の皆さんにお伝えしたいことはありますか。
今の世の中では、若い人についていろいろと言われることがあります。ただ、私の時代も同じように言われていました。その中でも、一生懸命やっている人は必ずいます。そういう人たちが報われる世の中になっていけば、それが一番いいことだと思っています。