AIで現場課題を変えていく――Ascend Logicが描く“物理AI”の未来

株式会社Ascend Logic 代表取締役 早乙女 琉真氏

株式会社Ascend Logicは、企業や自治体向けに生成AIを活用した受託開発を手がける企業です。企業のDX支援からAIコールセンター、専門性の高い業界向けチャットボット開発まで、幅広い分野でAI導入を支援しています。本記事では、代表の早乙女琉真氏に、創業の背景や現在の取り組み、今後の展望などについて伺いました。

生成AIを活用した受託開発で企業・自治体を支援

――現在の事業内容について教えてください。

当社では、企業様や自治体様向けに、生成AIを活用したオーダーメイド型の受託開発を行っています。具体的には、AIソリューションやSaaSプロダクトの開発支援から、生成AIを活用した業務DXの企画・設計・実装までを一貫して支援しています。

近年は「生成AIを活用したいが、具体的な使い方が分からない」という企業様も多いため、単なる開発だけではなく、業務課題の整理や活用方法の提案といった上流部分から伴走するケースも増えています。

クライアントは、不動産業界や建築業界、自治体、個人事業主の方まで幅広く、業界ごとの課題や業務特性に合わせたAI活用を提案している点が特徴です。

――自治体ではどのような取り組みを行っているのでしょうか。

自治体向けでは、業務課題に対して当社からAI活用をご提案するケースが多く、現在は電話対応業務を効率化する「AIコールセンター」のPoC(概念実証)などを進めています。

例えば、住民票の取得方法といった定型的な問い合わせに対して、AIが一次対応から回答までを担い、必要に応じて庁内システムとの連携まで自動で行う仕組みです。職員の方には、イレギュラーな案件のみ対応いただく形を想定しています。

自治体では慢性的な人手不足や業務負荷の増加が課題になっていますので、AIを活用しながら、現場の業務効率化につなげていきたいと考えています。

――建築業界向けにはどのような支援をされていますか。

社内ドキュメントを横断的に検索できるチャットボットの構築を行っています。建築業界は図面など視覚情報を含む資料が大量で、専門用語も多いため、一般的な検索システムでは運用が難しいケースがあります。

そこで、図面データに特化したチューニングを行い、「どの資料に該当するか」「図面内の情報をどのように読み取るか」といった部分までAIが対応できる仕組みを構築しました。

――御社ならではの強みについて教えてください。

当社の技術的な強みは、音声AI領域にあります。特に、自治体向けに提案しているAIコールセンターのような、人とAIの自然な対話を実現する技術には力を入れています。

音声AIでは、単純なチャットボット以上に複雑な技術が必要です。会話の流れを理解しながら、適切な回答やシステム連携まで行う必要があるためです。

そのため、音声対話や音声認識を含めた領域での知見は、当社の大きな強みになっていると思います。

エンジニア経験を経て起業へ

――経営の道に進まれた経緯を教えてください。

前職では、LINEヤフー株式会社でエンジニアとして勤務し、営業支援向けのデータ基盤構築や、生成AIを活用した業務効率化に携わっていました。

そのなかでAI活用によって現場業務が大きく改善される事例を数多く見てきたこともあり、「この知見は、もっと幅広い業界の課題解決に活かせるのではないか」と感じるようになったんです。そこで、自ら事業として展開していきたいと考え、起業を決意しました。

――現在の組織体制についてもお聞かせください。

現在は業務委託を含めて6名ほどの体制で運営しており、正社員ベースでは私を含めて3名体制となる予定です。営業を担当するメンバーと、技術領域を担うCTOがおり、少数精鋭の体制で事業を進めています。スタートアップのため役割を固定しすぎず、全員が幅広く動いている点も特徴です。

私自身は現在、エンジニアリングよりも、営業や事業開発などビジネスサイドの業務に注力しています。

“物理AI”でブルーカラー領域を変えていきたい

――現在感じている課題はありますか。

現在の課題としては、やはり新規開拓やリード獲得の部分が大きいです。現状は対面での営業活動を中心に進めているため、一社一社と深く向き合える反面、効率面ではまだ改善の余地があると感じています。今後は営業メンバーも加わる予定ですので、体制を強化しながら、より安定的に案件を獲得できる仕組みを整えていきたいと考えています。

また、AI業界特有の難しさとして、技術やトレンドの変化が非常に速い点もあります。半年かけて開発したものが、数カ月後には汎用AIで実現できるようになるケースも珍しくありません。

だからこそ、単純な機能開発ではなく、「どの領域に継続的な価値が残るのか」を見極めながら、スピード感を持って事業を進めていく必要があると感じています。

――今後の展望について教えてください。

将来的には、「物理AI」の領域に本格的に取り組んでいきたいです。現在の生成AI活用はホワイトカラー業務の効率化を中心に広がっていますが、建築や点検といったブルーカラー領域には、まだ十分にAIが浸透しているとはいえないと感じています。

特に、人が入りづらい危険区域での点検業務や、人手不足が続く現場領域などでは、AIによる自動化のニーズが今後さらに高まるはずです。例えば、カメラを搭載したロボットが現場を巡回し、自律的に異常検知や点検を行うような仕組みです。まずは建築業界や設備点検領域から着手し、将来的には介護など、より社会インフラに近い領域にも広げていければと思っています。

私たちが開発したいのは、ロボットそのものではなく、その“頭脳”となるAI・ソフトウェアの部分です。これまで培ってきた生成AIやシステム開発の知見を活かせる領域でもありますし、現場で実際に使われる仕組みに落とし込むことが重要だと考えています。

単なる業務効率化ではなく、人手不足や危険作業といった社会課題の解決につながる領域に、今後はより深く挑戦していきたいです。

――最後に、これから起業を目指す方へメッセージをお願いします。

個人的には、「いつかやろう」と思っていることがあるなら、できるだけ早く挑戦したほうがよいと思っています。健康な状態で高いパフォーマンスを出し続けられる時間というのは、実はそこまで長くないと感じているからです。

起業に限らず、新しいことに挑戦する際は不安もあると思いますが、実際に動いてみないと見えないことも多いのが実情です。仮にうまくいかなかったとしても、その経験自体が次につながるケースは多いと思っています。

だからこそ、準備が完璧に整うのを待つよりも、まずは一歩踏み出してみることが大切なのではないでしょうか。今が一番動けるタイミングかもしれませんし、挑戦するなら早いほうよいかと思います。

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