「まちに育まれる」という温かな思想――まちのこ団が描く、子どもと地域の未来

一般社団法人まちのこ団 代表 増田大和氏

一般社団法人まちのこ団は、子どもの居場所づくりや地域コミュニティ形成を軸に活動する団体です。移動式あそび場「コミュニティプレイバス事業」や放課後の居場所づくり「まちのこベース」などを通じて、地域の中で子どもたちが安心して過ごせる場づくりに取り組んでいます。「人はみんなまちに育まれる“まちの子ども”」という理念を掲げる増田大和氏に、事業への想いや今後の展望について伺いました。

まちで育ち、まちで支え合うという考え方

――現在の事業内容について教えてください。

現在は、大きく4つの柱で事業を展開しています。

一つ目が、「コミュニティプレイバス事業」です。プレイバスと呼ぶ車に自然素材や遊び道具を積み込み、まち中に即席の遊び場を作る取り組みです。子どもたちが安心して過ごせる居場所を地域に届けています。

二つ目は拠点型の居場所づくり「まちのこベース」です。「ここに来れば誰か知っている人がいて、思い思いに過ごせる場所がある」という固定拠点型の場づくりを行っており、主に小学生の放課後の居場所として運営しています。

三つ目が、「企画運営・まちづくり事業」です。あそび場づくりの経験を活かし、行政や企業と連携しながら駅前活性化など地域づくりに関わる企画を行っています。

さらに今年度からは、指定管理による子育て支援施設の運営も始まりました。現在はこの4つの事業を軸に活動しています。

――理念やビジョンに込められた思いを教えてください。

「まちのこ」という言葉には、「人はみんな、まちに育まれるまちの子ども」という思いが込められています。

大学時代、東京の神田淡路町で地域活動に関わる機会がありました。当時の町会長の方から「このまちに来る人は、ここで生まれ育った人だけじゃない。このまちで何かを得て育っていく人たちも、みんなまちの子どもなんだ」という話を聞いたんです。

その言葉がとても印象的でした。東京にはドライなイメージを持っていましたが、地域には温かい人とのつながりがありました。

その経験から、「余所者でも地域に関われる」「みんなでまち育み合う」という考え方に強く共感し、仲間たちと学生団体「まちのこ」を立ち上げました。その理念を、現在のまちのこ団にも引き継がれています。

東日本大震災が教えてくれた“人とのつながり” 

――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。

大学時代に経験した東日本大震災は、大きな転機でした。当時、大学の姉妹校が宮城県石巻市にあり、復旧復興支援のボランティアに参加しました。

津波に呑まれた家屋などの泥かきや、遺品を整理、探したり、避難所支援などを行いましたが、その中で強く感じたのが、人と人との助け合いの姿でした。極限状態だからこそ見えた部分もあったと思いますが、地域ならではの人との関係性を大切にすることが文字通り命を繋いでいることを肌で実感しました。

一方で、当時から日本社会では、「無縁社会」「孤立社会」といった言葉が広がっていました。でも、自然災害の多く、いつ何が起きるかわからないこの国だからこそ、人とのつながりは、助け合いに欠かせない。そうした関係性があることで、有事だけでなく、平常からの人の営みの豊かさやウェルビーイングにもつながるのではないかと感じたんです。

震災での経験と、神田での地域活動。その両方が、現在のまちのこ団のルーツになっています。

――経営判断の軸になっている考え方はありますか。

まちのこ団では、「子どもの原体験を豊かにする」というミッションを掲げています。その先に、「すべての子どもや若者が自信を持って生きる社会をデザインする、そのお手伝いをする」というビジョンがあります。

日々の判断の中では、難しく考えず、トレンドや周囲の流れなどに合わせた方が楽だと感じることもあります。でも、自分たちが向き合っているのは子どもたちです。その判断が今の子どもだけでなく、未来の子どもたちに対しても自信をもって誇れる決断かどうかを大切にしています。

また、「子どもの権利」を守れるものかを基準に考えることも意識しています。日本でも子どもの権利に対する考え方が少しずつ広がっていますが、自分たちは最前線に近い立場だからこそ、その軸を大切にしたいと思っています。

一人ひとりが価値のある存在へと思える組織へ

――社内のコミュニケーションで大切にしていることを教えてください。

定期的なミーティングを行うことに加えて、連絡を取りやすい環境づくりを意識しています。

例えば、「この連絡はこのツールを使う」といったルールを整理し、スタッフ同士がストレスなくやり取りできる状態をつくっています。

また、一人ひとりが「自分はこの組織の一員として意味のある存在なんだ」と感じられるような関わり方も意識しています。

――どのような人と一緒に働きたいと考えていますか。

不思議とまちのこ団には、「自分のやりたいことを探している人」が集まることが多いんです。

子どもと向き合う中で、自分自身を知る・振り返るきっかけになることもあります。そのままの意味で、子どもたちは大人の行動に素直に反応してくる存在なので、嘘は通じないし、自分達の関わり方がそのまま子どもたちのリアクションとして自分たちに返ってくる。

だからこそ、自分がどういう人間で、関わり方や向き合い方をしているかが、否応なく突きつけられる。それらの機会が自分自身と向き合う機会にもなると感じています。

何をしたいかわからなくても、「やりたいことを見つけたら本気で取り組みたい」という気持ちを持っている方なら、まちのこ団で本気で取り組む中で、新しい発見があるのではないのでしょうか。

まち中で子どもの居場所を広げていく

――今後の展望について教えてください。

今取り組んでいる事業を、さらに広げていきたいと考えています。

特に、放課後の居場所づくりのような分野は、収益化が難しい側面があります。しかし、長い目で見ると、地域の中で多様な大人と関わりながら育った子どもたちは、社会に貢献できる度合いはかなり高いと思っています。

多様な他者や価値観、文化歴史などにも触れられる機会といった、学校教育だけでは得られない社会教育的な部分を経験し、豊かな子ども時代を過ごせる場を、今はまだ茨城の一部地域に限られていますが、今後さらに各地域へ広げていきたいです。

現在特に大きな挑戦となっているのが、指定管理による子育て支援施設の運営です。行政の枠組みの中でありながら、民間での可能性を最大限に発揮し、地域の子育てをより魅力的にしていきたいと考えています。そしてその施設をまずは県内一、ゆくゆくは日本唯一の施設に育てていきたいと強く思っています。

子どもの権利と向き合い続ける

――これだけは譲れないという価値観はありますか。

やはり「子どもの権利」を守ることです。

見た目や性別、障害の有無、言語や宗教の違い、国籍などによって人への見方や接し方が変わってしまうことは、皆さんにも経験があるかもしれません。ぼくも留学した経験があるので分かりますが、言葉が違うとすごく自分と相手との間に壁があるように、違いが大きいように感じてしまうことがあります。しかし、そういった違いを勝手に感じたり判断する前に、すべての人は、人として尊重される存在だという理解が必要。それが人権。成人には当たり前のその考えが、なぜか日本では子どもにも同様に権利があるという理解が乏しい。国連が発表している日本の子どもの幸福度の低さが、その実情を物語っているとみえます。

また、まちのこ団では「自由には責任が伴う」という考え方も大切にしています。権利=自由という結びつきをしがちですが、自由だけを求めるのではなく、自分の行動に責任を持つことを学ぶことも重要です。

時には、毅然と対して「それは違う」と伝える存在も必要だと思っています。今はそれを社会が言えなくなっているのかもしれないですね。しかしぼくたちは、そうした関わりを通して、子どもたちが社会の中で自分らしく生きていく力を育めるよう、これからも活動を続けていきたいです。

――休日のリフレッシュ方法を教えてください。

まとまった休みはなかなか取れていませんが、歴史や社会科学、小説などを読んだり、映画を見たり、漫画やアニメを楽しんだりしています。ドライブやジムで身体を動かすこともあります。

普段とは違う脳や身体を使うことで、気持ちを切り替えるようにしています。子どもたちと遊ぶ機会も多いので、体力を維持することも大切ですね。

これからも、子どもたちと真剣に向き合いながら、地域の中で安心して過ごせる居場所づくりを続けていきたいと思っています。

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