“資源循環”を、日本の新たなインフラへ──PAX TOPOLOGY株式会社が挑む、循環型社会のアップデート
PAX TOPOLOGY株式会社 代表取締役 奥村 拳 氏
企業内に眠る“使われていない資産”を循環させ、新たな価値へつなげる取り組みに挑戦しているのがPAX TOPOLOGY株式会社です。法人向け資源循環経営プラットフォーム「遊休マーケット」を展開し、コスト削減と環境配慮の両立を目指しています。本記事では、JR東海、Amazon Japanでの経験を経て起業した奥村拳氏に、事業への想いや今後の展望について伺いました。
目次
“眠っている資産”を循環させる──PAX TOPOLOGY株式会社の現在地
――現在の事業内容について教えてください。
弊社では、資源循環経営プラットフォーム「遊休マーケット」を展開しています。法人が保有する資産のシェアリングを支援するサービスで、企業の中にある“使われていない資産”を循環させることが大きなテーマです。
例えば、営業部署では毎月購入している備品がある一方で、総務部署では同じようなものが使われないまま保管されていたり、不要として処分されていたりするケースがあります。企業の中で縦割りが生まれると、どうしても資産の偏りが発生してしまうんです。私たちは、そういった課題を解決するための仕組みを提供しています。
単純にコスト削減という面でもメリットがありますし、もう一つ重要なのが環境面です。社内で資産を循環させる取り組みは、CO2削減量として企業活動の中に反映できるため、環境配慮の観点でも価値があります。お財布にも環境にも優しい活動を、企業が自然に取り組める状態を作りたいと思っています。
また、現在は組織内での循環をメインにしていますが、将来的には企業間での資産循環まで広げていきたいと考えています。例えば、大企業で不要になった設備を別の企業が有効活用するような流れですね。さらに、使っていない資産をリースのような形で活用するなど、新しい価値を生み出す大きなプラットフォームへ育てていきたいです。
サプライチェーンの面白さに惹かれて──起業へ至るまでの道のり
――これまでのキャリアについて教えてください。
私は新卒でJR東海に入社しました。中央新幹線に関わりたいという想いがあり、その会社を選んだんです。その後、コロナ禍のタイミングでAmazon Japanへ転職しました。JR東海での経験を活かせるご縁があり、そこで本格的にサプライチェーンを学ぶことになりました。
Amazonでは、物を動かす仕組みや最適化の考え方を深く学ばせてもらいました。物の流れを整えることで大きな価値が生まれる。その面白さに強く惹かれたんです。
――起業された背景について教えてください。
Amazonで4年ほど働く中で、「この領域で社会に価値を残したい」という想いが強くなっていきました。そして2025年に会社を登記し、リサーチや事業構想を進める中で「遊休マーケット」というサービスに辿り着きました。
Amazon在籍中には、東京都のスタートアップ支援プログラムにも採択いただき、事業の磨き込みやネットワーキングにも取り組んでいました。会社にも起業の意思は共有しており、応援していただける環境だったんです。
2026年4月にAmazonを退職し、現在は事業に本格的に集中しています。立ち上げたばかりだからこそ、毎日が挑戦ですね。
少人数だからこそ、専門性を活かし合う組織へ
――現在の組織体制について教えてください。
現在は4名体制で運営しています。私以外のメンバーでは、Amazon時代の上司がCTOとして参画してくれていて、生成AIや人工知能活用に非常に強みを持っています。信頼できる方なので、「ぜひ一緒にやりたい」とお声がけしました。
ほかにも営業・マーケティングに強いメンバーや、業務委託で支えてくれているエンジニアがいます。それぞれ得意領域が違うので、専門性を活かしながら進められている感覚がありますね。最近は生成AIの進化も大きいため、ソフトウェア開発については少人数でも効率的に進められています。
――現在の営業活動や、今後の課題について教えてください。
現在は、スタートアップイベントでの登壇や、紹介を通じた営業活動が中心です。ただ、私たちが本当にお話ししたいのは、総務や調達、経理など、現場の課題を深く理解している方々なんです。
大企業では、スタートアップ連携部署の方が最初の窓口になるケースも多いのですが、実務レベルの課題までは共有しづらいこともあります。だからこそ、「本当に困っている人へどう辿り着くか」を常に意識しています。
今後サービスを広げていくうえでは、営業面の強化も重要になると思っています。相手の立場を理解しながら、必要としている方へきちんと価値を届けられるよう、これからも工夫を重ねていきたいですね。
“日本版Rheaply”を目指して──循環型社会のインフラをつくる挑戦
――今後の展望について教えてください。
私たちには、一つ大きな目標があります。アメリカの「Rheaply」というスタートアップを、日本版として実現したいと思っているんです。
Rheaplyは、さまざまな商材を全米規模で循環させている企業で、研究機関からスタートしながら、建設やエンタメなど多領域へ展開しています。日本ではまだ、ここまで横断的な資源循環プラットフォームは広がっていません。
ただ、これから企業の環境意識は確実に高まっていくと思っています。その時に、「資源循環といえばPAX TOPOLOGY」と言われるような存在になりたいですね。社会インフラとして根付くサービスを作りたいと思っています。
現在は、さまざまな企業と実証実験を進めています。例えば、八重洲地下の警備会社や清掃会社と連携し、地下施設内に眠っている備品や在庫を効率的に循環させる取り組みも始まっています。
使われていない資産を掘り起こし、必要な場所へ届けることで、新しい価値が生まれる。処分コストの削減だけでなく、スペース活用や再利用による価値創出にも繋がります。
私は、サーキュラーエコノミーは単なる環境活動ではなく、“未来の社会を支える土台”だと思っています。限りある資源をどう繋いでいくか。その仕組みを後世に残していきたいです。
家族で楽しむF1観戦──変化し続ける世界に惹かれる理由
――最後に、休日のリフレッシュ方法について教えてください。
家族みんなでF1を見るのが、一番の楽しみですね。シーズン中は毎週のように観戦しています。ヨーロッパ開催だと深夜になることも多いんですが、それでもつい見てしまいます。
子どもがまだ小さいので、家族でモータースポーツを楽しむ時間が良い息抜きになっています。鈴鹿サーキットへ行くこともありますね。
F1は単なるレースではなく、ドライバーの人間ドラマや技術開発、ルール変更による勢力図の変化など、背景を知れば知るほど面白くなるスポーツなんです。長い時間をかけてチームが挑戦を続ける姿にも惹かれています。
仕事でも、人や物が動くことで新しい価値が生まれる瞬間に面白さを感じています。これからも、社会に新しい循環を生み出せるよう挑戦を続けていきたいですね。