体験を来訪・購買・理解につなげる――SeiRogaiが描くGlobal Virtual Travelの未来

株式会社SeiRogai CEO兼創業者・映画制作者 Samuel Yuen氏/COO兼共同創業者 Rachel Leng氏

株式会社SeiRogaiは、VR360コンテンツとデジタルプラットフォームを基盤に、観光DX、教育DX、海外展開支援を行う企業です。日本企業や自治体が持つ地域・文化・製品の魅力を、グローバルな視点とストーリーテリングによって世界へ発信してきました。近年では「グローバル・バーチャル・トラベル(GVT)」を通じて、視聴から関心喚起、来訪・購買までを一気通貫でつなぐプラットフォームづくりにも取り組んでいます。本記事では、CEO兼創業者のSamuel Yuen氏、COO兼共同創業者のRachel Leng氏に、現在の取り組みや経営の考え方、今後の展望などについて詳しく伺いました。

日本の魅力を世界へ届け、行動につなげる事業

――現在の事業内容について教えてください。

当社では、日本企業や自治体の海外向け情報発信やインバウンド支援を行っています。単に映像を制作するのではなく、日本の地域や製品が持つ背景や文化、歴史まで含めて海外の方に伝わる形へ編集し直すことを大切にしています。

また、JETROや中小企業基盤整備機構(SMRJ)のパートナー企業として、日本企業の海外展開支援にも取り組んでいます。

さらに現在は、従来の支援に加えてVR360コンテンツを活用したGlobal Virtual Travel(GVT)プラットフォーム(https://globalvirtualtravel.com)にも注力しています。映像・ストーリー・ビジネス導線を組み合わせ、体験から行動までを設計することが当社の事業の中心です。

――GVTプラットフォームの特徴は何ですか。

GVTは、VR360映像を見せるだけのサービスではありません。ユーザーが映像を通じて地域や大学、製品に関心を持ち、そのまま予約やEC、次の行動へ進める導線をつくることが特徴です。情報発信で終わらせず、来訪や購買、地域経済の活性化につなげることを目指しています。

当社は、映像制作会社でも旅行会社でもなく、「体験を、来訪・購買・理解につなげる会社」として、見た人が行きたくなる・買いたくなる・関わりたくなる仕組みをつくっています。情報発信にとどまらず、その先の来訪や購買につながる導線を設計し、地域や企業、教育機関の魅力をより多くの方へ届けていきたいと考えています。

日本と世界をつなぐために創業

――創業に至った背景を教えてください。

創業の原点は、日本と世界との間にあるコミュニケーションのギャップを埋めたいという想いです。

私たちは、外国人創業者として日本に来たときに、まだ海外に十分に伝わっていない日本の魅力や素晴らしい製品がたくさんあることに気づきました。従来の海外向けPRは、食べ物や自然を表面的に紹介するものが多く、文化や歴史の深さまで届いていないと感じたのです。

そのため、日本の企業や自治体の魅力を「海外の人に本当に伝わる形」で届けたいと考えました。

――経営者として事業を進めようと考えた理由は何ですか。

日本には圧倒的な深みがありますが、既存のプラットフォームではその価値が世界に十分伝わっていないと感じたことが大きな理由です。映像や広告技術、ECなどを一つの仕組みとして統合し、視聴者を行動まで導くことができていませんでした。

だからこそ、自分たちで新しい仕組みをつくる必要があると考えました。創業当初は難しい挑戦でしたが、日本の課題解決に貢献できるプラットフォームを構築することが、経営者としての使命になりました。

クリエイティブとビジネスを両立する組織づくり

――社内コミュニケーションで大切にしていることは何ですか。

少人数のスタートアップだからこそ、判断基準を共有することを大切にしています。

大企業のように役割が細かく分かれているわけではないため、一人ひとりが専門領域だけに閉じず、広い視野で動く必要があります。細かな指示を待つのではなく、日々の仕事を通じて文脈を理解し、チームとして前に進むことが重要です。

クリエイティブとビジネスの両方を扱う会社だからこそ、オープンマインドに学び続ける姿勢を重視しています。

――どのような人と一緒に働きたいですか。

完成された組織で決められた役割をこなしたい人よりも、成長途上のスタートアップで新しい価値を一緒に創りたい人と働きたいです。変化を楽しみ、自分の仕事の範囲を広げながら学べる人が合うと思います。

グローバルな環境で挑戦したい方、日本の魅力を世界につなぐ仕事に関心がある方とは、ぜひ一緒に取り組んでいきたいです。

大学や地域、高齢者へと広がるVR体験の可能性

――今後注力していきたい取り組みを教えてください。

GVTで特に力を入れているのは、大学向けとシニア向けの取り組みです。大学向けでは、東京都、大学、地域事業パートナーと連携し、VRキャンパスツアーを通じて海外の学生に日本の大学や地域の魅力を伝える事業を進めています。

日本の大学は、海外向けのマーケティングや差別化に課題を抱えているケースがあります。そこで、VRによるキャンパス体験からオープンキャンパス予約などにつなげる新しいモデルを展開しています。

実際に、東京都の「多摩イノベーションエコシステム促進事業リーディングプロジェクト」では、「多摩地域の留学生増加促進と観光振興に寄与する『360度VRで体験する大学&まち巡りキャンパスツアー』」の検証にも取り組みました。

実証事業では、アクセスの約70%が海外ユーザーであり、日本留学や地域への関心が高いターゲット層へ効果的にリーチすることができました。また最大64%のCTRを記録し、参加者アンケートでは約70%が多摩地域への訪問意向向上、約55%が大学理解の向上を回答するなど、VR体験による高いエンゲージメントと行動変容の可能性が確認されています。

従来の大学広報や海外募集活動と比較しても、限られた予算・期間の中で高い成果を実現しており、実際の来訪や進学検討につながる新たなマーケティング手法として期待されています。

一方で、高齢者向けのVR体験では、移動が難しい方にも新しい体験機会を届けたいと考えています。現在、東京都より「高齢者のQOL向上に向けたVR動画制作および新サービス」に関する経営革新計画の承認を受け、5年間の計画で高齢者向けVR体験サービスの開発を進めているところです。

病院や老人ホーム、コミュニティセンターなどでの展開も視野に入れています。旅行に行けない方でもその場にいながら世界を体験できる環境をつくり、見るだけでなく心や思考が動く体験を通じて、QOL向上にも貢献していきたいと考えています。 

――今後の課題についてはどのように捉えていますか。

最も大きな課題は、事業を拡大するための人材と組織づくりです。大学や地域活性化、高齢者向けサービスなど、需要は広がっていますが、それに応えるにはチームの拡充が欠かせません。

特に地方での撮影や支援では、現地に入り、地域の方々と丁寧に関係を築く必要があります。現在は戦略的パートナーや投資家、大学、企業などとの連携も進めながら、より多くの自治体や企業に貢献できる体制づくりを進めています。

さらに今後は、GVTプラットフォームの機能拡充と国内外のパートナーとの連携を強化し、より多くの地域・大学・企業が活用できる仕組みへと発展させていきたいと考えています。

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

私たちは、日本と世界をつなぐ橋渡し役でありたいと考えています。

日本には、まだ世界に十分知られていない地域、文化、製品、人の物語がたくさんあります。それらを映像やストーリー、VR、データ、テクノロジーの力で届け、関心から行動へつなげていくことが、当社の使命です。地方創生や高齢者のQOL向上にも取り組みながら、日本の魅力が世界の人々に届き、実際の価値として循環する未来をつくっていきたいです。

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