AI時代を生きる子どもたちに、自ら問い、自ら考える力を。誰もが持つ天才性を信じ、一人ひとりが自分らしく輝く学びのひろばを創る

NPO法人アイアイスクール 代表 後藤紀子氏

AIやスマートフォンの普及によって、私たちの生活や文明は劇的な進化を遂げました。しかしその一方で、便利すぎる環境の中で子供たちが「自らの頭で考え、自分を表現する力」を失いつつあるという新たな課題も生まれています。この大きな時代の転換期において、子どもたち一人ひとりが持つ可能性や天才性を信じ 、「哲学対話」を通じて生きる力を育む活動を続けているのが、NPO法人アイアイスクールです。「誰もが何者かになろうとしなくていい。一人ひとりが、その人ならではの天才性を持っている」 という温かく力強い理念を掲げ、子どもや保護者がつながり、学び合えるコミュニティづくりに取り組む 代表の後藤紀子氏に、活動への想いや今後の展望についてお話を伺いました。

23年目の離婚の危機が出発点。自分自身の「空っぽ」に直面して見つけた、本当に命を使いたい道

――現在の事業内容や特徴や強みについて教えてください。

私たちの最大の特徴は、子どもたちが「自ら問い、自ら考え、自ら表現する力」を育む哲学対話を軸にしていることです。

現代はAIやスマートフォンが急速に発達し、答えや情報を簡単に手に入れられる時代になりました。その一方で、自分自身で問いを持ち、考え続ける機会は少なくなっています。

だからこそ私たちは、哲学対話を通して「なぜそう思うのだろう」「本当にそうだろうか」と問いを深めながら、自分の考えを言葉にし、他者と対話する力を育てています。

私たちが大切にしている理念は、「誰もがその人として天才性を持って生まれてきている」ということです。

ここでいう天才性とは、勉強ができることや特別な才能を持っていることではありません。一人ひとりが持つ感性や興味関心、物事の捉え方や問いそのものが、その人だけのかけがえのない価値だと考えています。

私たちは、子どもたちを何か別の存在に変えようとするのではなく、自分自身の持つ力や可能性に気づき、自らの人生を主体的に歩んでいけるよう支援しています。 ありのままの自分を認めながらも、自ら問い、考え、行動し、自分の人生のハンドルを握る力を育むこと。それが私たちの目指す教育です。

――経営者になられた経緯を教えてください。

私の活動の原点は、今から10年ほど前に一般社団法人アイ・アソシエイツが提供している哲学ベースのプログラム「アイアイ講座」に参加したことです。当時は23年間連れ添った元夫との離婚問題の渦中にあり、藁にもすがる思いで「自分らしく生きれば夫婦関係も良くなるから」と勧められて参加を決めました。

結果として離婚という選択をすることになったのですが、その過程で、それまでの私は母の期待に応えるため、夫や子供のために生きてきて、自分自身の内側が「空っぽ」になっていたことに気づかされたのです。「これからの人生、本来の自分としてどう命を使っていきたいのか」という問いに深く直面しました。そして自分を知ることに愉しさを感じ始めていきました。

そんな時に、大人だけでなく子供向けにも自分という存在を探求できる「キッズ・アイアイ講座」があると知り、そのリーダー(講師)になったのが大きな転換点です。実際に高校生の野球部にこの講座を提供した際、子供たちが自分の内面と向き合い、見違えるほどキラキラと輝き出していく姿を目の当たりにしました。「これを求めている多くの子供たちに届けたい」という強い衝動が湧き起こり、NPO法人を立ち上げる決意をしました。

我欲ではなく「自分に嘘のないあり方」を貫く

――組織運営で意識していることを教えてください。

経営や組織の判断において、私が最も大切にしている信条は「インテグリティ」です。これは単に人や世間との約束を守るということだけでなく、「自分に正直であるか」「自己に忠実であるか」という、自分の内側に嘘がない状態を指します。

私たちは「ディブリーフ(debrief)」という報告手法を取り入れています。これは、自分たちで新しく創作して実践し、出た結果に対してお互いに対等な立場で対話をする仕組みです。

たとえ思い通りの結果が出なかったとしても、それを「悪いこと」と責めるのではなく、起きた出来事はすべて学びであり、次の宝物を見つけるためのステップ。メンバー全員が主体的に思ったことをどんどん表現できる、フラットで風通しのよい関係性を大切にしています。

――さらに活動の輪を広げるにあたり、どのような方と一緒に働きたいとお考えでしょうか。

やはり、一番は「子どもたちの教育に心から興味があること」ですが、私たちの活動はNPOという性質上、決して多くの謝金をお出しできる環境ではありません。だからこそ、魂が喜ぶ瞬間や、世の中に貢献できることに純粋な喜びを感じられる志を持った方と歩んでいきたいです。

リアルなフリースクールの開設とイベントへの挑戦。資金の課題を仲間と共に乗り越える

――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

大きく2つの挑戦があります。

1つ目は、日本郵便の年賀寄付金助成事業として開催する教育イベントです。今年8月には、埼玉県吉川市や東京、そしてオンラインをつなぎながら、子どもも大人も共に学び、考え、対話できる3日間のイベントを開催します。

2つ目は、埼玉県吉川市に哲学対話をベースとしたリアルな学びのひろばを創ることです。

学校に行きづらさを感じている子どもたちだけでなく、学校に通っていても「自分は何が好きなのだろう」「何を大切にして生きたいのだろう」と考える子どもたちが安心して集まり、探究できる場を目指しています。

また、オンラインを活用しながら全国の子どもたちや保護者ともつながり、孤独を感じることなく支え合えるコミュニティづくりにも力を入れていきます。

その先に描いているのは、哲学対話を土台とした新しい教育の形です。

子どもたちが正解を覚えるだけではなく、自ら問いを立て、対話し、探究しながら学ぶことができる学校のような学びの場を創りたいと考えています。

子どもたち一人ひとりが、自分の人生のハンドルを自ら握り、自分らしく生きていける社会を実現すること。それが私たちの大きな願いです。

直面する大きな課題は「資金面」です。NPO法人として理想の教育環境を持続可能な形で運営していくためには、しっかりとした資金循環の仕組みが必要です。

これに関しては、やりたい想いを単なる理想で終わらせず、一つひとつ明確なプロジェクトとして可視化し、クラウドファンディングへの挑戦や、私たちの志に共感して支援してくださるサポーター、そして一緒に動いてくれる仲間を日本全国に広げていくことで突破していきたいと考えています。

哲学を身近にしてくれた偉人たち、そして最愛の夫と過ごす自然豊かなリフレッシュの時間

――尊敬されている人物や、人生で影響を受けたエピソードがあれば教えてください。

私にとって影響を与えてくれた偉人を挙げるとすれば、やはり対話を何より大切にしたソクラテスやプラトン、そしてサルトル、ニーチェといった哲学者たちです。また、現代において私を導いてくれている一番の師は、一般社団法人アイアイ・アソシエイツの創設理事である堤久美子さん。彼女の存在にはいつも感謝しています。

――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

私のリフレッシュ方法の一つは、美術館で絵画をゆっくり鑑賞することです。特にモネやゴッホの作品が好きで、作品の前に立ちながら、その時代や画家の想いに思いを巡らせる時間を大切にしています。

また、再婚した夫と過ごす時間も、私にとって大切な癒しのひとときです。お互い忙しい毎日を送っていますが、時間を見つけては自然豊かな場所へ出かけています。

四季折々の風景を眺めながらゆっくり話をしたり、ただ自然の中で過ごしたりする時間は、自分自身を整え、新たなエネルギーをもらえる大切な時間になっています。

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