人生の質は「健康リテラシー」で決まる。医療とフィットネスの架け橋となるコンサルタントが提唱する、再現性のある予防医療

naturally 代表 南方和美氏

日本が超高齢社会を突き進む中、単に寿命を延ばすだけでなく、いかに健康で自立した人生を送るかという「健康寿命の延伸」が重要なテーマとなっています。しかし、多くの人は身体に深刻な不調をきたしてからようやく医療機関に駆け込むのが現状です。「手遅れになる前に、正しい知識と予防法を届けたい」ーーそんな強い想いから、医療の現場を飛び出して起業した女性がいます。naturallyの代表、南方和美氏です。整形外科でのメディカルトレーニング担当や「健康運動指導士」としての専門知識を活かし、一過性のイベントに終わらない、企業に深く入り込む「健康経営コンサルティング」を展開する南方氏。その歩みと、活動の根底にある確固たる信念についてお話を伺いました。

専業主婦から医療の現場を経て、予防医療の必要性に目覚めるまで

――経営者になられた経緯を教えてください。

私は新卒で株式会社リコーに入社し、その後はいくつかの企業で会社員を経験しました。その後、子どもが生まれたのをきっかけにしばらくは専業主婦として家庭に入り、子育てに専念する日々を送っていました。

転機が訪れたのは、40歳の時でした。子供たちが大きくなり、「もう一度、社会に出て仕事をしよう」と考えた際、強く惹かれたのが健康の世界でした。最初の数年間はとにかく健康を極めようと猛勉強し、ヨガやピラティスのインストラクターなど、様々な資格を取得して、いわゆる「健康美」をテーマにフリーランスとして各所でレッスンを行うようになりました。

そんなある時、医療法 42条施設を運営する整形外科との出会いがあり、医療機関の中で運動療法を担当させていただくことになったのです。この経験が、私の人生を大きく変えることになりました。

――業界内での強みはどのような点にありますか。

naturallyの最大の強みは、一発花火のイベント的なセミナーで終わらせず、クライアント企業の中に「深く入り込んでいく」という点です。

私の場合は、総務や福利厚生の担当者様はもちろんのこと、社長や役員といった決済決定権を持つ経営トップと徹底的に対話を重ねます。「働く土台としての「健康」を、どのような形で組織に根付かせたいですか」という本質的なゴールを共有した上で、その企業が今一番必要としているテーマに沿ったセミナーを、年間を通じて繰り返し行っていきます。

もう一つの強みは、講義を「ワンサイド」にしないことです。スポーツクラブに通う時間がない人にでも「職場や家、その場でできる簡単なエクササイズ」をプログラムに組み込み実際に動いていただきます。

大切なのは「再現性」と「継続性」。簡単に意識付けができて、毎日のルーティンにできる身体のケアをパッケージ化しnaturally独自のメソッドとして提供しています。これによって、社員の方々の「健康リテラシー」が自発的に高まっていく仕組みを作っています。

――仕事をする上で大切にしている価値観や軸は何でしょうか。

現在の判断軸は、その事業に「確かな将来性と継続性があるかどうか」です。

人々の健康や幸せに貢献するというのは、私の人生のミッションであり大前提です。しかし経営者となった今は、ボランティアではなく事業としてしっかりと対価をいただき、継続的にお金を回していける仕組みがなければ組織は維持できないというシビアな視点を持っています。

そのため、現在のnaturallyでは「健康経営コンサルティング」を主軸としながら、実はあと2つの軸を持っています。1つは、私が監修として開発に入ったスキンケア商品(許技術を持つ泡石鹸)の物販事業。お陰様で信頼できる代理店様が見つかり、定期的に安定した流通が生まれています。

もう1つは、昨今企業に強く求められている「BCP対策」のコンサルティングです。有事の際、社員の命を守り組織が速やかに立ち上がるためのレジリエンス(復元力)を、健康の観点からもアプローチしています。この3本の矢が、現在のnaturallyを安定して支える主軸となっています。

全てを専門家チームにアウトソーシングする先進的な組織運営と、未来の右腕への期待

――組織運営で意識していることを教えてください。

固定の社員を雇う形ではなく、信頼できる専門家たちとパートナーシップを組む「アウトソーシング型」の専門チームで運営しています。

メンバーとは月1回の定期ミーティングを設けているほか、日々の業務で何かが発生した際はLINEなどを活用してその都度スピーディーに対話を行う、フラットで風通しの良いコミュニケーションを徹底しています。

――今後、もし新しく組織に迎え入れるとしたら、どのような人物と一緒に働きたいですか。

私自身がどんどん新しい市場へ自分から切り込んでいく突破型の人間ですので、できれば私のすぐ傍でバックオフィスや社内をしっかりと守ってくれる、非活動的な動きを丁寧にこなしてくれる方に出会いたいですね。私の理念に共感し同じ方向を向いて伴走してくれるパートナーに巡り合えたら、その時はぜひ社員として採用し一緒に次のステージへ進みたいと思っています。

ナイチンゲールの「統計学」に学ぶ、時空を超える使命感

――最も尊敬されている人物や、人生で影響を受けたエピソードがあれば教えてください。

私は、歴史上の人物であるフローレンス・ナイチンゲールを心から尊敬しています。

一般的に彼女は「白衣の天使」や看護師の象徴として知られていますが、実は彼女の真の凄さは「統計学の母」であったという点にあります。

戦地で傷つき、激しい苦痛に耐えている兵士たちが、心を落ち着かせるためにこっそりとタバコを吸っていました。ナイチンゲールは医学的にタバコが体に悪いことを百も承知していましたが、その時は兵士たちの心の安らぎを最優先し、あえてそれを咎めずにそっと見守ったのです。

しかし、タバコが人類の健康に壊滅的な被害を及ぼすという確信があった彼女は、やがて自身が病床に伏して寝たきりの人生になってからも、ベッドの上で粛々とタバコの害や副流煙が子供たちに与える影響についての壮大な統計データを取り続けました。

彼女が亡くなってから100年が経ち、世界中でようやく「禁煙」の運動が広がりました。彼女は自分が生きている間に、そのデータが実を結ぶ瞬間を見ることはできませんでした。しかし、彼女が残した執念のデータが、100年後の未来の何百万、何千万という人々の命を今、現在進行形で救っているのです。

携帯をすべて置いて、愛犬と風の音を聞く

――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

私の唯一無二のリフレッシュ方法であり、最高の「無」になれる瞬間が、我が家で飼っている愛犬との日々のお散歩の時間です。

朝と夕方の散歩に出かける時はiPhoneなどの携帯端末をすべて家の中に置いて、完全にデジタルデトックスの状態で外に出ます。

ただ静かに風の音を聞いたり、木々や土の匂いを五感で感じたりする。その瞬間だけは、「あぁ、私は今、この美しい地球という星に生かされているんだな」と感じられる何にも代えがたい大切な心の調律時間になっています。

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