教育に新たな風を――E‐nnovationが育む子どもたちの可能性

特定非営利活動法人E‐nnovation 理事長 佐々木康喬氏

特定非営利活動法人E‐nnovationは、「茨城県の教育に新たな風を」という理念のもと、地域と学校の連携創出、学校内での学習支援、探究活動のサポートを軸に活動する教育NPOです。本記事では、理事長の佐々木康喬氏に、現在の取り組みや教育への想い、今後の展望について伺いました。     

教育格差をなくし、学びたい子どもに学びを届ける    

――現在取り組まれている事業の特徴について教えてください。

現在は、市の教育委員会から委託を受け、学力向上支援事業に取り組んでいます。学校内に年間の塾を入れ、子どもたちが無料で通える仕組みをつくっています。

委託事業としては学力向上が中心ですが、私自身は「学力向上プログラム」と「人間力向上プログラム」の2つを実施しています。以前、予備校で働いていた経験から、学力だけでなく、社会を生き抜く力を身につけることが子どもたちには必要だと感じていました。

人間力向上プログラムでは、思考力や想像力を育む内容を取り入れています。たとえば、お金の価値や道徳の発展的な内容、作文など、学校教育の中ではあまり扱われないテーマにも取り組んでいます。学力だけで測れない力を育てることが、子どもたちの土台になると考えています。

――他にはない強みはどのような点にありますか。

当団体の強みは、大学生が多く関わっていることです。理事はいますが、実際に動いている大人はほぼ私1人で、大学生が約120名在籍しています。多くは教員を志望する学生で、これまでの教員採用率は100%です。

学生には、探究活動のサポートや学習支援を担ってもらっています。私はボランティアという形だけで関わってもらうのはあまり好きではないので、学生にはきちんと謝金を支払い、責任を持って活動してもらっています。

また、高校生も38名ほど参加しています。高校生のうちから社会性や主体性を学ぶ場として、イノベーションアカデミーを立ち上げました。高校生同士の横のつながりをつくり、大学生と一緒に活動することで、視野を広げてほしいと考えています。今年は100名を目標に活動を広げていきたいです。

「経営者の前に教育者である」という判断軸    

――理念やビジョンには、どのような想いが込められていますか。

もともと私は予備校の人間で、受験教育しか知りませんでした。学校教育についても、地域との関わりについても、当初は深く知っていたわけではありません。

ただ、学校の先生方と話す中で、「お金はないけれど予備校に通いたい」「もっと学びたい」という子どもたちがたくさんいることを知りました。当時、校舎長だった私は、学びたい子どもたちに対して授業料の免除を行いました。家庭の収入によって学べるかどうかが左右されるのはおかしいのではないかと感じたからです。

収入格差が教育格差を生んでいるのではないか。その疑問が、NPOを立ち上げるきっかけになりました。国や県、市から支援を受け、そのお金を子どもたちに還元していく仕組みをつくりたいという想いがあります。

――経営判断の軸になっている価値観を教えてください。

一番大切にしているのは、子どもたちのためになるかどうかです。私は経営者である前に教育者だと思っています。教育者と経営者は、考え方としては真逆の部分もあるかもしれません。それでも、子どもたちや社会に対して何ができるのかという目的意識が明確であれば、人はついてきてくれると考えています。

この4年間、目的やビジョンを発信し続けてきました。その結果、さまざまな方が協力してくださり、応援してくださり、学生たちも集まってくれるようになりました。だからこそ、目的とビジョンをしっかり持つことが大切だと感じています。

また、応援してくださる方々への感謝も忘れないようにしています。これは経営者としてだけでなく、人として重要なことだと思っています。

学生の弱みを、未来の強みに変えていく    

――学生とのコミュニケーションで大事にしていることは何でしょうか。

大学生や高校生と話すときは、相手の目線に立つことを意識しています。いまの若い世代にどう話せばよいのか悩む経営者の方も多いと思いますが、私はまず相手がどう考えているのか、どう受け止めているのかを理解するようにしています。

コミュニケーションでは、話す内容だけでなくタイミングも大切です。いつ、どのタイミングでその人に話をするのかを考えながら接しています。相手の気持ちを理解し、その人に合った伝え方をすることを心がけています。

――一緒に活動したいと感じる学生には、どのような特徴がありますか。

私は、完璧な人間はいないと思っています。だからこそ、学生の足りない部分や弱点に目を向けます。この子はここが成長すれば、社会人になってから大きく活躍するのではないか。その可能性を最初の言葉や姿勢から見ています。

たとえば、人前に出るのが苦手で発言できない子には、あえてリーダーとして前に立ってもらうことがあります。いろいろな人の意見を聞き、自分で考え、発言する経験を大学生のうちから積むことで、弱点だと思っていた部分が強みに変わっていくからです。

自分には欠点がある、夢がない、マイナス思考だという学生ほど、私は関わりたいと思います。役職や役割を与え、その子たちが成長し、社会で活躍する姿を見たいです。

社会教育と不登校支援へ広がる挑戦    

――今後取り組んでいきたい挑戦を教えてください。

これまでは探究活動や高校生の活動支援に力を入れてきましたが、今後は社会教育や生涯学習に焦点を当て、事業を広げていきたいと考えています。

最近、船の中で子どもたちと謎解きをしたり、怖い話をしたりする機会がありました。子どもたちがとても楽しそうに過ごしている姿を見て、不登校やいじめなど、心にさまざまなものを抱えている子どもたちを支えることが、これからさらに重要になると感じました。

今後は、小学生や中学生の不登校、引きこもりの子どもたちをどのようにサポートしていくかに取り組みたいです。保護者や学校と連携しながら、子どもたちが社会に出る一歩を踏み出せるような支援をしていきたいと考えています。

――現在向き合っている課題はありますか。

企業との接点づくりが課題です。教育や学校教育の内情、教育委員会の状況を知らない企業は多いと感じています。そうした企業に対して、どのようにアプローチしていくかを考えています。

地域のお祭りでは、学生企画委員会をつくり、学生が主体的に企画運営に関わる取り組みも行っています。学生には大人たちが頑張る姿を見てもらい、大人には学生の可能性を感じてもらいたい。双方にとって良い空間が生まれれば、地域の活性化にもつながると思っています。

経営者の皆様には、教育をもっと知っていただきたいです。子どもたちには無限の可能性があります。人材育成という観点も含めて、教育に対して温かい目を向け、さまざまな形でサポートしていただけるとありがたいです。

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