モヤモヤからワクワクをつくる――ニューテックシンセイが磨き続けるものづくりの現場力 

株式会社ニューテックシンセイ 代表 桒原晃氏

株式会社ニューテックシンセイは、情報通信機器を中心とした受託生産事業を手がける企業です。1980年の創業以来、時代ごとに変化する通信機器の生産に携わりながら、組み立てから検査、出荷まで一貫して対応できる体制を築いてきました。現在は山形県米沢市を拠点に、大手メーカー向けのパソコン関連製品の受託生産を主力としています。本記事では、代表取締役の桒原晃氏に、会社の歩みや事業の強み、経営における価値観、今後の展望について伺いました。        

米沢で40年以上、情報通信機器のものづくりを支える

――まず、現在の事業の中心について教えてください。

現在のメイン事業は、情報通信機器を中心とした受託生産です。山形県米沢市を拠点に、大手メーカーさんが企画・開発された製品について、組み立てから検査、出荷までを一貫して担っています。生産システムや生産プロセスの設計を含めてお任せいただける状態を整えていることが、当社の最大の特徴です。

メーカーさんにとって「ここに任せれば、量産から品質保証、出荷までまとめて回してもらえる」という存在になること。それが当社が現場で提供している価値だと考えています。

――会社の成り立ちについても教えてください。

私は創業者ではないので聞いている範囲になりますが、1980年の創業時は新星電子有限会社という名前で、近隣のメーカーさんの協力会社として立ち上がったと聞いています。最初の1年ほどはその会社の仕事が中心でしたが、3年目あたりから他のお客様との取引が始まり、独立した一社として歩み始めたようです。

その後は、FAX、ポケットベル、携帯電話の初期の製品など、情報通信機器が世の中に普及していく流れに合わせて生産品目を広げてきました。扱う製品は時代とともに変わってきましたが、「ものづくりの現場を一貫して担う」という軸はずっと変わっていません。

「モヤモヤからワクワクをつくる」という理念 

――会社の理念やビジョンには、どのような想いがありますか。

私の代に変わってから10年少し経ちますが、理念を自分の言葉としてまとめてきたわけではありませんでした。昨年、45周年という節目があり、経営理念や体系をきちんと言葉にした方がいいと考えて、整理を始めています。

その中で出てきたスローガンが「モヤモヤからワクワクをつくる」という言葉です。

――どういう意味が込められているのでしょうか。

私たちが提供している価値は、お客様の問題や課題を解決することです。お客様が自社だけでは解決できない課題というのは、当然、簡単なものではありません。ご依頼を受けたときに「本当にできるのか」「難しいのではないか」というモヤモヤが、最初に出てくることもあります。

でも、そのモヤモヤこそが、自分たちが提供できる価値の源泉だと捉えています。簡単にできることなら、わざわざ当社に頼む必要はありません。難しいからこそ、そこに価値が生まれる。モヤモヤを感じたときに、そこからどうやってワクワクをつくっていくか。その姿勢を現場全体で大切にしています。

経営は、自分を磨くための修行でもある 

――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。

父が2代目として経営をしていたこともありますが、それ以前から経営者になりたいという思いはありました。小学生の頃から、経営者になるか、お坊さんになるか、どちらかになりたいと考えていたんです。

母方の実家がお寺だったこともあり、大人になってから、経営と修行には共通点があると感じるようになりました。お坊さんの修行は、毎日同じことの繰り返しのようでいて、天候や環境は常に変わります。経営も同じで、日々の仕事は一見変わらなくても、事業環境は刻々と変化します。その変化に向き合い続けることが、自分を磨くことにつながっているのだと思います。

――経営判断の軸になっている価値観は何でしょうか。

経営は経済活動ですので、経済的な価値があるかどうかは必ず判断のベースになります。お客様に価値として提供できるものか、それが売上や利益につながるものかは当然考えます。

ただ、最も大切なのは、それが社会のためにどれだけ役立つのか、お客様にとってどれだけ価値あるものなのかという点です。自分たちが提供するサービスや製品が、お客様にとって本当に必要なものかどうか。そこを一番に考えています。

フラットさだけではなく、組織を前に進める強さを 

――社内のコミュニケーションで大事にしていることはありますか。

もともとは、できるだけフラットな関係で組織をつくりたいと考えていました。私が経営に就いた当時は年上の方も多く、その方が自然だと思っていたんです。

ただ、仲が良いだけでは組織はなかなか成長しません。一流の中小企業を目指すには、時には厳しいお願いもしながら、自分が先頭に立って組織を前に進めることが必要だと感じています。フラットさと、前に進める強さの両方を持つこと。そのバランスを意識しています。

――採用や育成で、一緒に働きたいと感じる人はどのような方ですか。

自分の身近な人を大切にできる人と一緒に働きたいです。たとえば、親を大切にしたい、地元で暮らしながら働きたいという思いを持っている人ですね。

地方で事業を続けていくには、人が少なくなる環境の中でも粘り強く取り組む力が必要です。大切にしたいものを持っている人なら、この地域で一緒に頑張っていけると思っています。

あるものを見つめ、少し背伸びして挑戦する 

――今後の展望や新しい挑戦について教えてください。

新しいことに挑戦するときには、まず自社の中にあるもので何ができるのかを意識したいと考えています。新しい設備がない、技術がないといった理由が先に出てしまうと、挑戦できない理由ばかりが増えてしまいますから。

40年以上の中で蓄積してきた技術やノウハウを見つめ直すことが、まずは大切です。自分たちにはこういうものがあるから、こういうことに挑戦できる。そうした目線を持ちたいと思っています。

一方で、あるものだけでは届かない瞬間もあります。少し背伸びして挑戦しても届かない領域、たとえばAIのような新しい技術については、人への投資をしながら取り込んでいく必要があると考えています。既存の事業をしっかり回しながら、新しい挑戦も並行して進めていく。その両輪で次の成長を描いていきたいです。

――今後向き合う課題については、どのように考えていますか。

地方でものづくりの事業を成長させていくうえで、人手は大きな課題です。ものを実際に扱う仕事である以上、ロボットなどを導入したとしても、最終的には必ず人の力が必要になります。

AIによって知識は誰でも手に入れやすくなっていくと思います。ただ、それを現実の現場で形にするには、最後は人が手を動かすしかありません。ものづくりに興味を持ち、楽しいと思える人たちにこの地域に残ってもらい、一緒に仕事をしていくこと。それが、これから一番の課題になっていくと思います。

犬との散歩で季節を感じる時間 

――お休みの日など、リフレッシュの仕方を教えてください。

毎日、犬と散歩している時間が一番のリフレッシュです。犬が3頭いるので、朝晩散歩をしています。田舎なので、ほとんど車も通らないような場所を歩きながら、季節の移ろいを感じています。

朝の空気や景色の中で、まだ少し春が残っていると感じることもあります。そうした時間が、自分にとって大切なリフレッシュになっています。

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