現場の隠れた課題をワンストップで解決する「絶滅危惧種」の異端児が描く、最先端テクノロジーと地域共生の未来

株式会社シスブレイン 代表取締役 高橋 賀朗氏

医療、防災、ドローン、ロボティクスから、宿泊事業やイタリアンレストランの運営まで。一見すると「机の上に全部並べたらひっくり返りそう」なほど脈絡のない多角的な事業を展開している株式会社シスブレイン。しかし、その根底にあるのは「世の中にないものを作り、現場の困りごとをワンストップで解決する」という一貫した哲学です。

大手のITベンダーが決して踏み込めない「現場のリアルな要件定義」を武器に、数々の世界初となるシステムや汎用ロボットを生み出してきた代表取締役の高橋賀朗氏。60歳で役員だった会社を飛び出し、新しいベンチャーを立ち上げた。

大手企業をクライアントに持つまでに成長させた同氏の、圧倒的なバイタリティと型破りな経営哲学、そして彼が描く未来の「よろず相談所」構想に迫りました。

言葉にできない“隠れた困りごと”を具現化する

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

私たちは、一言で言えば「世の中にないものを作る会社」です。ITと医療を融合した情報システム、自律走行型搬送ロボット、防災・ドローン事業、宿泊事業、イタリアンレストラン運営など、多岐にわたる事業を展開しています。「何をやっている会社?」と聞かれるのが一番の褒め言葉かもしれません(笑)。

最大の強みは、徹底した現場主義に基づく要件定義です。多くのシステム開発では、現場経験のない担当者が要望を仕様書に落とし込むため、完成後に「こんなはずじゃなかった」という認識のズレが生じがちです。私たちは現場に深く入り込み、利用者自身も気づいていない本質的な課題を見つけ出し、解決策として形にします。

私自身、社内ベンチャーである情報システム部に務め、40年以上医療現場に関わり、医師や看護師、管理職それぞれの立場や課題を理解してきました。 その経験を活かし、現場に本当に必要な仕組みを提供しています。

私たちが目指すのは課題を根本から解決するワンストップソリューションです。AIも活用しながら現場に最適化した開発を行い、大手ベンダーより大幅に低コストで、実際に使われるシステムやロボットを実現しています。

防災分野では、災害時の被害状況を迅速に把握する防災トリアージシステムを開発しました。そして、大型エンジンドローンのメーカーと連携し、有事と平時に実働できる環境を構築中です。 広範囲を長時間飛行しながら特殊なプレートを連写しエリア別の情報収集や救援、救護、物資輸送を行い、災害対応の効率化を目指しています。

さらに、環境問題に対応する新型熱分解装置や、AIを活用した熊追い払いシステム、園児置き去り防止システムなども共同開発。共通するテーマは、最小限のコストで社会課題を根本から解決することです。

40年勤め上げた会社を飛び出し、60歳でゼロからの挑戦

――経営者になられた経緯を教えてください。

私はもともと中堅商社の社内情報システム部門の責任者でした。その経験の中で、立ち上げたのが―現在のシスブレインの前身です。

40年、同商社に勤め上げ、60歳を機に新たな可能性を目指し起業しました。もともと、医療業界や社会の将来性に強い課題を感じていたのです。大手ベンダーの高額なシステムではなく、中小規模の組織でも導入できる「本当に役立つシステム」を直接届けたい、その一心でした。

創業当初は小さな地方企業として苦戦しましたが、全国の現場を泥臭く回りながら信頼を積み重ねてきました。現在は少数精鋭の体制で、私は営業、企画、要件定義から納品までを統括。AIや最新技術を活用しながら、現場の課題を見極め、最適な仕組みを設計する「現場最前線の問題解決者」として事業を推進しています。

経験豊かなシニアが再び輝ける場所をつくる

――組織運営で意識していることを教えてください。

現在の規模で十分に機能しているため、むやみに社員を増やすつもりはありません。ただ、もしこれから仲間を迎え入れる、あるいは一緒にプロジェクトを動かすとするならば、一度「現役」を退いたシニア層の力を借りたいと考えています。

今の日本には、60歳を過ぎて会社から肩叩きにあったり、65歳で給料が半分に下がって元部下に気を使いながら働いているような、凄まじい能力を持ったベテランたちがたくさん埋もれています。「まだまだ働けるし、能力もあるのに場所がない」という人たちに集まってもらい、彼らの経験を活かせる仕事を一緒にしたいですね。下がってしまった給料の分は、私たちの新しい事業でしっかりと補填すればいいだけのことです。

実際に、うちの宿泊事業やレストラン事業でも、古い概念にとらわれず、1週間ほどでピザの焼き方を覚えて楽しく働きながら暮らしている仲間がいます。年齢なんて、ただの数字ですからね。

空と医療で地域の未来を支える、二つの挑戦

――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

これから実現させていく大きなプロジェクトが2つあります。

1つは、全国7箇所ほどで進んでいる「空の駅」プロジェクトです。4人乗りの次世代ドローンなどを活用し、空の旅を楽しみながら観光ができ、この機体の下層には私たちの防災システムが組み込まれるそんな夢を見ています。

つまり、いざ災害が起きたときには即座に災害救助や物資搬送へと切り替わる、平時・有事ハイブリッドの地域インフラとして機能させます。

そして、もう1つが、私の人生の最後の夢である「無料のよろず相談所」の設立です。これは診療行為や薬の処方、処置は一切行わない、純粋な「セカンドオピニオンの場」です。様々な病気で一人で悩み、孤独を抱えている人たちが気軽に足を運べる場所を作りたい。相談料はお金ではなく、「うちのレストランで食事をしてくれたらいい、コーヒー1杯飲んでくれたらそれでいい」という仕組みです。

日本には、68歳などで定年退職した、非常に高潔で経験豊かなお医者様が男女問わずたくさんいらっしゃいます。そうした心あるリタイア後のお医者様に、私たちが運営する宿泊施設に無料で泊まっていただき、滞在費もこちらで負担する。その代わり、週に3日間だけ相談所に座って、やってくる人たちのよろず相談に乗っていただく。お医者様にとっては、旅を楽しみながら自分の知識で社会貢献ができ、孤独な住民にとっては、専門家にじっくり話を聞いてもらえる温かい場所になる。こんな三方よしのコミュニティを、必ず実現させます。

ーー経営をされる中で「これだけは譲れない」という軸や、同世代の方々へのメッセージをお願いします。

私にとって譲れないものは、「自分の考えを押し通さず、相手の声を徹底的に聞くこと」です。要件定義でも相手を否定せず、対話を重ねながら自ら気づいてもらうことを大切にしています。

また、システムや技術以上に、人と人との信頼関係やコミュニケーションを重視しています。どんなに優れたAIやロボットが登場しても、結局それを動かし、使うのは人です。現場の本音に寄り添うことが何より重要だと考えています。

医療、防災、音楽、サービス業など、これまで幅広い分野に挑戦してきましたが、その原動力は「社会の役に立ちたい」という想いです。好奇心と恩返しの気持ちを持ちながら、これからも人生を楽しみながら挑戦を続けていきたいと思っています。

多岐に渡る趣味が日々のリフレッシュ

――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

音楽が好きなので楽器を演奏するのも好きですし、オートバイも好きで週に1回ほど風を切って走っています。あとは陶芸や渓流釣り、さらには友人のメロン農園の手伝いまでやっています。「仕事も多角的なら、趣味も多角的」と言われますが(笑)、一人の時間も、みんなでワイワイ集まる時間も、どちらも私にとって大切なエネルギー源ですね。

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