特許を軸に、温暖化対策の新市場を切り拓く
株式会社日曜発明ギャラリー 代表取締役 小林 豊博 氏
気候変動による暑さや紫外線への不安が、世界中で高まっています。そうした課題に対し、特許を軸にした商品開発と、気象データ・AI・商品レコメンドを組み合わせたアプリ開発に取り組んでいるのが、小林氏です。冷える帽子から、既存の服に取り付けられる冷却ユニット、さらに世界各国で利用できる「WaHMA」まで。新市場、新素材、新技術を意識しながら、独自の発想で商品化を進めている小林氏に、事業の内容や強み、今後の展望などについて伺いました。
特許と商品力で、新しい市場をつくる
――現在取り組まれている事業の特徴を教えてください。
特許が取れているもの、あるいは特許が取れる見込みのあるものを商品化し、量産して販売していくという流れです。
最初は「冷える帽子」。その後、首のツボを温めるマフラーや、現在着ている服に取り付けられる冷却ユニット、天気予報と健康対策を組み合わせたアプリなどに取り組んできました。いずれも、新商品の構想を特許につなげ、実際の商品として形にしていくという考え方がベースにあります。
会社の理念としては、人との出会いを大切にし、新しいアイデアやオリジナリティをもとに知的財産権を確保し、新市場へのビジョンを構築して商品力を高める活動をしていきたいと考えています。そこに適正な収益を求め、新市場の開拓を継続し、子どもたちに希望を与える新しい世界を目指す、ということです。
その中で大切にしているのは、「人との出会い」「ビジョン」「アイデアと商品力」「収益」の4つです。この4つを回しながら、新市場開拓につなげていくことを意識しています。
――「WaHMA」についても教えてください。
「WaHMA」は、世界の天気や健康対策に合わせて商品を推薦し、その紹介を連鎖させていくアプリです。日本やアメリカ、中国、インド、ヨーロッパ、東南アジア、南米などで使えるように展開を進めています。
画面のユーザーインターフェースは世界共通で、言語や地域設定を変えています。日本版では47都道府県、アメリカ版では都市を選べるようになっています。プログラムはこちらで作っているので、たとえばアメリカの50州に対応させることも可能です。
気象データについては、日本では気象庁や環境省のデータを活用し、海外では世界各地の気象データを提供している会社の情報を使っています。その予測に合わせて、暑さ対策、UV対策、寒さ対策などの健康アドバイスや、おすすめ商品を自動表示する仕組みです。
さらに、AIアドバイス機能もあります。たとえば体調や行動予定を選ぶと、その状況に合わせたアドバイスが表示され、関連する商品も推薦されます。おすすめ商品を共有すると、ニックネームや推薦コメントを反映したQRコードが生成され、その情報を次の人に渡すことができます。これを紹介の連鎖と呼んでいます。
新商品開発で培った力を、自分の資産にしたかった
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
以前は大手電気メーカーで、新商品開発に携わっていました。新商品開発をしていると、特許を書く機会が多くあります。私自身も150件ほど特許を書きましたが、それらはすべて会社の資産になります。
そのときに、この能力を自分の資産にしたいと考えました。会社の定款には「電気で動くもの」という領域があったので、逆に電気で動かないものであればよいのではないかと考えました。そこで、まず帽子という分野に着目したのです。
当時から温暖化によって暑さが厳しくなってきていました。そこで「冷える帽子」というテーマを立て、どうすれば冷える帽子を実現できるかを考えたことが、起業につながっています。
――経営判断の軸になっている考え方はありますか。
新商品開発の原動力として、3つの「新」を意識しています。新市場、新素材、新技術です。新市場というのは、たとえば帽子であっても、ただの帽子ではなく、時代性に合った「冷える帽子」という市場をつくることです。
新素材については、高吸水繊維や透湿防水の素材など、冷えるために必要な素材を取り入れることです。そして新技術は、それらをうまく組み合わせて商品にする技術です。
天気予報を活用したアプリにこだわっているのも、新技術の要素が大きいからです。技術力が必要でありながら、新商品を普及させていくための関連ツールとしても使えると考えています。
商品ができた後は、人との出会い、ビジョン、アイデアと商品力、収益という4つを回していくことが重要です。どこで生産するのか、誰が生産するのか、どの国の工場で作るのか。そうした場面では、人との出会いが非常に大きな意味を持ちます。
少人数だからこそ、互いに気を遣う
――現在の社員数と、社内で大切にしていることを教えてください。
現在の従業員は5人です。社内のコミュニケーションで大切にしているのは、気を遣うことです。会社の中の人同士で、お互いに気を遣うことを大事にしています。
また、リモートで参加しているデザイナーや企画に関わる人もいます。かなり強力な人材をリモートで得ていると感じています。
温暖化で苦しむ地域に、役立つ商品を届けたい
――今後、挑戦していきたいことを教えてください。
温暖化への対応は、今後特に力を入れたいテーマです。世界には暑さに苦しむ国が多く、特に中東では熱中症対策が大きな課題になっています。そうした地域に役立つ商品を届けたいと考えています。
中でも、現在着ている服に取り付けられる冷却ユニットは、制服や民族衣装のデザインを崩さず使える点に可能性があります。日本でも、ヘルメットの下にかぶる冷える帽子は作業現場で多く使われており、こうした商品は国内だけでなく世界でも活用できると考えています。
――海外展開に向けて、どのように取り組んでいますか。
中東関係の国の大使館や経済産業省など、国の取り組みとも接点を持ちながら海外展開を進めています。温暖化への対応は国としても大きなテーマであり、暑い国々への支援やODAのような形で商品を役立てることも視野に入れているところです。
東京都の暑さ対策コンテストや輸出支援、海外企業とのマッチング施策にも応募し、地道に取り組んでいます。実際、資料やホームページでは日本語と英語を併記し、海外を意識した発信も続けています。
土日のテニスが、発想を切り替える時間
――お休みの日のリフレッシュ方法を教えてください。
私の場合はテニスです。土日の午前中は、天気が良ければテニスクラブでテニスをしています。30年ほど続けています。
同じ趣味を持つ仲間がいて、プレーを楽しんでいます。シングルスではなくダブルスなので、誰とペアを組むかが大事になります。上手な人と組むと勝ちやすいですし、上手な人もできれば上手な人と組みたい。そこにいろいろな心理戦があります。
強い人同士、そうでない人同士でじゃんけんをしたり、年配だからと指名したり、そういうやり取りも含めて面白いです。それがリフレッシュになっています。仕事では新しい市場や商品を考え続けていますが、休日はテニスを通じて気持ちを切り替えています。