生きてきたすべてを力に――アドラー心理学と経験で人の未来を支える中野むつみ氏の挑戦
中野むつみ株式会社 代表取締役 中野 むつみ氏
中野むつみ株式会社は、アドラー心理学を基礎としたカウンセリングや経営者支援を行う会社です。看護師としての経験、企業経営に携わった経験、そして自身が数々の困難を乗り越えてきた経験を活かし、一人ひとりが自分らしく前に進めるよう支援しています。今回は代表の中野むつみ氏に、事業への思いやこれまでの歩み、今後の展望について伺いました。
目次
教育や指導ではなく、気づきを支える伴走者として
――現在の事業内容について教えてください。
アドラー心理学を基礎にしたカウンセリングを行っています。また、長年中小企業の経営に携わってきたこともあり、経営者の方々のお話を伺う機会も多くあります。
コンサルティングというよりはカウンセリングに近い形です。今抱えている課題や悩みをお聞きしながら、ご本人が自ら方向性や答えを見つけていくお手伝いをしています。
そのほか、社員の方や一般の方を対象に、アドラー心理学を活用した勇気づけや自己信頼・自己肯定感を高める講座も開催しています。
――他社にはない強みはどのような点でしょうか。
私自身の人生経験そのものだと思っています。
社会人としてのスタートは看護師でした。14年間看護の仕事に携わり、その後は家業である会社の経営に関わることになります。働く側としての経験と経営者としての経験、その両方を持っていることは大きな財産です。
さらに、看護師、中途採用社員、経営者、新卒採用や中途採用の人材育成など、さまざまな立場を経験してきました。その過程で経営者の勉強会にも参加し、多くの学びを得ています。
アドラー心理学と出会ったことで、自分自身を深く見つめる時間も持てるようになりました。自己肯定感や自己信頼を育み、自分自身のブレーキを外していく経験を重ねてきたからこそ、今悩んでいる方の気持ちを理解しやすいのだと思います。
「すべての人が前に進めるように」理念に込めた思い
――理念やビジョンについてお聞かせください。
理念には、私が生きてきたすべてを使って支援したいという思いを込めています。
掲げているのは、「すべての人が自分の理想の目的に向かって元気に明るく進めるよう支援します」という考えです。
誰もが自分らしい人生を歩み、自分の目指す方向へ進んでいけるよう応援したい。その思いが会社の根底にあります。
危機を乗り越えた経営経験が今の原点
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
もともと私は副社長という立場で家業に携わっていました。
会社は公共事業に関わる専門性の高い事業を行っていましたが、バブル崩壊後に売上が大きく落ち込み、経営環境が一変します。会社のさまざまな矛盾が表面化し、何をどうすればいいのか分からない状況でした。
夫が社長、私が副社長という立場で、会社を立て直すために必死で学び続けました。経営者団体や勉強会にも参加し、多くの課題と向き合いました。
その中で組織の再構築や経営判断を重ね、少しずつ会社を立て直していったのです。借入金の返済を進め、経営基盤も改善していきました。
その後、自分が会社を離れる決断をした際には、後任となる優秀な人材が入社し、2年かけて業務を引き継ぎました。振り返ると、自分が手放す決断をしたことで新しい流れが生まれたのだと感じています。
――現在の会社を設立した経緯を教えてください。
会社を離れる準備を進めていた頃、自分はこれから何をしたいのか分からなくなっていました。
そんな時、経営者仲間から「インタビューに向いている」と言われたのがきっかけです。経営者へのインタビューを始め、約1年半にわたって多くの方のお話を伺いました。
続けていくうちに、自分は若い経営者の相談相手になれるのではないかと思うようになったんです。人間関係や経営、お金の問題など、自分自身が苦労してきた経験があるからこそ力になれると感じました。
そこで2024年1月に中野むつみ株式会社を設立しました。社名も、自分自身が商品であり支援の源であるという思いから、自分の名前をそのまま会社名にしています。
人の成長を信じることが支援の原点
――経営判断の軸になっている考え方はありますか。
まず、その仕事が本当に他者のためになっているかを大切にしています。
売上だけを追いかけると、本来の目的を見失ってしまうことがあります。だからこそ、自分のためだけの判断になっていないかを常に問い続けています。
また、自分自身が本当にやりたい仕事かどうかも重要です。心から支援したいと思える相手でなければ、その方のためにもなりません。
お客様本人だけでなく、その周囲にいる社員や家族にとっても良い影響を与えられるサービスであること。それが私の判断基準です。
信頼関係はまず「聞くこと」から始まる
――コミュニケーションで大切にしていることを教えてください。
まずは相手の話をしっかり聞くことです。
そして、お互いに認識の違いがないかを必ず確認します。人は伝えたつもりでも、実際には伝わっていないことが少なくありません。
だからこそ確認を怠らないようにしています。また、相手の人間性を尊重することも大切です。その人自身を尊重しながら関わるよう常に意識しています。
――一緒に働きたいと思う人はどのような方ですか。
信頼関係を築きたいと思っている人です。
今は自信がなくても構いません。ただ、自分を信頼できる人間になりたいと思っている人と一緒に歩みたいですね。
自分との信頼関係が育つと、自然と他者との信頼関係も築けるようになります。その気持ちを持っている人なら必ず前に進めると思っています。
アドラー心理学をもっと身近な存在へ
――今後取り組みたいことを教えてください。
アドラー心理学をもっと身近なものとして広めていきたいと考えています。
現在はSNSで1分間の動画配信を行っていますが、それに加えて8分程度の音声コンテンツも制作しています。気持ちが少し落ち込んだ時や悩んだ時に、気軽に聞いて勇気づけられるものにしたいと思っています。
また、経営者の方に向けたカウンセリングや継続的な伴走支援にも力を入れていきたいですね。経営者は孤独になりやすい立場です。話を聞いてもらい、自分で答えを見つけていく場として活用していただけたらうれしく思います。
さらに、フードバンク活動を行うNPO法人と連携し、経済的に厳しい状況にある方へ無料カウンセリングを提供する取り組みも始めました。誰かに話を聞いてもらうだけで心が軽くなることがあります。そうした支援も続けていきたいと考えています。
――最後に、大切にしている価値観を教えてください。
人のためになる仕事しかしないことです。これは絶対に譲れません。
将来的に社員を迎えることがあれば、その人がやりがいを持って働ける環境をつくりたいと思っています。仕事だけでなく、家族との時間、自分自身の時間も大切にできる働き方を守りたいですね。
私自身、好きで楽しいと思える仕事だからこそ続けられています。論語の勉強会で学んだ「理解するより好きになること、好きになるより楽しむことが大切」という考え方にも強く共感しています。
また、「これからの時代をつくるのは若い人たち」という言葉も大切にしています。若い世代が持つ力や可能性を信じ、その成長を応援しながら、自分自身も学び続けていきたいと思っています。