守るために変わり続ける――パリー食堂4代目が歩む継承と挑戦の道
株式会社パリー 代表取締役 川邉 晃希氏
100年以上にわたり受け継がれてきた歴史ある飲食店を営む株式会社パリー。国登録有形文化財に指定された建物を守りながら、4代目として事業を引き継いだ川邉晃希氏。伝統を受け継ぐだけでなく、SNS活用やクラウドファンディングなど新たな挑戦を重ね、歴史と文化を未来へつないでいます。本記事では、川邉氏が事業を承継した経緯や経営における考え方、組織づくりへの想い、そして今後の展望について伺いました。
100年の歴史と文化を受け継ぐパリー食堂の強み
――現在の事業内容と、他社にはない強みについて教えてください。
当社は飲食店を運営しています。現在はこの事業を中心に取り組んでいます。
当社ならではの特徴は、やはり店舗として使用している建物にあります。現在の建物は国登録有形文化財に指定されており、この場所に移ってから99年が経ちました。建物だけでなく、受け継がれてきた歴史や文化も大きな財産です。
そうした背景もあり、ありがたいことに多くのメディアから取材をいただいています。多い時には1週間に2〜3件ほどテレビ取材が入ることもあり、歴史ある建物や文化的な価値に関心を持っていただけていることを実感しています。
――会社として大切にしている理念やビジョンを教えてください。
私たちが大切にしているのは、「古き良きものをどう活用していくか」ということです。
今後は店舗展開にも挑戦していきたいです。ただ、新宿や池袋のような人の多いエリアへ出店するというよりは、歴史や文化が色濃く残る地域に魅力を感じるんです。例えば川越のような場所ですね。
歴史ある建物や文化は、守るだけでなく活かしていくことにも意味があると思っています。
受け継がれてきたものを未来へ残しながら、新しい挑戦にも取り組んでいきたいです。
4代目として受け継いだ歴史と責任
――代表取締役に就任された経緯について教えてください。
私で4代目になります。
祖父の代までは個人事業として続いてきましたが、約2年前に法人化するタイミングがありました。その際に事業承継を行い、私が代表取締役に就任しています。
法人化を決めた背景には、売上や利益が少しずつ伸びてきたことがありました。それまでは身内だけで経営を続けてきたのですが、今後はアルバイトやパートの方々にも加わっていただきながら事業を広げていきたい。そうした思いから、株式会社という形を選びました。
――これまでどのような経験を積まれてきたのでしょうか。
もともとは19歳の頃から会社員として働き、赤坂にある高級中国料理店で修業をしていました。その後、約8年前から家族が営んでいたパリー食堂に携わるようになりました。
一方で、ブログ運営による広告収入やECを活用した物販事業など、飲食以外の分野にも挑戦してきました。
そうした経験は、現在の事業運営にも活きていると思います。
歴史を未来へつなぐための経営判断
――経営をする上で大切にしている考え方はありますか。
停滞してしまうことが、一番良くないと思っています。
もちろん歴史や文化は大切です。ただ、それだけを守り続けるのではなく、大事な部分を残しながら、新しいことにも挑戦していかなければなりません。
その一つがSNSでした。祖父の代ではSNSそのものが身近な存在ではありませんでしたが、今の時代は発信をしなければ売上を伸ばしていくことも難しくなっています。そうした危機感もあり、2年前から本格的にSNS運用を始めました。
また、クラウドファンディングにも挑戦し、2,200万円の支援をいただくことができました。歴史ある建物を守っていくためにも、これまでのやり方にこだわらず、新しい手段を積極的に取り入れていきたいですね。
――影響を受けた人物について教えてください。
YouTubeチャンネル「絶対に負けない飲食経営」を運営されている黒瀬氏の影響は大きいです。
飲食業界では「おいしいものを作ればお客様は来てくれる」という考え方が根強くあります。私自身も、もともとはそうした考え方に近かったかもしれません。
ただ、黒瀬氏は飲食店経営を非常に論理的に捉えていて、特に立地戦略を重視されています。立地を重視する考え方に触れた時は衝撃を受けました。料理人としては持てなかった発想だったからです。
現在も相談させていただく機会があり、多くの学びを得ています。
家族のような距離感が生む働きやすさ
――社内コミュニケーションで意識していることを教えてください。
今は1店舗のみの運営なのでできる部分もありますが、スタッフとの距離感は常に意識しています。
あまり細かく「あれはダメ、これはダメ」と縛りすぎると、働くこと自体が嫌になってしまうと思うんです。だからこそ、できるだけフラットな関係性を心掛けています。
家族経営の延長線上というと言い過ぎかもしれませんが、どこかそれに近い空気感のある職場でありたいですね。
また、月に一度は食事会も開いています。会社負担で食事に行き、普段とは違う形でコミュニケーションを取る機会を設けています。
――どのような人と一緒に働きたいですか。
まずは真面目であることですね。そして素直であることも欠かせません。
飲食業は接客業でもありますので、お客様のことを第一に考えられる方と一緒に働きたいです。
「自分がやられて嫌なことはしない」ということは、スタッフにも伝えています。お客様に対しても、一緒に働く仲間に対しても、その考え方は変わりません。
建物を守り、その先の未来へ
――今後の展望について教えてください。
まずは建物を修繕することです。
クラウドファンディングで2,200万円を調達したのも、このパリー食堂を守りたいという思いからでした。国登録有形文化財ではありますが、修繕費用を国が負担してくれるわけではありません。
約2年前には、修繕に4,000万円ほどかかると言われました。法人化したのも同じ頃です。個人事業主から法人成の形で事業承継した為通帳はゼロからのスタートでした。
それでもクラウドファンディングを通じて支援してくださった方々がいます。その期待に応えるためにも、まずはしっかりと修繕を進めることが何より先です。
そして、この場所を守りながら安定した運営を続け、その先で店舗展開にも挑戦していきたいと考えています。出店するのであれば、これまでお話ししたように、歴史や文化が根付く地域で展開していきたいですね。
――休日の過ごし方やリフレッシュ方法を教えてください。
休みらしい休みはほとんどありませんが、月に一度ほど家族で旅行へ行くことがあります。その時間が良いリフレッシュになっていますね。
なかなかまとまった休みは取れませんが、そうした時間が、自分にとっては欠かせないものになっています。