伝統を守り、新しさを包む――羽二重餅で人と地域をつなぐ山田桂月堂の和菓子づくり
株式会社山田桂月堂 代表 山田氏
明治34年(1901年)の創業以来、秋田県大館市で和菓子づくりを続ける株式会社山田桂月堂。伝統の味を守りながらも、羽二重餅に洋風素材を取り入れた創作和菓子を展開し、全国へ販路を広げています。その根底にあるのは、お菓子を通じて人と人をつなぎ、大館の魅力を発信したいという想いでした。本記事では、代表の山田氏に事業へのこだわりや経営観、今後の展望について伺いました。
目次
和菓子を全国へ届ける老舗菓子店の取り組み
――現在の事業内容を教えてください。
当社は創業明治34年から125年間、主に和菓子の製造販売を続けてきました。中でも羽二重餅を主力商品としており、定番商品に加えて季節限定の商品も展開しています。
地元のお客様に支えられながら営業を続けてきましたが、現在はインターネットを活用した販売にも力を入れており、全国のお客様へ商品をお届けしております。
――御社ならではの強みや特徴はどのような点にありますか?
当社がある秋田県大館市は人口減少が進んでいる地域です。そのため、市内のお客様だけでなく、市外や県外にも商品を届けたいという想いからホームページを立ち上げました。
その結果、さまざまなバイヤー様からお声がけをいただき、全国へ発送する機会が増えています。関東や関西を中心に販売が広がっており、大きな注文では1,000個単位で発送することもあります。
小さな地域の和菓子店ではありますが、全国のお客様に商品を届けられる環境を整えていることが当社の特徴だと思います。
羽二重餅に込めた創意工夫と和菓子づくりへの想い
――羽二重餅を主力商品にしたきっかけを教えてください。
高校卒業後に製菓専門学校へ進学した頃、ちょうどクリーム大福が世の中に出始めていました。その頃から「自分でもこういうお菓子を作ってみたい」という想いがあったんです。
その後、金沢で修行をしていた際に隣の福井県の羽二重餅を知りました。実際に食べてみると、きめ細やかでなめらかな食感がとても印象的でした。
修行を終えて戻ってきた時、以前から作りたかったクリーム大福に羽二重餅を組み合わせれば、クリームや餡との相性が良く、長く愛される商品になるのではないかと考えました。それが現在の羽二重餅づくりの原点です。
――季節限定商品や新しい味はどのように生まれるのでしょうか?
季節の羽二重餅を始める際、和菓子店ではあまり使わない材料を取り入れてみたいと考えました。
最初に取り組んだのはマンゴーを使った商品です。マンゴーに合わせてココナッツミルク入りの餡を使用するなど、和菓子と洋風素材を組み合わせる工夫を行いました。
伝統的な和菓子の良さは大切にしながらも、少し創作的な要素を加えたお菓子を作りたいという気持ちがあります。そうした発想から、さまざまな季節限定商品が生まれています。
――お菓子づくりに込めている想いや理念を教えてください。
お菓子は人と人をつなぐものだと思っています。お祝い事や記念日など、多くの場面で人を笑顔にする力があります。
また、お菓子を通じて大館市を知っていただき、実際に足を運ぶきっかけになれば嬉しいですね。街おこしというほど大きな話ではありませんが、お菓子を通じて地域の魅力を伝えていきたいと考えています。
菓子職人として歩んできた道と譲れない価値観
――お菓子づくりの道に進まれた経緯を教えてください。
実は最初から家業を継ごうと思っていたわけではありません。
高校卒業の際、父から東京の製菓専門学校へ行かないかと勧められました。当時はお菓子への強い興味はなかったのですが、東京へ行きたいという気持ちがあり、進学を決めました。
ところが、お菓子づくりに触れるうちに、その楽しさや喜びを感じるようになったんです。そこから自然と、この仕事を続けていきたいと思うようになりました。
今でも経営者というよりは、菓子職人としてお菓子づくりに向き合っている感覚の方が強いですね。
――経営や商品づくりにおいて大切にしている考え方は何でしょうか?
一番大切なのは、食べる人のことを考えて作ることです。
自分本位ではなく、どうすれば美味しく食べてもらえるか、どうすれば笑顔になってもらえるかを考えるようにしています。
少し馬鹿げていると思われるかもしれませんが、「美味しくなーれ」と思いながら作るのと、何も考えずに作るのとでは違いがあると思っています。その気持ちは今も変わりません。
――経営の中で譲れない想いを教えてください。
近年は物価上昇などもあり、経営環境は決して楽ではありません。
それでも、お世話になっている取引先や従業員には迷惑をかけたくないという気持ちがあります。どんな状況になったとしても、責任を持って向き合うことは譲れない部分です。
少人数だからこそ大切にする誠実な仕事
――社内のコミュニケーションで意識していることを教えてください。
現在は4人ほどの体制で運営しています。製造は主に2人で担当し、そのほか販売や包装などを分担しています。
少人数だからこそ、みんなが気持ちよく働ける環境づくりを大切にしています。感情的にならないよう心掛けていますし、注意すべきことは伝えながらも、働きやすい雰囲気を維持したいと思っています。
また、出掛けた先で買った銘菓をみんなで試食し、感想を話し合うこともあります。そうした時間も良いコミュニケーションになっています。
――今後採用するなら、どのような方と働きたいですか?
現在は新規採用の予定はありませんが、もし採用するのであれば誠実な方と一緒に働きたいですね。
扱っているのは食べ物ですから、人の口に入るものへの責任をしっかり理解していることが大切です。仕事を軽く考えるのではなく、一つひとつ丁寧に向き合える方と仕事ができればと思います。
全国展開への挑戦とこれからの展望
――今後挑戦していきたいことを教えてください。
今後はさらに全国へ販路を広げていきたいと考えています。
現在はバイヤー様からお声がけいただくことが多く、そうしたご縁を大切にしながら販売先を広げています。また、営業支援の仕組みも活用し、自社だけでは対応が難しい部分を補っています。
最近では高級感のあるお菓子の開発依頼をいただくこともあり、そうした商品づくりにも挑戦してみたいと思っています。
――現在感じている課題はありますか?
やはり社会情勢の影響を受けやすいことです。
包装資材の価格上昇や納期の長期化など、さまざまな影響があります。業界全体の課題でもありますが、そうした状況に左右されにくい方法を模索しているところです。
――お休みの日のリフレッシュ方法を教えてください。
休日は子どもの予定に合わせて休みを取り、部活動や学校行事の応援に行くことが多いです。子どもが頑張っている姿を見ると、自然と気持ちもリフレッシュされます。
以前はバレンタインデーなどに一緒にお菓子を作ることもありました。ただ、職業柄どうしても作り方が気になってしまい、「そのやり方だと違うよ」と口を出してしまうこともあって、最近はあまり一緒に作らなくなりました。
それでも家族と過ごす時間は大切にしており、仕事から離れて気持ちを切り替える貴重な時間になっています。