地域を教材に、若者と地域社会をつなぐ――株式会社テラコが目指す新しい学びの形
株式会社テラコ 代表取締役 龍崎 明信氏
地域を学びの場として活用し、若者と地域社会をつなぐ取り組みを展開している株式会社テラコ。高校の探究学習向け教材の開発や大学でのアクティブラーニング支援を中心に、教育分野で独自の事業を展開しています。2024年に創業した同社は、「地域を教材にする」という考え方を軸に、学生が地域との縁やつながりを感じられる機会づくりに取り組んでいます。今回は、代表取締役の龍崎明信氏に事業内容や創業の経緯、今後の展望について伺いました。
地域を学びにつなげる独自の教育事業
――現在の事業内容について教えてください。
株式会社テラコでは、「地域を学びにつなげる」をテーマに、地域を題材とした教材づくりを行っています。現在は高校の探究学習向けにオリジナル教材を提供しており、学校現場で活用いただいています。
また、近年増えているアクティブラーニングの支援も行っています。生徒同士が対話しながら学びを深める授業づくりをサポートしており、その流れで千葉商科大学人間社会学部において、アクティブラーニングコーディネーターとして継続的な伴走支援も行っています。
さらに、自主事業として、地域課題解決型ワークショップ「地域ソン」を展開しています。主に横須賀を舞台に、大学生を中心とした参加者が地域のボランティア団体や企業と関わり、実際の地域課題や事業テーマについて考え、アイデアを提案する活動を続けています。
――高校で行われている探究学習とは、どのようなものなのでしょうか。
探究学習(総合的な探究の時間)は、それまでの「総合的な学習の時間」を発展させる形で、学習指導要領に位置付けられたものです。従来のように先生が前に立って知識を教えるだけではなく、生徒自身が疑問を持ち、主体的に課題へ取り組むことが重視されています。
学校ごとに内容は異なりますが、自分の興味や関心からテーマを見つけて深掘りすることが理想とされています。ただ、生徒自身がテーマを設定するのは簡単ではありません。そのため、学校があらかじめ用意したカテゴリーの中から課題を見つけていくケースもあります。教科書のような確立された形があるわけではなく、学校ごとに試行錯誤しながら進められている領域だと感じています。
教育への想いから始まった起業への道
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
もともとは通信系のシステムエンジニアとして働いていました。同じ業界で経験を積む中で、業界の外には自分の知らない世界がたくさんあることを感じるようになりました。一方で、いつかは自分で何かをやりたいという思いも持っていました。
転機になったのは、中学生の自殺に関するニュースを目にしたことです。私自身も中学生時代に悩みを抱えた経験があり、「今も同じような問題が起きているのか」と強い衝撃を受けました。
その後、地元で不登校や引きこもり、いじめ問題を扱うボランティア団体の活動に参加し、自分で企画を立ち上げる機会をいただきました。そこで社会との新たなつながりや、企画を実現していく面白さを知り、教育に関わる仕事を自分でつくりたいと思うようになったことが、起業を志したきっかけです。
一方で、株式会社テラコの事業や理念の原点には、学生時代に横須賀の実家を離れた際に抱いた喪失感があります。地域を離れたことで、それまで当たり前にあった人や場所とのつながりの大きさに気づきました。その経験から、若者が地域とのつながりに縁を感じ、自分の地域を「帰れるホーム」のように感じられるきっかけをつくりたいと考えるようになりました。
それが、「地域を学びの題材にし、人と地域をつなぐ」という現在のテラコの事業につながっています。
――現在の組織体制について教えてください。
会社を設立したのは2024年9月です。現在は私一人で事業を運営しています。
フィールドワークやイベントを実施する際には、必要に応じてスポットで業務委託スタッフの方々に協力していただきながら進めています。
教育事業を基盤に、新たな挑戦へ
――今後の展望についてお聞かせください。
現在取り組んでいる高校向けの探究事業は、今後もさらに発展させていきたいと考えています。ただ、学校現場では教材費の範囲内で予算が組まれることが多く、収益化という面では難しさを感じています。
そのため、探究事業を継続しながらも、新たな収益の柱となる事業を育てていきたいと考えています。教育事業で培ってきたネットワークや経験を活かしながら、事業としての成長も実現していきたいです。
――新規事業として考えている内容を教えてください。
現在事業化を進めているのは、企業の採用広報やブランディングを支援するサービスです。
企業がSNSなどで情報発信を行っても学生に届きにくかったり、そもそも認知されないといった課題をよく耳にします。
そこで、これまで築いてきた学校や大学、学生団体とのネットワークを活かし、学生集客付きのオープンカンパニー型広報支援サービスを展開していきたいと考えています。
一例では、横浜の株式会社金沢シーサイドFM様へ、学生を招待する企画も実施しました。番組見学や生放送への出演、関連施設の見学などを通じて、企業と学生が直接交流する場をつくりました。
一方向に会社の説明を聞くだけではなく、学生自身が体験し、質問し、社員の方と話すことで、求人情報やホームページだけでは伝わりにくい職場の雰囲気や、働く人の考え方まで知ることができます。企業にとっても、学生が自社をどのように見ているのかを知り、今後の採用広報に生かせる機会になります。
さらにはこうした体験の様子や学生の声を動画や記事として残し、一度のイベントで終わらず、採用広報の資産として活用できるようサポートします。
本サービスは「ガクドア」という名称で、企業様に認知されるサービスに育てて行くよう進めております。
――現在直面している課題について教えてください。
これまでの活動で一定の実績は積み重ねることができましたが、まだ十分に知られている状態ではありません。そのため、実績を継続的に発信しながら認知を広げていくことが課題だと考えています。
また、今後は企業向けの事業も強化していくため、新たな営業先との接点をどのようにつくっていくかも重要なテーマです。
若者が地域との縁を感じられる社会へ
――会社を通じて実現したいことを教えてください。
私が目指しているのは、「地域を教材にする」という活動を通して、若い世代が地域とのつながりを感じられる社会をつくることです。
無償で実施している「地域ソン」も、そのための取り組みの一つです。地元である横須賀の企業やボランティア団体と連携しながら、学生が地域との縁やつながりを感じられる機会をつくっています。
こうした経験を通じて地域との関わり方を知ることができれば、将来自分の地元へ戻った際にも同じような活動を実践できると思っています。地域とのつながりを持つ若者が増えることで、孤立する人を減らすことにもつながるのではないかと考えています。
――経営において大切にしているポリシーはありますか。
今後、企業向けの採用広報支援事業を拡大していく中でも、最も大切にしたいのは「参加する学生の学びにつながるか、成長できるか」という視点です。
ガクドアのような採用広報支援事業の場合、顧客は企業になりますが、その場に学生も参加することになります。その場が、学生にとって価値のある経験にならないのであれば、その取り組みは行うべきではないと思っています。企業への価値はもちろんのこと、集まってくれる学生たちの学びにつながる場を設計すること、つねに学生視点を持つことが、弊社らしさだと考えます。
もちろん、地域ソンのような直接参加してもらうワークショップでも同じです。たとえ無償であっても、学生が学び、成長できる場になっているかを判断基準として持ち続けたいと考えています。
――最後に、今後の目標をお聞かせください。
理想を言えば、株式会社テラコという存在が地域に残り続けてくれたら嬉しいです。ただ、それ以上に大切なのは「地域に縁を持つ若者が増えること」だと思っています。
それを達成するためにも、事業として継続しながら、地域に根ざしていけたらと思っています。