花と緑をもっと身近に――体験を通じて暮らしを豊かにする、株式会社オザキフラワーパークの挑戦
株式会社オザキフラワーパーク 代表取締役 尾崎 明弘氏
花や緑は、人々の暮らしに彩りや安らぎをもたらす存在です。一方で、ライフスタイルや市場の変化により、園芸業界を取り巻く環境も変化しています。そのような中、株式会社オザキフラワーパークは、植物を販売するだけでなく、体験を通じて花や緑を身近に感じられる店舗づくりに取り組んでいます。今回は、代表取締役の尾崎明弘氏に、事業への想いや経営に対する考え方、組織づくり、今後の展望について伺いました。
目次
花や緑がある暮らしを広げるため、体験型の店舗づくりを追求する
――現在の事業内容や会社の特徴について教えてください。
当社は父が創業した会社で、私は二代目になります。創業当時は父が花の生産から始め、その後、周辺の環境が変化していく中で園芸店として事業をスタートしました。
私が社長に就任した頃は、園芸業界全体の需要が成熟し、以前のような勢いがなくなっていました。従来の園芸店の形だけでは厳しいと感じ、どうすればお客様にもっと楽しんでいただけるかを考え続けた結果、体験型・滞在型の店舗へと方向転換しました。
植物を購入するだけではなく、店内で過ごす時間そのものを楽しみながら、宝探しをするような感覚で植物と出会える場所を目指しています。この取り組みは、当社の強みの一つになっています。
――会社として大切にしている想いや目指す姿について教えてください。
私たちが扱っている花や緑は、誰かが植え、美しく育てようとする気持ちがあって初めて価値が生まれるものです。花や緑によって街が美しくなり、人の心が豊かになる。そのお手伝いができることは、園芸店として何よりも嬉しいことだと感じています。
だからこそ、単に商品を販売するだけではなく、花や緑をより身近に感じていただける存在であり続けたい と考えています。
幼い頃から決めていた道を歩み、園芸文化をもっと身近な存在へ
――経営者を目指したきっかけについて教えてください。
私には「会社を継ぐ」と決意した特別なきっかけはありません。物心がついた頃には、将来はこの園芸店を継ぎ、自分の手で成長させていきたいという思いを自然に持っていました。
幼い頃から自然に囲まれた環境で育ち、その心地よさや豊かさを身近に感じてきました。そのため、この仕事に携われること自体がありがたいことであり、自分にとって幸せな生き方だと感じています。
一方で、日本の園芸を外から見てみたいという思いも強くありました。その挑戦としてオランダへ渡り、研修を行うとともに、自ら花屋を営んだ経験があります。
花や緑が文化として根付いている環境で過ごした時間は、私にとって非常に大きな学びとなりました。日本でも、花や緑がもっと暮らしの一部として受け入れられ、ライフスタイルの中に自然と溶け込むような社会にしたいという思いは、その経験を経てさらに強くなりました。
――経営において大切にしている価値観を教えてください。
経営判断をするときも、その軸は一貫しています。
「花や緑が文化として受け入れられ、ライフスタイルに自然と溶け込む社会にしたい 」という考えから外れることはありません。その軸を大切にしながら、店舗の価値をさらに深掘りし、 イベントやコミュニケーションを通じて、お客様に「また来たい」と思っていただける店づくりを続けています。
一人ひとりが主体的に考え、お客様に最も近い場所から価値を生み出す
――社員の皆さんとのコミュニケーションで大切にしていることを教えてください。
社員とのコミュニケーションでは、「伝える時間」と「聞く時間」を意識して分けています。私が考えや方向性を伝える時間と、それを実践した社員の声を聞く時間を分けることで、お互いが集中して向き合える環境をつくっています。
会議も目的ごとに分け、それぞれの役割を明確にしています。会社全体へ発信する場と、部門ごとに話を聞く場を設けることで、一人ひとりの考えをしっかり受け止められるよう心掛けています。コミュニケーションの量も大切にしながら、現場との距離をできるだけ近く保つことを意識しています。
――採用や組織づくりでは、どのようなことを重視していますか。
採用や育成では、会社の方向性を理解し、自分自身で目標を定めて主体的に取り組める人と一緒に働きたいと考えています。そのため、採用から教育、評価までがつながる仕組みづくりにも取り組んできました。
当社はチェーン店ではなく、お客様に最も近い現場で働くスタッフの判断が店舗づくりを左右します。現場で得た気づきをもとに、お客様が求めているものやこれから興味を持ちそうなことを考え、自ら仕入れや売り場づくりを行える組織を目指しています。一人ひとりが商売人として主体性を持ち、自ら行動することが、お客様に喜んでいただける店舗づくりにつながると考えています。
新たな価値を生み出し続ける
――今後の展望について教えてください。
これまで当社は、植物を販売するだけではなく、体験を楽しめる店舗づくりへと進化させてきました。その取り組みが現在の成長につながっていると感じています。
今後も、この体験型・滞在型の店舗をさらに進化させていくことが大きなテーマです。2018年にリブランディングを行いましたが、次の節目を迎えるタイミングに向けて、改めて会社の未来を見据えた新たなリブランディングにも取り組んでいます。
また、DXも重要なテーマの一つです。会員制度によって蓄積してきた顧客データをより有効に活用し、今後の店舗運営に生かしていきたい と考えています。
さらに、ガーデンの設計・施工や生花の専門店など、植物と親和性の高い分野にも力を入れています。加えて、ポップアップ出店などを通じて、地域の方々により身近な存在となれるよう取り組みを進めています。
私自身、経営者として影響を受けているのは、ユニクロの柳井正社長の言葉です。さまざまな発信に触れるたび、流通や小売に携わる立場として学ぶことが多くあります。また、小説家の村上春樹さんの作品からは、世界観のつくり方について多くの刺激を受けています。
自分自身と向き合う時間が、経営を前へ進める力になる
――休日の過ごし方やリフレッシュ方法について教えてください。
休日は自然の中で過ごす時間を大切にしています。山へ登ったり、冬にはスキーを楽しんだり、普段はランニングをしたりと、アウトドアで身体を動かすことが私にとって一番のリフレッシュです。
それと同じくらい大切にしているのが、一人で過ごす時間です。仕事だけでなく、自分自身についてじっくり考える時間を意識して設けています。
特に半年に一度は、一週間ほど一人で過ごす時間を設け、事業の方向性や会社の未来について考えています。日々の気づきや反省はメモやノートに残し、半年ごとに整理しながら次の行動につなげています。
経営は目の前の判断だけで成り立つものではありません。自分自身との対話を重ね、一本の軸を持って進み続けることが会社の未来につながると考えています。
これからも花や緑のある豊かな暮らしを広げるため、自分自身と向き合いながら、新たな挑戦を続けていきたいと思います。