心の変化に気づき、誰もひとりにしない社会をつくる
株式会社メンタジア 代表取締役 白石 雄聖氏
株式会社メンタジアは、中小企業を主な対象に、従業員の健康状態やストレス状態を日々可視化するDXツールを提供しています。年に一度のストレスチェックだけでは捉えきれない小さな変化に目を向け、離職やハラスメントなど、水面下で起きている問題を早期に察知し、予防につなげることを目指しています。代表取締役の白石雄聖氏は、自身も若くして社会に出る中で、人に支えられた経験を重ねてきました。その原体験をもとに、誰かがひとりで抱え込まない社会をつくるため、事業に取り組んでいます。
心の状態を日々可視化し、不調の兆しを早期に捉える
――現在の事業内容や、他社にはない強みについて教えてください。
当社では、中小企業をターゲットに、従業員様の健康状態やストレス状態を日々可視化することで、離職やハラスメントといった、水面下で起きている問題を早期に察知し、予防するためのDXツールを提案しています。
一般的に企業のストレスチェックの実施というと、年に一回などが多いと思います。ただ、年一回では、その時点での状態しか見えません。私たちは毎日の状態を見ていくことで、変化に早く気づき、予防につなげることを大切にしています。基本的には、従業員の方に毎日質問へ回答してもらいます。現在、企業向けに行っているものでは、朝のコンディションとして六項目、夜の振り返りとして五項目を入力してもらう形で、二つともそれぞれが30秒ぐらいで終わります。回答された内容は、上司の方が数値として確認できるようになっています。例えば、普段から頑張っている人は、寝られていても寝られていなくても、数値が一定であることもあります。ただ、その人にとっての基準から急に変化したときには、何かが起きている可能性があります。大切なのは、その変化を検知することです。アラートが出ることで、上司が声かけを行うきっかけにもなります。自分から相談できない方や、弱みを見せられない方は多いと思います。だからこそ、違和感に気づき、相談につながるきっかけをつくることが必要だと考えています。
相談することは、弱いことではありません。困っていることを解決するために必要な情報交換の一つだと思っています。普段なかなか発言できない方でも気軽に発信できるように、匿名性を担保した相談チャット機能もつけています。
小さな力で、誰かの救いに
――これまでのキャリアや、起業につながる思いを教えてください。
私は16歳から仕事をしていました。右も左も分からない状態で、目の前のことに全力で取り組んできましたが、うまくいかないこともありました。その中で、手を差し伸べてくれた人の存在が、今でも心に残っています。この会社を立ち上げる前にも、個人で仕事をしたり、さまざまな職を経験しました。その中で、悩んでいるときに手を差し伸べてもらえることは、決して当たり前ではないと感じるようになりました。
当時の私のように、悩みをひとりで抱え込んでいる方はたくさんいると思います。だからこそ、同じようにひとりで抱え込む人が少しでも減るきっかけになれたらと思っています。「小さな力でも、何か救えることがあるのではないか」そう思ったことが、この会社を立ち上げた経緯です。私にとっては、社会貢献が一番大きな軸です。
同じ方向を向き、共に進む
――現在の組織体制と、組織運営で意識していることを教えてください。
今は、直接雇用ではエンジニアが一人います。そのほかに、業務委託の営業の方にも関わっていただきながら進めています。今後は、すべて正規の形にしていきたいという思いもあります。
コミュニケーションで大切にしているのは、スキルや仕事ができること以上に、誠実に向き合ってくれること、同じ方向を向けることです。もちろんスキルも大事ですが、それ以上に、同じビジョンを持って進めるかどうかを大切にしています。私が代表だから偉いということではありません。いい意味で距離感を近くし、しっかり切磋琢磨し合える関係でいたいと思っています。気兼ねなく相談を受けたり、同じ方向を向いて一緒に取り組めたりすることが、すごく大事だと感じています。
そのためにも、会社としてのビジョンは常に伝えています。私たちはこういう方向に進んでいくんだということを共有しながら、日々取り組んでいます。実際に、メンバーも前向きに発言してくれたり、自分から動いてくれたりしていて、本当に助かっています。
会社としては「全ての人がココロから笑顔になれる、イキイキと過ごせる社会の実現。」を掲げています。AIなど便利なものが広がっている一方で、人とひととのコミュニケーションが減っていくことには課題も感じています。最終的には、仕事も人とひととの関係です。だからこそ、人の心や向き合い方を大切にしたいと思っています。
心のケアを社会インフラに
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
まずは、夢を大きく持って、数十億円規模の会社にしていきたいという思いがあります。そのためにも、信頼性やエビデンスは非常に大事だと考えています。現在は、公認心理師の方や、大学で准教授をされている方などにも監修に入っていただいています。そうした専門家の方々の力も借りながら、サービスの信頼性を高めています。
今後は、企業だけでなく、学校に向けた展開も考えています。学校であれば、生徒さんのいじめや自殺の問題などにも関わることができるかもしれません。小さな変化に早く気づく仕組みがあれば、救えるものがあるのではないかと思っています。
また、自治体に関わる領域にも広げていきたいです。震災が起きたときのボランティアの方々のメンタルケアなども、十分にできていないという話を聞いたことがあります。そういった方々の支えになる仕組みとしても、活用できる可能性があると感じています。
日本は震災の多い国です。だからこそ、被災地で活動する方々や、つらい現場に向き合う方々の心のケアも、今後しっかり考えていかなければならないと思っています。このサービスが、そうした場面でも救いになるきっかけになればうれしいです。
まだ会社は走り出したばかりですが、目指しているのは、誰かがひとりで抱え込まなくていい社会です。小さな変化に気づき、声をかけ、支え合える仕組みを広げていくことで、働く人や学ぶ人、社会を支える人たちの心を守る存在を目指していきたいです。
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
最近は、仕事と休みを切り替えることがなかなか難しくなっており、休みと仕事のメリハリをつけなければいけないとは感じています。その中で、気晴らしとしては、ひとりでゆっくり飲みに出かけます。しっぽりと飲みながら、頭を冷静にする時間になっています。