金儲けやない、人儲けや。100%のパッションと直感で生き抜く「可愛いリーダー」の人生哲学

ヨシダグループ 代表取締役会長 吉田潤喜氏

全米で圧倒的な知名度を誇り、世界11カ国にその味を届けている「ヨシダソース(Yoshida Gourmet Sauce)」。この巨大ブランドを生み出し、現在は不動産、商業施設運営、プラスチック容器製造、スキーリゾートの宿泊施設など12社を傘下に抱えるヨシダグループを率いるのが、代表取締役会長の吉田潤喜氏です。1964年に単身渡米し、数々の差別の不条理や4度の破産危機を乗り越えて驚異的な成功を収めた吉田氏。しかし、その素顔は「経営学なんて紙切れ。俺が信じるのは人生学だけ」と言い切る、この上なく人間味に溢れた熱い「空手家」でした。熱意、パッション、そして人との繋がりを何よりも重んじる吉田会長に、これまでの歩みと独自のリーダーシップ論を余すところなく語っていただきました。

気がついたらがむしゃらに走っていた。偶然のタレから始まった43年の奇跡

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

現在のヨシダグループは、メインである商業用不動産の賃貸・保有事業をはじめ、ペプシコーラの委託瓶詰め、自社および他社向けのプラスチック容器製造、スキーリゾートの宿泊施設の運営など、グループ全部で12社で構成されています。私たちは会社を大きくして「売る」ために作ってきた背景もあり、その売却益を25年前から商業用不動産の取得へ重点的に投資してきたため、現在は不動産がグループの強固な核となっています。

――経営者になられた経緯を教えてください。

私の原点であり、今もっとも情熱を注いでいるのは、やはり「ヨシダソース」です。

私が経営の道に進んだきっかけには、一切の計画性もマーケティングもありませんでした。私の本職はいまでも空手家です。1982年、アメリカが深刻な経済恐慌に見舞われた際、私の道場も門下生が半分になり、教えていた大学の授業や警察学校の予算もカットされました。そんな困窮していた年のクリスマス、門下生たちからプレゼントをもらったのですが、お返しをするお金がなかった。その時、妻のリンダが「あなたのお母さんの焼肉のタレを瓶詰めして渡そう」と提案してくれたのです。

手作りのソースを渡すと、みんなが「お金を払うからもっと欲しい」と言い出し、オレゴン州警察学校の食堂にも置いてもらえるようになりました。道場の地下室に小さな鍋を置き、夜の9時から朝の2時までがむしゃらにソースを作る日々が始まりました。事業計画なんて何もない、ただ目の前のことに必死で突っ走ってきた43年間でした。

ですから、私は今でも「売上高がいくら」「利益がいくら」といった数字を口にすることはありません。気になるのはいつも「今日、何本作って、何本出荷できたのか」という本数だけ。本質はそこにしかないからです。

今、世界11カ国に流れているこのソースですが、2年前に私の孫がヨシダグループに入って跡を継ぐことが決まりました。私は現在76歳ですが、孫のために強固な海外基盤を固めてやろうと、再び激しく燃えています。今でも現役のセールスマンとして、日本をはじめ世界中の大手スーパーの社長の元へ直々に足を運び、熱意だけで人間関係を築き上げています。

娘の命を救われたあの日。「ポジティブ・リベンジ」が生んだ絶対の誓い

――壮絶な差別の経験や、経営の根底にある利他の精神、哲学についてお聞かせください。

私がアメリカに渡った50年以上前は、東洋人への差別が色濃く残る時代でした。そんな中、生後間もない長女が命の危機に陥りましたが、保険もお金もない私たちをシアトルの子供病院が無条件で受け入れ、命を救ってくれました。その恩は今も忘れられません。

私は「この国に恩返しをする」と誓い、それを原動力に挑戦を続けてきました。後に子供病院の理事を務め、自宅と土地を小児がん患者のために寄付するなど、社会への恩返しに力を注いできました。

私の経営哲学は「金儲けではなく人儲け」です。目の前の人を大切にし、信頼を積み重ねることが何より重要であり、その先に結果やお金は自然とついてくると信じています。

“Don’t dump me.” 社員に素直に愛を乞う

――組織運営で意識していることを教えてください。

グループ全体は約72名規模ですが、社員は私を「会長」ではなく「ジュンキ」と呼びます。私は今でもプリウスに乗り、節約しながら暮らす普通の人間です。

経営で何より大切にしているのは、社員一人ひとりの尊厳と、その背後にある家族への感謝です。だから私は社員に「Don’t dump me(見捨てないでくれよ)」と冗談交じりに伝えます。みんながいてこそ会社は成り立つからです。

私は昔から寂しがり屋で、人とのつながりが大好きです。その性格こそがリーダーシップの原動力になっています。今、一番嬉しい言葉は「ヨシダ社長は本当に可愛い人だね」という言葉。リーダーに必要なのは威厳よりも、周囲が思わず支えたくなる“可愛げ”だと信じています。これからも仲間への感謝を忘れず、100%の情熱で挑戦を続けていきます。

99%のパッションはゼロと同じ。リスクを恐れず「まず動け」

――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

これからもヨシダソースのさらなる成長を目指し、日本、テキサス、そして大きな可能性を秘めたメキシコ市場へ、全力で挑戦を続けていきます。今後のビジネスの展開としては、今年から来年にかけて、日本市場の深耕はもちろんのこと、特に「テキサス」と「メキシコ」の市場を凄まじい勢いでプッシュしていこうと考えています。

特にメキシコ市場のエネルギーは計り知れません。感覚としては、まさに「40年前の日本」を見ているかのような爆発的な活気に満ち溢れています。ここ5年ほどの変化のスピードは凄まじく、色々と一筋縄ではいかない複雑な国情や裏の資金源の話もありますが、彼らの経済力と真面目な商売へのシフトの勢いは本物です。おそらくこれからの10年、20年の間に、メキシコはアメリカを追い抜くほどの経済大国になるのではないかと睨んでいます。こうした最前線のダイナミズムを、日本のビジネスパーソンにもどんどん伝えていきたいですね。

「コンチクショー、今に見とれ!」の反骨精神

――経営の中でこれだけは譲れないという思いはございますか。

「白人には舐められないぞ」という気持ちですね。

今の若い世代に足りないのは、不条理や困難に立ち向かう「今に見ていろ」という強い情熱だと思います。ビジネスでは中途半端な覚悟ではなく、100%の責任感と熱意が人を動かします。

私は、リスクばかり考えるよりもまず行動し、失敗しながら学ぶことが大切だと考えています。決断し、挑戦し続けることで直感や判断力は磨かれます。また、人との信頼関係は見栄ではなく、ありのままの姿で向き合うことで築かれるものです。

私自身、何度も破産の危機を経験しましたが、逃げずに向き合い続けたことで本当の仲間と信用を得ることができました。ある意味開き直って次から次へと挑戦して行けば良いと考えています。

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