誰もが生まれた時から表現者――芸能と福祉をつなぎ、人の可能性を引き出す挑戦

有限会社オフィスルゥ 代表 五十嵐 薫子氏

「誰もが生まれた時から表現者」という理念のもと、有限会社オフィスルゥは芸能と障がいのある方々との活動を結びつけた独自の取り組みを展開しています。振付師・香瑠鼓として数々の実績を重ねてきた五十嵐薫子氏は、一人ひとりが持つ魅力や身体の可能性を引き出す独自メソッドを開発。障がいの有無や年齢、立場を超えて、人が自由に表現し、支え合える場づくりに取り組んでいます。今回は、事業への想いや理念、今後の展望について伺いました。

芸能と福祉を融合し、一人ひとりの可能性を引き出す

――現在の事業内容について教えてください。

当社は、芸能と障がいのある方たちとの活動を結びつける事業を展開しています。

もともとは妹が経営していた会社でしたが、新しい事業として障がいのある方たちとの活動を始めることになり、振付師として活動していた私が加わりました。その後、会社を引き継ぎ、現在は代表として運営しています。

――他社にはない強みはどのような点でしょうか。

私自身が振付師として培ってきた経験を生かし、一人ひとりの魅力を引き出せることです。誰もが表現者であり、それぞれ異なる魅力を持っています。その個性を大切にしながら、全員が主役となり、互いに助け合える環境をつくっています。

その土台となっているのが、私自身が開発した約70種類の独自メソッド「ネイチャーバイブレーション」です。このメソッドによって自己表現やコミュニケーションが豊かになり、障がいのある方をはじめ、あらゆる人が身体の可能性を広げられるようになります。

舞台では、一人ひとりが自由に表現しながらも全体として一つの作品となり、他にはない空間が生まれています。

誰もが表現者という理念

――理念やビジョンに込められた想いを教えてください。

私が大切にしているのは、「誰もが生まれた時から表現者」という考え方です。重度の障がいがある方であっても、その存在そのものが表現になります。身体を自由に動かせなくても、その人だけが持つ表現は必ずあります。

だからこそ、誰もが身体の可能性を信じ、自由に表現しながら生きてほしいと願っています。踊ること自体が目的ではなく、「踊るように自由に生きる」ことが理念です。そして、表現を通じて人と人が自然につながり、共振・共存できる社会を目指しています。

――この理念が生まれた背景を教えてください。

妹が足に障がいを抱えていたこともあり、障がいのある方々と関わる機会がありました。ある日、公演を観に来てくださった障がいのある方から「弟子入りさせてください」と言われたことが大きなきっかけです。

クラスを立ち上げ、一人ひとり異なる障がいに合わせて指導方法を工夫する中で、「もっと重度の障がいがある方にも生きる喜びを届けたい」と考えるようになりました。その後、自然の中で声が自然界と共振した経験から着想を得て、独自のメソッドを構築しました。

そのメソッドを実践する中で、多くの方に大きな変化が生まれ、身体には大きな可能性があることを実感しています。この経験が、現在の理念や活動の原点になっています。

身体を通じて人と人がつながる組織づくり

――社内で大切にしていることを教えてください。

社内では定期的にミーティングを行い、何を優先して進めるべきかを共有しています。日々の業務だけでなく、「将来どの方向へ進んでいきたいのか」というビジョンを踏まえて優先順位を決めることを大切にしています。

現在は「世界中が踊る日までプロジェクト」を大きな目標に掲げています。この目標に向かうために、目の前の仕事と未来への取り組み、その両方のバランスを意識しながら事業を進めています。

――どのような方と一緒に働きたいと考えていますか。

福祉や介護に関心を持ち、生きづらさを感じている人に寄り添いたいと思える方と働きたいです。

障がいの有無だけではなく、高齢になって身体に不安を抱えている方や、本当の自分を表現できずに苦しんでいる方など、生きづらさを抱える人は数多くいます。そうした方々に自然と手を差し伸べたいと思える人であれば、この仕事に大きなやりがいを感じてもらえると思います。

世界中が踊る日を目指して

――今後の展望について教えてください。

現在取り組んでいる「世界中が踊る日までプロジェクト」をさらに広げていきたいと考えています。今後はイギリスでの展開も予定しており、日本から世界へ活動を発信していきたいと思っています。

日本には、人と人が支え合い、一つになれる和の精神があります。その価値観を身体表現を通して世界へ届け、多様な人たちが共に生きられる社会づくりにつなげていきたいです。

――現在向き合っている課題はありますか。

一つは、日本人が昔から持っていた「腹腰文化」を多くの人に知ってもらうことです。地に足をつけ、腹を据えて生きるという身体の基本的な感覚が、現代では薄れているように感じています。身体の軸を取り戻すことは、自分らしく生きることや人との共存にもつながる大切な要素です。

もう一つは、一人でも多くの人の魅力や個性を引き出すことです。私は振付師として、一人ひとりが本来持っている魅力を表現として形にする仕事を続けてきました。その経験を芸能だけでなく、一般の方々にも広げ、それぞれが自分らしく輝ける社会をつくっていきたいと考えています。

最後に伝えたいのは、「誰もが表現者」であるということです。障がいの有無や年齢、立場に関係なく、一人ひとりには必ずその人だけの表現があります。その可能性を信じ、瞬間を生き、互いに共振しながら支え合える社会を、これからも身体表現を通じて広げていきたいと思っています。

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