生成AIと学生の力で、地方企業に届くシステム開発を――津山から広げる新しい地域支援のかたち

株式会社地域のミカタ 代表取締役 藤田 堂報氏

株式会社地域のミカタは、岡山県津山市を拠点に、中小企業向けのシステム受託開発に取り組んでいます。藤田氏は、地域おこし協力隊として津山市に移住し、つやま産業支援センターでICTコーディネーターとして地域企業のIT化支援に関わるなかで、地方の中小企業が抱える課題に直面しました。本記事では、生成AIと学生の力を活用した事業の特徴、起業の背景、今後の展望について伺いました。

地方の中小企業に届くシステム開発を目指して

――現在取り組まれている事業について教えてください。

私が行っているのは、簡単に言うとシステムの受託開発です。私は岡山県津山市に地域おこし協力隊として来ており、現在は3年目に入ります。その活動のなかで、つやま産業支援センターという市役所の外郭団体に所属し、地域企業のIT化を支援するICTコーディネーターを務めています。

地域の企業を回るなかで感じたのは、地方都市の中小企業にとって、システム開発はなかなか手が届きにくいものになっているということです。費用が高すぎたり、要件をうまくまとめられなかったりする一方で、パッケージソフトやクラウドサービスだけでは実現できないことも多くあります。そこを担う存在が必要だと考えて起業しました。

特徴は、生成AIと学生による開発を組み合わせてコストを下げている点です。当初はノーコードツールと生成AI、学生による開発を組み合わせていましたが、生成AIの進化により、現在の新規開発ではClaude Codeなどの生成AIを活用しています。目指しているのは、中小企業でも依頼しやすい価格で、必要なシステムを届けられることです。

――学生とはどのような形で関わっているのでしょうか。

津山市には津山工業高等専門学校があります。ただ、学生の多くは卒業後、東京や大阪、名古屋、あるいは岡山市や倉敷市などの大きな企業に就職していくのが現状です。そうした学生たちに、津山にいながらでも自分で稼げるのだと知ってほしいという思いがあります。

そのため、単なるアルバイトやインターンではなく、業務委託として個人事業の形で仕事を受けてもらっています。契約書を結ぶ、請求書を出すといった経験も含めて、将来的に個人事業でも起業でも、自分でやっていけるという感覚を持ってもらいたいです。

現在、実際に稼働している学生は2人です。ほかにも、案件があれば関わってくれるという人は十数人弱ほどいます。学生と接する上での姿勢として心がけているのは、あまり先輩風や年上風を出さず、一緒に考えていこうというスタンスでいることです。

津山で見つけた課題が、起業のきっかけに

――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。

新卒でリクルートに入り、独立や起業が周囲にあるのが当たり前の環境で過ごしていました。20年ほど前には友人とスタートアップを立ち上げ、売却した経験もあります。その後、経営コンサルティングファームで約10年働き、さらに私一人のコンサルティング企業を12年ほど続けてきました。

ある程度やり遂げたという感覚があり、セミリタイアに近い気持ちで岡山県津山市に移住してきたのです。地域おこし協力隊として少し気楽にやろうと思っていたのですが、実際に地域企業と関わるなかで課題が見えてきました。ほかに担えるプレイヤーがいないのであれば、私がその役割を担おうと思ったことが起業の背景です。

――津山への移住には、どのような経緯があったのでしょうか。

私は大阪出身ですが、リクルートやベンチャーに関わっていた26年間は東京にいました。その後、関西に戻ろうと思い、神戸に住んだのですが、神戸も大都会で東京とあまり変わらないと感じたのです。

もう少し自然に近い場所で暮らしたいと思い、家や畑を探しながら範囲を広げていくなかで、津山市の地域おこし協力隊の募集を見つけました。津山に特別な縁があったわけではありませんが、移住してからは第2の故郷が見つかったような感覚があります。今は津山に貢献することが楽しみになっています。

事業を引き継ぎ、広げていける人と出会いたい

――今後の組織づくりについて教えてください。

現在は私が学生に直接対応し、営業活動やお客様との要件定義も行っています。ただ、このままでは広がりに限界があるのが事実です。まずは、学生たちを束ね、システム開発に責任を持てる技術系のマネージャーのような人を採用したいと考えています。

その後、事業が順調に広がれば、営業や事務を担う社員も雇いたいです。技術系の人が入ったとしても、一人で抱えられるメンバーは10人弱が限界だと思うので、将来的にはそうしたチームをいくつか増やしていきたいと考えています。

全国展開と、各地に広がる地域支援モデルへ

――今後の展望について教えてください。

まずは津山の企業を助けたいという気持ちで始めましたが、ビジネスとして売り上げを拡大していく必要もあります。そのため、今後はマーケティングの範囲を広げ、全国から受注できるような活動に取り組んでいきたいです。実際に、全国展開に向けたリードも上がってきています。

また、個別のシステム開発ニーズは今後も残ると思いますが、それだけでは小さな企業を十分に救えないとも感じています。クラウドサービスとして、月額で使える柔軟性のあるサービスも求められているはずです。できれば、そうしたサービスをいくつか提供できるようになっていきたいと思っています。

もう1つ考えているのは、同じような取り組みが各地で起きることです。地方でこのようなビジネスを始めるにはどんな工夫が必要なのか、学生に関わってもらうにはどんなルールや手順を整えればよいのか。そうしたノウハウをまとめ、ほかの地域でも立ち上げられるようにしたいと考えています。

相手に喜んでもらえることを忘れない

――仕事をする上で大切にしている価値観を教えてください。

大切にしているのは、相手が喜ぶこと、相手の立場に立つことです。そこを忘れてしまうと、何のためにやっているのかわからなくなります。そのため、まずはお客様に喜んでもらえることを忘れないようにしたいです。

今はある程度人生を一周したつもりなので、もう大きく稼がなくてもいいという気持ちもあります。世間や相手に喜んでもらえることをして、その結果として売り上げが上がってくる。そんな形にできたら嬉しいです。

――お休みの日のリフレッシュ方法を教えてください。

妻と2人で津山に移住してきました。子どもたちは独立し、それぞれ大阪や東京に住んでいます。夫婦で旅行が好きで、新しいものも好きなので、面白そうなお祭りや新しくできたお店を探して出かけることが多いです。海外旅行にもよく行きます。

私は仕事が忙しく、新しい情報をあまり集められていないのですが、妻がSNSなどで情報を見つけてきて、Googleマップに次に行きたい場所のピンを立てています。

時間ができると「次はここに行こう」と案を出してくれるのです。そのため、私はそれに乗る形で楽しんでいます。新しい場所に出かけ、さまざまな体験をすることが、良いリフレッシュになっているので、今後も続けていきたいリフレッシュ方法です。

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