人と人をつなぐ一杯の先へ――酒屋の枠を超えて地域の未来を支える挑戦
有限会社酒屋の宇山 代表取締役 宇山 浩平氏
有限会社酒屋の宇山は、店頭販売やインターネット販売に加え、飲食店やスナックへの卸売まで手がける酒販店です。特に全国の日本酒・焼酎の品揃えや品質管理、専門知識を持つスタッフの存在を強みとし、多くの取引先を支えています。しかし、宇山浩平代表が目指しているのは「酒を売ること」だけではありません。人と人とのつながりを支え、飲食店とともに地域を元気にするという想いを軸に、新たな価値づくりへ挑戦しています。
目次
酒屋ではなく、人と人をつなぐ存在を目指して
――現在の事業内容と強みについて教えてください。
当社は酒販店として店頭販売やインターネット販売を行うほか、飲食店やスナックへの卸売、さらに酒販店や土産店への二次卸も手がけています。中でも40年以上前から全国の日本酒・焼酎に力を入れており、その分野では高い専門性を培ってきました。品揃えの豊富さや冷蔵保管能力に加え、スタッフの多くが資格を持っていることも強みです。
ただ、私が家業に戻ったときに社員へ問いかけたのは、「私たちは何屋なのか」ということでした。ただ酒を売るだけなら、世の中には多くの酒屋がありますし、インターネットでも全国の銘酒が手に入る時代です。
だからこそ私たちは、お酒を通じて人と人が喜びや夢を語り合い、ときには悩みや悲しみを分かち合いながらご縁を深める場を支える存在でありたいと考えています。そのために、飲食店の皆様が安心してお客様と向き合える環境づくりまで支援することが、私たちの役割だと思っています。
その想いを表しているのがコーポレートメッセージです。お酒に関することはもちろん、その枠組みを超えた公私にわたるお困りごとに全力で向き合い、自分だけで解決できないことでも全国の人脈を活かして解決策を探す。その姿勢を何より大切にしています。
恩返しの想いから家業へ戻り、経営の道へ
――経営者になられたきっかけを教えてください。
私は三代目で、2019年に家業へ戻り、2021年に代表へ就任しました。
前職ではパチンコ業界で店舗運営や採用・教育にも携わるなど、多くの経験を積ませてもらいました。
厳しい環境の中で努力を重ねてきましたが、ある本を読んだことが大きな転機になりました。
そこには、人は努力だけではなく、生まれ育った環境や多くの人の支えによって多くの機会を得る、という考え方が書かれていました。それを読んだとき、自分もこれまで相応の努力はしてきたものの、そもそも自分がここまで来られたのは親のお陰であり、その親を支えて下さった多くの地域の皆様、そして松江の飲食店の方々のおかげだと強く感じたのです。
だからこそ、これまで学んできたことを活かして地元へ恩返ししたい。その想いが家業へ戻る決断につながりました。
お酒の提案だけで終わらない課題解決型の会社へ
――今後の課題や組織づくりについて教えてください。
現在、役員を含めて10名の組織ですが、これからは事業承継を進めながら、新しい人材を育てていくことが重要な課題だと考えています。
私が育てたいのは、お酒の知識だけを持った社員ではありません。取引先の課題を見つけ、その解決策まで提案できる人材です。
例えば「新しい企画を考えたいけれど相談できる人がいない」「相続について相談したい」「信頼できる専門家を紹介してほしい」といった、お酒とは直接関係のない相談にも応えられる存在でありたいと思っています。
実際に飲食店へ伺った際、電球が切れていることに気づけば交換を手伝い、予備まで用意することもあります。一つひとつは小さなことですが、そうした積み重ねが大きな信頼につながると信じています。
価格だけで選ばれる酒屋ではなく、「酒屋の宇山だからお願いしたい」と言っていただける関係を築くことが、これからの価値だと考えています。
飲食業界を盛り上げ、地域の魅力を未来へつなぐ
――今後の展望について教えてください。
人口減少や物価高など、決して簡単な環境ではありません。それでも、松江や島根には魅力ある飲食店や事業者が数多くあります。
私たちは飲食店のサポート役として、その魅力をさらに高め、日本全国、そして世界から人が訪れる地域づくりに貢献したいと考えています。
3年後には売上を1.5倍程度まで伸ばすことを目標にしていますが、数字だけを追うつもりはありません。飲食店が元気になれば、その先に訪れる人の笑顔が生まれ、地域全体が活気づいていく。その循環をつくることこそ、私たちが目指す姿です。
変えてはならない理念は守り抜き、一方で時代に合わせて変えるべきことは柔軟に変えていく。その姿勢を貫いていきたいと思っています。
仕事も人生も調和させながら学び続ける
――休日の過ごし方を教えてください。
仕事の中にも楽しみがありますし、休日の時間も仕事のヒントを探しています。飲食店へ足を運んだり、酒蔵を見学したり、さまざまな場所へ出かけたりすることも多いです。
何か特別なことでリフレッシュするというより、日々の出会いや経験そのものが学びになっています。休日でも飲食店の経営者と交流したり、一緒に時間を過ごしたりすることもあります。
私たちが提供しているのは、お酒そのものではありません。その先にある笑顔や、楽しい時間、心が豊かになるひとときです。その価値を忘れず、これからも飲食業界に寄り添いながら、人と人とのご縁を支える存在であり続けたいと思っています。