食の制限を越え、誰もが同じものを楽しめる未来へ――DOYAKAIが挑む食のインフラづくり

株式会社DOYAKAI 代表取締役 笠井 亮人氏

株式会社DOYAKAIは、食に制限のある人々を支える食品メーカーです。「誰かが食べられる」ではなく「誰もが食べられる」を目指し、店舗検索サイトやジェラートの商品開発に取り組む笠井氏。本記事では、事業転換の背景や商品づくりへのこだわり、経営判断の軸、今後の展望を伺いました。

食の制限を越え、誰もが楽しめる環境をつくる

――現在の事業内容の特徴を教えてください。

当社は現在、食品メーカーとして「Japanese Heart事業部」「Beauty Health事業部」「Mitsuboshi事業部」の3つを軸に、食関連事業を展開しています。以前から行っているIT支援も一部継続していますが、現在の中心は食品分野です。

「Japanese Heart事業部」では、アレルギーやベジタリアン、ビーガン、ハラルなど、食に制限のある方に向けた店舗検索サイトを運営しています。一方、「Beauty Health事業部」が担うのは、商品開発をはじめ、食に関する研修やセミナーへの登壇です。

新たに加わった「Mitsuboshi事業部」では、食に制限のある方も含め、世界中の誰もが食べられる商品づくりを進めています。その第1弾として開発したのが三ツ星ジェラートで、現在は同事業を収益の柱に据えています。

――現在の事業を始めたきっかけは何だったのでしょうか?

会社設立当初は、前職で10年以上携わったIT業界の経験をもとに、ITサポートを行っていました。転機は、身内の子どもがアレルギーを患ったことです。その親から「子どもと安心して外食したいけれど、お店がない」と聞き、食に制限のある人を支える事業を始めました。

日本では、アレルギーやビーガン、ベジタリアン、ハラルが別々に扱われがちです。分野を横につなげたいと考え、店舗検索サイト「Japanese Heart」を立ち上げました。

――日本の食環境には、どのような課題があると考えていますか?

日本では、アレルギーやベジタリアン、ビーガン、ハラルなど、食に制限のある方への対応が十分ではありません。海外では複数の食習慣に対応することが一般的ですが、日本では「対応していない」とされる店も多く、食の多様性が後回しにされていると感じます。

和食のおいしさは大きな魅力ですが、外国人観光客が安心して食事を楽しめる環境はまだ限られています。食べられるものが見つからなければ、日本を訪れる選択肢にも入りにくくなるでしょう。

だからこそ、店舗情報を分かりやすく届ける仕組みを整え、日本の食のインフラを世界基準へ近づける必要があると考えています。

「誰もが食べられる」を形にした三ツ星ジェラート

――三ツ星ジェラートを開発した背景を教えてください。

Japanese Heartを始めたのは2020年で、コロナ禍の最中でした。「お店に行けない」「商品を取り寄せたい」といった声が寄せられたため、オンラインショップも立ち上げました。

商品を扱う中で、特定の条件に対応していても、添加物が多かったり、別の制限を持つ人には食べられなかったりする現状が見えてきました。そこで、「誰もが食べられる」という発想から自社商品を開発したのがきっかけです。

――おいしさと安心感を両立するために、どのような工夫をしていますか?

まず大切にしたのは、子どもたちに「おいしい」と感じてもらえる味です。豆乳をベースに、乳酸菌を配合しています。

ただし、大豆もアレルギー表示の対象です。将来的には、お米など別の素材への切り替えも検討しています。完成して終わりではなく、より多くの人が食べられる商品へ近づけていきたいです。

――味の種類は、どのような基準で選んだのでしょうか?

味は、バニラ、チョコ、抹茶の3種類で、子どもが好きな味のランキングを参考にしました。本来はイチゴも上位ですが、果糖を避けなければならない子どももいます。

食べられる子の隣に、食べられない子をつくらないことを重視し、できる限り多くの人が選べる3種類に絞りました。

開かない扉を開ける――事業が変わっても揺るがない理念

――社名に込めた意味と、経営理念について教えてください。

DOYAKAIは、「DO Yourself Action」、つまり「自分自身で行動する軍団」という言葉の頭文字から付けた社名です。それぞれが得意分野や武器を生かして行動する集団でありたいという考えが原点となっています。

また、前職では独立前の約2年間、新規事業の責任者を務めました。その経験から生まれたのが、「開かない扉を開ける企画提案」という理念です。ITから食へ事業が移っても、この姿勢は変わりません。

――経営判断をする際に大切にしている軸は何でしょうか?

当社の理念だけでなく、食に制限のある人へ向き合う姿勢に賛同してもらえるかを大切にしています。商品や企画の良さだけではなく、誰のために取り組むのかまで共有できることが、判断の軸です。

――経営において、これだけは譲れないという考えを教えてください。

食に制限のある人へ向き合うことは、次世代につながる取り組みだと考えています。子どもたちの未来に「衣・食・住」は欠かせません。

だからこそ、食べられない人を取り残さない仕組みをつくり、日本の食のインフラを向上させたいです。「開かない扉を開ける」という理念のもと、後回しにされてきた課題に向き合うことを目標にしています。

食の専門家と同じ方向を向くプロジェクト型の組織

――現在の組織体制と役割分担を教えてください。

現在の組織は、食品メーカーとして私を含めて主軸5名で活動しております。
営業、サイト運営、SNS広報、研修講師、商品開発、と役割を分業しながら、それぞれの得意分野や専門分野を生かして、担当してもらっております。私がTOPというより真ん中で楔になってそれぞれを連携させて事業をしているイメージです。

――一緒に働く人に求める姿勢や条件はありますか?

最も重視するのは、食に制限のある人への考え方が同じであることです。その気持ちを理解できなければ、事業を前に進めるのは難しいと思います。

そのため、食の有識者であり、当社と同じ方向を向ける人しか採用しておりません。この部分の軸は今後も変わらないでしょう。

フードロスの救済と食のインフラ向上を目指して

――今後の展望を教えてください。

三ツ星ジェラートに続く第2弾として、「三ツ星ラテ」も開発しました。現在はジェラートへの問い合わせもあり、一つずつ形にしていきたいです。

また、博多阪急での販売会では、紅はるかを扱う企業と連携し、規格外品などを活用した数量限定のさつまいもジェラートを販売しました。今後は各地の果物も生かし、フードロスの救済につながるプロジェクトを立ち上げる予定です。

――現在感じている経営課題と、その解決に向けた取り組みを教えてください。

一番の課題は販路です。私はもともとIT業界出身で、食の流通に関する販路を持っていたわけではありません。現在はつながりが増えていますが、さらに広げる必要があります。

そのため、現在はDOYAKAIや三ツ星ジェラートの露出を増やしているところです。商品だけでなく、背景にある考え方まで知ってもらうことが販路拡大につながると考えています。

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