「好き」が原点。個人のクリエイティビティを支え、安心して輝ける場所を創る

株式会社PXstudio 代表取締役 林 孝洋氏

インターネット上のクリエイター活動において、避けては通れない「個人間取引」のリスク。納期を守らない、連絡が途絶える、金銭トラブルに巻き込まれる――そんな「やりたいことを叶えようと努力している活動者」の夢を阻む現実を、SNS上で数多く目の当たりにしてきました。「個人の活動を、もっと安心して、もっと自由に」。 株式会社PXstudioは、そんな切実な願いから生まれました。審査を通過した信頼できるクリエイターのみを抱え、会社がプラットフォームとして間に入ることで、クリエイターと依頼主の双方にとって安全な取引環境を実現しています。今回は、趣味であった「歌ってみた」のミキシングが、いかにして信頼を勝ち取るビジネスへと成長したのか、そして代表・林氏が目指す「人を喜ばせること」を軸にした未来の形について、お話を伺いました。

歌ってみたから生まれた安心のプラットフォーム

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

基本的には「歌ってみた」動画の制作を支援するプラットフォームを運営しています。この文化は10年、15年前からSNS上で個人間の依頼によって成り立ってきましたが、一方でトラブルも絶えませんでした。

私たちがこだわっているのは、徹底的な「安心」の仕組み化です。依頼主様から会社がお金を一旦預かり、納品を確認してからクリエイターに支払うことで、持ち逃げや未納品のリスクを排除しています。

また、クリエイターとのやり取りで起こりがちな「返信が遅い」という課題を防ぐため、「24時間以内の返信」をルール化しています。さらに、24時間以内の返信率を各クリエイターごとに測定しており、クリエイターの対応力改善に努めることで、依頼者が安心してやり取りできる環境を整えています。AIによる自動リマインダーシステムも導入し、返信漏れの防止にも取り組んでいます。

他のプラットフォームとの違いは「審査制」であることです。SNSでの発信状況や過去の実績を審査し、数ヶ月のテスト期間を経てから正式に所属いただくため、安心できるクオリティと信頼性が担保されているのが大きな特徴です。

利用者様の9割は個人の方ですが、近年増えているVTuber事務所様からのご依頼も多くいただいています。

「かっこいい」から始まった原点と、経営への道

――経営者になられた経緯を教えてください。

もともとは飲食業で働いていましたが、趣味でボカロや「歌ってみた」のMIX師を楽しんでいました。最初は無料でやっていましたが、徐々に依頼が増え、自分の本業以外の時間で対応しきれなくなった時に、初めて2000円の料金をいただきました。

驚いたことに、無料から有料になっても「林さんのMIXがいい」と依頼してくださる方が減りませんでした。徐々に単価を上げても依頼は増え続け、最終的にMIXでいただく報酬が飲食の本業収入を超えたのが、ビジネスとして自立する決定的瞬間でした。

その後、私の周りで「イラストや動画を作れる人を探している」という相談が増え、SNSでの繋がりを活かして、信頼できるクリエイターを紹介する場を作ろうと考えたのがPXstudio設立のきっかけです。社名は、複数の候補案を用意し、X(旧Twitter)でアンケートを実施した結果、最も多くの票を集めた名称を採用しました。

――仕事をする上で大切にしている価値観は何でしょうか。

「人を喜ばせ、与えること」です。迷った時は「これをすることで相手が喜ぶかどうか」を基準にしています。相手に利益を還元し、クリエイターにも適切にお金を回したうえで、最後に自分がいただく。この循環を大切にしていきたいと思っています。

AIと向き合い、クリエイターの活躍を最大化する

――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

現状のサービス運営は、私と、サービスごとに連携する業務委託のメンバーで行っています。Web上で展開するビジネスだからこそ、AIの活用との相性が非常に良いと感じています。

課題は「集客」です。現在もプラットフォームを通じて依頼は増えていますが、依頼が特定のクリエイターに集中し、そうでないクリエイターとの間で偏りが生じています。そのため、より多くの方に認知いただき、すべてのクリエイターが適正に依頼を受けられる状態を作りたいと考えています。

現在は個人のお客様からのご依頼が中心ですが、今後は企業様や事務所様からのご依頼にも力を入れていきたいです。一つのプロジェクトとしてしっかりと結果にコミットするような仕事にも取り組んでいきたいですね。

また、徳島県という地域特性を活かした取り組みも面白いと考えています。徳島はアニメ関連が非常に強い土地柄ですので、ローカル企業とタイアップして、VTuber制作や運用を支援するなど、リソースを活かした地域貢献にも挑戦してみたいです。

趣味と仕事が交わる場所

――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

趣味のテニスは週3〜4回楽しんでいます。仲間との交流や、妻との旅行も大切な時間ですね。特にテニスをしている間は仕事のことを忘れられるので、頭を切り替える良い機会になっています。

一方で、カレンダーに予定のない「空白の時間」があると、つい「おっしゃ、今日仕事できる!」と思ってしまう自分もいるんです(笑)。休んでいても仕事のことを考えてしまうのは、それだけ仕事そのものが好きだからかもしれません。

これからも、仕事に夢中になる時間と心身をリフレッシュする時間のどちらも大切にしながら、自分らしく仕事に向き合っていきたいですね。

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