「自信を届ける一着」で人生を後押しする――株式会社museが紡ぐ100年ブランドへの挑戦
株式会社muse 代表取締役 勝 友美氏
株式会社museは、オーダーメイドスーツを通じて「自信を届ける」ことを使命に掲げ、一人ひとりの人生に寄り添うブランドです。日本の職人技術を大切にし、100年先まで愛されるブランドづくりに挑戦しています。本記事では、代表の勝友美氏に、事業への想いや起業の経緯、組織づくりへの考え方、そして今後の展望について伺いました。
目次
「ヴィクトリースーツ」が届ける、自信という価値
――現在の事業内容について教えてください。
私たちは、大阪店と銀座店の2店舗で、メンズ・レディースのオーダーメイドスーツを販売しています。ただスーツを販売する会社ではなく、「自信を届ける」ことを使命にしています。
最初に伺うのは、「どんなスーツが欲しいか」ではなく、「なぜ作るのか」「どんな未来を叶えたいのか」です。過去・現在・未来について丁寧にヒアリングし、その方に本当に必要な一着をご提案しています。スーツを通して、自信を持って一歩を踏み出す。そのきっかけになれたらうれしいです。
――他社にはない強みを教えてください。
業界では価格競争が進み、回転率を重視するあまり、お客様と向き合う時間が失われていました。だから私たちは、回転率を追うことはしません。100%日本縫製にこだわり、1mm単位まで補正する特殊体型補正や、1万種類以上の生地をご用意しています。全員が女性フィッターで対応しているのも特徴です。
私たちが届けているのは、スーツそのものではなく「自信」です。お客様から「目標を達成できました」とご報告をいただくことも多く、そうした声が重なり、「ヴィクトリースーツ」と呼んでいただけるようになりました。
職人との出会いが教えてくれた、人生を懸ける仕事
――オーダースーツ業界へ進まれたきっかけを教えてください。
もともとはファッションが好きで、アパレル販売員としてキャリアをスタートしました。販売職ではトップセールスを経験し、その後はヘッドハンティングを受けて海外向けポータルサイトの立ち上げにも携わるなど、ファッションをさまざまな角度から経験してきました。
そんななかで偶然出会ったのが、オーダースーツ販売員の求人です。ただ、当時の私はスーツが好きだったわけではありません。自分の身体に合うものが少なく、着ても自信が持てないという印象がありましたし、スーツを着て働く人たちも、どこか疲れて見えていたんです。
実際に業界へ入ると、価格競争や教育体制など理想とのギャップも大きく、決して順風満帆なスタートではありませんでした。
――起業を決意したきっかけについて教えてください。
起業を決意する転機になったのが、縫製工場を訪れたことでした。何十年も生地を裁ち、ボタンを付け続けている職人さんたちが、皆さん誇りを持って仕事をされていたんです。
ある職人さんに「毎日ボタンを付けながら何を考えているんですか」とお聞きすると、「この服を着る人のことを考えながら付けている」という言葉が返ってきました。その瞬間、この想いを冷ますことなくお客様へ届けるのが、店頭に立つ私たちの役目なんだと強く感じました。
その後は仕事が終わってから学校へ通い、採寸や特殊体型補正、色彩などを学び続けました。知識や技術を学ぶなかで、日本の職人技術を守り、レディースオーダースーツという文化を広げたいという想いは、ますます強くなっていきました。
女性が自信を持って働ける社会をつくり、100年先まで愛されるブランドを育てたい。その想いを胸に、知識と技術に自信が持てた28歳で起業しました。
人だからこそ届けられる価値を信じて
――組織づくりやお客様とのコミュニケーションで大切にしていることを教えてください。
効率や回転率よりも、人だからこそできる仕事を大切にしています。非効率な部分はあるかもしれませんが、今の時代だからこそ、人と人がしっかり向き合う価値はなくしたくありません。
手間や想いを込めた仕事は、相手に伝わると信じています。お客様から「また来たい」「目標を達成した」とご報告をいただくたびに、その想いは届いていると感じます。
高価格帯のお店だからといって、お客様に迎合することはありません。本当に必要なことはきちんとお伝えした上で、その方に自信を持っていただける一着を仕立てています。袖を通した瞬間、「やる気が出る」「自信が湧いてくる」と感じていただけることが、私たちにとって何よりうれしいですね。
――接客で意識されていることを教えてください。
お客様にお任せするのではなく、まず「どうなりたいのか」「何のためにスーツを作るのか」を徹底的に伺います。
その想いを伺い、本当に必要な一着をご提案します。好みだけで選ぶのではなく、ゴールを叶える一着をご提案するのが私たちの役割です。
接客は、お客様に気持ちよく帰っていただくだけではありません。結果につながる一着をお届けするために、必要だと思ったことはきちんとお伝えしています。そうした姿勢が、お客様からの信頼や成果につながっていると感じます。
100年先まで愛されるブランドへの挑戦
――今後取り組んでいきたいことを教えてください。
創業当初から目指していることは変わっていません。100年先まで愛されるブランドをつくり、自信を届け続けることです。
これまでは個人のお客様を中心に展開してきましたが、これからは法人向けにも力を入れていきたいです。お仕立て券は、ご家族や大切な方への贈り物としてご利用いただくことが多くありました。今後は企業単位でも導入いただき、成績優秀者への表彰や福利厚生、取引先への贈答品として活用していただけたらうれしいですね。
スーツを仕立てる時間が、自信や自己肯定感につながります。社員教育やモチベーション向上にもつながる新しい価値として、もっと広げていきたいです。
――現在感じている課題について教えてください。
高価格帯の商品は、Web広告だと価格だけで比較されやすいことが大きな課題です。だからこそ創業以来、SNSや情報発信を通じて、私たちの考え方やブランドの価値を伝え続けてきました。
広告では大げさな表現をしたほうが反応は増えるかもしれません。ただ、私は言っていることと実際にやっていることが違う会社にはしたくないんです。13年間積み重ねてきた信頼を大切にしながら、より多くの方にブランドの価値を知っていただくため、新しい発信にも挑戦していきたいです。
人生を自分で選び続けるという信念
――仕事を続ける上で大切にしている価値観を教えてください。
私は昔から、「自分の人生を自分で選べる人間でいたい」と思ってきました。誰かに選ばれる人生ではなく、自分の意思で人生を選び続けたい。その想いは、起業する前から今までずっと変わっていません。
だからこそ、人生を懸けても飽きることのない仕事は何かを真剣に考え続けてきました。その答えが、日本の職人技術を守りながら、レディースオーダースーツという文化を育て、100年先まで愛されるブランドをつくることだったんです。
ブランドづくりに終わりはありません。これからもお客様一人ひとりと誠実に向き合い、自信を届ける一着を通して、その人の人生を後押ししていきたいです。