中国の朝食文化を日本の日常へ――豆早点が広げる新しい食体験
豆早点 代表 山田 裕貴氏
豆早点は、中国の食文化をテーマにした飲食店を展開しており、芝大門では中国の朝食を提供、銀座では水餃子とお酒を楽しめるバー業態を運営しています。本記事では、中国での生活を通じて現地の食文化に触れたという代表の山田裕貴氏に、事業を始めた背景や店舗の特徴、今後の展望などについて伺いました。
中国の日常を体験できる飲食店
――現在の事業内容について教えてください。
現在、中国の食文化をテーマにした飲食店を2店舗展開しています。
1店舗目は芝大門にあり、中国の朝食をコンセプトに、お粥や豆乳、揚げパンなど、現地で日常的に親しまれているメニューが中心です。
2店舗目は、銀座にオープンしました。芝大門で培った経験を活かしながら、夜は水餃子を主役としたバー業態にも挑戦しています。水餃子や焼き餃子に加え、ビールやウイスキー、カクテルなどを取りそろえました。
銀座店は海鮮餃子バーという位置づけで、エビやホタテなどを使った複数の餃子から好みの具材を選べることが特徴です。日本では水餃子に馴染みのない方も少なくないため、焼き餃子も用意し、初めての方でも気軽に楽しめる内容にしています。
日本では、中国料理というとラーメンや餃子を思い浮かべる方が多いと思いますが、中国では、朝食を自宅で作るのではなく、家や会社の近くにある食堂や屋台で済ませる文化が広く定着しています。当店が届けたいのは、そうした現地の日常に根づいた食文化そのものです。
――他店との違いはどのような点でしょうか。
同じような業態の店舗が日本ではほとんどないため、他店と比較される段階にはまだないと考えています。
中国の方には当たり前の食事でも、日本の方にとって中国のローカルな朝食や水餃子は、まだ馴染みの薄いものです。先を行きすぎると興味を持っていただくことが難しくなるため、餃子などの親しみやすい要素を取り入れながら、新しい食体験を提案しています。
中国での生活から生まれた事業構想
――この事業を始めたきっかけを教えてください。
2014年から約4年間、中国で生活していました。妻の出産を機に現地へ移り、暮らすなかで中国の朝食文化に触れたことが、事業のきっかけです。
日本で朝食を外食する場合、コンビニやカフェでパンやサンドイッチを選ぶケースが一般的です。一方、中国では、温かい朝食を外で食べる習慣が根づいており、豆乳など大豆を使ったメニューも多く、日本にはない魅力を感じました。この文化を日本でも体験できる場があれば、新たな選択肢として受け入れられるのではないか――その可能性を事業として形にしようと決意しました。
――開業までにはどのような経緯がありましたか。
実際に開業するまでには、資金の準備や、それまで働いていたIT業界の仕事に区切りをつけるタイミングなどがあり、10年弱かかりました。
私は飲食店の経営や料理人の経験がなかったため、製造面は中国人の妻が中心となり、メニュー開発や調理のマネジメントを担当しています。調理スタッフも、中国で朝食店を経営していた方や、中華料理店で働いた経験のある方など、経験者を中心に集めました。
私は会計や接客、お客様への食べ方の説明、感想の聞き取りなどを担当し、そのほか経理や財務、資金調達、広告、マーケティングにも携わっています。
文化を知ってもらうことから始める
――芝大門に出店した理由を教えてください。
飲食店の経営が未経験だったため、何かあったときに自宅からすぐに駆けつけられる距離であることを重視しました。また、馴染みのない朝食をいきなり日本人のお客様に受け入れていただくのは難しいと考え、最初はインバウンドのお客様や中国人のお客様が集まりやすい場所を探しました。
芝大門の店舗周辺にはホテルやオフィスが多くあります。店舗が1階の路面にあり、営業時間外でも看板やメニューを見ていただけることも利点でした。希望する条件と物件との縁が重なり、現在の場所に決まりました。
――開業後のお客様の反応はいかがですか。
現在は、中国人のお客様が大半を占めています。日本人のお客様に広げたいという当初の目標は、まだ達成できていません。
「チャイナモーニング」と掲げても、どのような料理なのかイメージしにくいため、知らないものを選んでいただくには時間がかかります。それでも、開業当初と比べると日本人のお客様は増え、「豆早点を知っている」と言っていただく機会も多くなりました。
また、港区周辺に住む中国人のお客様からは、近くに中国の朝食を食べられる専門店がなかったため助かるという声をいただいています。
中国の食文化を広げ、店舗拡大へ
――今後の展望について教えてください。
芝大門店では、中国の朝食を食べる場所というだけでなく、中国の食文化を体験できる場所として、さらに認知と価値を高めていきたいです。銀座店は立ち上げたばかりのため、まずは餃子をおつまみにしながらお酒を楽しむ業態があることや、複数の海鮮水餃子を選べることを知っていただく必要があります。SNSやインフルエンサー、取材などを活用しながら認知を広げていきます。
朝食店は仕込みに手間がかかり、揚げパンや肉まんの生地作り、具材を包む作業も基本的には手作業です。手間に対して利益につながりにくい面があるからこそ、これまで専門店が少なかったのかもしれません。一方で、参入する店舗が少ないことはチャンスでもあります。
今後は新たな店舗を増やし、その後も複数店舗の出店を進めるなど、できるだけスピーディーに事業を拡大していきたいと考えています。
家族との時間と音楽で気持ちを整える
――最後に、仕事の時間以外の過ごし方もお聞かせください。
現在は店舗運営に加え、IT企業の営業顧問として、中国のIT企業の日本市場への営業展開も支援しています。昼間はIT関連の業務、夕方から夜は店舗運営に携わる毎日で、まとまった休みを取ることはあまり多くありません。
限られた時間は家族との時間を大切にしています。上の娘が中学受験を控えているため、一緒に勉強し、問題を解くこともあります。
また、昔から音楽が好きで、時間を見つけてはピアノやフルートを演奏しています。短い時間でも気持ちを切り替えることを意識し、仕事への活力につなげています。