社員の幸せを起点に、途切れない精神科訪問看護を地域へ
株式会社桜梅桃李 代表取締役 後藤 久志氏
株式会社桜梅桃李は、精神科に特化した訪問看護ステーションの運営を目指して設立されました。365日年中無休で、利用者が不安を感じたときに24時間連絡を取れる体制を整え、地域や在宅で安心して社会生活を送れるよう支援していきます。代表の後藤氏は、介護職を経て看護師となり、病院や施設、訪問看護の現場で経験を重ねてきました。治療を終えて退院しても、再び入院してしまう患者の姿を見てきたことから、病院の中だけではなく、地域で生活を支える仕事を志すようになったといいます。今回は、起業の背景や会社名に込めた思い、社員との関係づくり、今後の展望について伺いました。
途切れない支援で地域を支える
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
精神特化型の訪問看護ステーションの運営を始めていきます。
設立にあたって大切にしたのは、利用者へ途切れない支援を届けることです。営業は朝9時から夕方18時までを予定していますが、それ以外の時間も利用者が24時間、年中無休で連絡を取れる体制を整えています。
精神疾患を抱える方の中には、社会で働くことや日々の生活に難しさを感じている方もいます。そうした方々が地域や在宅で安心して社会生活を送れるように支えることが、私たちの目指すところです。体調や不安は時間を選ばずに変化します。だからこそ、何かあったときにすぐ連絡できる環境をつくりたいと考えました。
現状では私が連絡を受ける形ですが、今後は交代で対応できる体制へ移行していく予定です。一人に負担が集中するのではなく、組織として継続的に支援できる仕組みをつくっていきたいです。
――会社名の「桜梅桃李」には、どのような思いを込めていますか。
桜、梅、桃、李、それぞれ違う花を咲かせながら、どの花にも美しさがあるという考え方です。一人ひとりの個性を尊重したいという思いから、会社名にしました。ただ、個性を尊重することと、それを言い訳にすることは違うと考えています。その人らしさを活かしながらも、自分の言動には責任を持つことが大切です。私自身も、自らの言動や行動に向き合い、責任を持つ経営者でありたいと思っています。
介護と看護の経験を起業へ
――看護師を目指した経緯と、起業を決めたきっかけを教えてください。
高校を中退した後、何か手に職をつけなければと考えたことが始まりです。もともと祖父母と過ごすことが多く、最初は介護職として働きました。その後、介護からのステップアップとして看護師を目指し、病院で長く勤務してきました。
精神科の現場では、退院して社会復帰を目指しても、すぐに再入院してしまう患者さんを多く見てきました。病院では治療が中心になりますが、その方が生活するのは地域です。治療だけではなく、社会の中で暮らし続けるための支援に携わりたいと思い、病院を離れて施設や訪問看護でも働きました。
その中で、365日対応する精神科訪問看護や、24時間連絡を取れる事業所が多くないことに気づきました。利用者の具合が悪くなる時間は予測できません。それならば、自分で必要な制度や体制をつくろうと考えたことが、起業のきっかけの一つです。
もう一つは、社員が十分に大切にされていないと感じる場面があったことです。私自身、管理者として部下を持っていましたが、管理者の権限だけではできることに限界がありました。社員の幸せの先に利用者の幸せがあると考えます。利用者も社員も幸せにできる会社を自分でつくろうと思い、経営者の道を選びました。
社員と利用者の幸せをつなぐ
――組織づくりで大切にしていきたいことは何ですか。
まずは社員を見ることです。社員が幸せでなければ、利用者を幸せにすることは難しいと考えています。会社を大きくしていきたいという思いはありますが、その過程でも社員を大切にする姿勢だけは変えたくありません。
オープニングスタッフの採用は比較的スムーズに進み、現在は必要なメンバーがそろってきています。応募者と話す中では、人間関係に疲れていた方が多い印象がありました。だからこそ、素直で穏やかな人が安心して働ける会社にしたいです。
――今後採用を行う上での「人材の理想像」はありますか。
今後さらに人材を迎える際には、看護師としての資格に加え、将来は管理者やマネージャーを目指したいという意欲のある方とも働きたいと考えています。24時間の支援体制を継続するためにも、仕事を任せられる人を育て、役割を少しずつ引き継いでいくことが必要です。
訪問看護から包括支援へ
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
将来的には、精神科に特化した包括的な支援を実現したいです。まずは訪問看護から始めますが、今後はグループホームや就労に関わる施設なども含め、一元的に支援できる形を目指しています。
一方で、これから課題になると考えているのが教育と人材育成です。支援の質を保ちながら組織を広げていくためには、ルールを明確にする必要があります。現在はマニュアルづくりを進めており、AIにも相談しながら、誰が働いても判断に迷いにくい仕組みを整えています。
今は開設に向けた準備の段階ですが、訪問看護を軸に経験を積み重ね、利用者の生活をより幅広く支えられる会社へ成長させていきたいです。
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
現在は週に1日は休むようにしています。何よりのリフレッシュは、もうすぐ1歳になる子どもと遊ぶ時間です。以前は妻とゴルフへ行くことも多かったので、子どもが少し落ち着いたら、また一緒に楽しみたいと思っています。
――最後に、読者の方に伝えたいことがあればお願いします。
私自身、高校を辞めた頃には落ち込み、進む方向が見えなくなった時期がありました。それでも、介護や看護の仕事に挑戦し、今は会社を立ち上げるところまで来ることができました。年齢や過去に関係なく、何かに挑戦することは大切です。思うようにいかない時期があったとしても、そこから新しい道を選ぶことはできます。ぜひ、挑戦する気持ちを持ち続けてほしいです。