難病当事者の経験を社会の力へ――外見ケア支援の輪を広げる挑戦
株式会社メーキャップラバーズ 代表取締役 河村 しおり氏
株式会社メーキャップラバーズは、一般社団法人日本臨床化粧療法士協会に所属する資格者の管理・運営を担う企業です。病気やけがによる外見の変化に悩む方や、見た目に生きづらさを感じる方に向けた支援を行い、医療機関や教育機関とも連携しながら活動を広げています。本記事では、代表の河村しおり氏に、事業を始めた背景や活動への想い、今後の展望などについて伺いました。
外見の悩みに寄り添う支援体制
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
一般社団法人日本臨床化粧療法士協会では、臨床化粧療法士の認定資格を発行しており、国内外を合わせて約500名の資格者が在籍しています。当社は、その資格者の管理・運営を担うために設立した会社です。
現在は、一般社団法人と連携しながら、病気やけがなどによる不本意で理不尽な外見変化に悩む方への外見サポートをはじめ、病気の有無に関わらず見た目に悩みを抱える方への支援を行っています。また、医療機関への外部協力や医療連携、学校教育との連携を進め、探究学習の授業にも携わっています。
――他社にはない強みはどういった点にありますか。
当社の強みは、私自身が難病と障害の当事者でありながら、支援者として活動している点です。当事者だからこそ、病気や外見の変化に悩む方の気持ちを実体験として理解し、その経験を支援に活かしています。同じような状況で苦しむ方々にとって、「一人ではない」と感じられる存在でありたいと考えています。
また、一般社団法人は非営利法人であるため、広告や積極的なPR活動を行っているわけではありません。社会課題の解決を目指し、地道に活動を続けてきたことも、私たちの基盤となっており、その積み重ねが、現在の医療機関や教育機関などとの連携につながっていると感じています。
――事業に込められた想いについてもお聞かせください。
私たちが目指しているのは、病気やけがの有無に関わらず、誰もが安心して専門的な美容支援を受けられる社会です。その実現に向けて、外見の悩みを抱える方々に寄り添い、安心して相談できる環境づくりに取り組んでいます。
この想いの原点には、私自身の経験があります。患者当事者として外見の変化に悩んでいたころは、誰に相談すればよいかわからず、一人で抱え込んでいました。当時は情報も少なく、美容に対して不安や恐怖心もあったため、相談すること自体が難しかったのです。
だからこそ、私たちは同じような悩みを抱える方が一人で苦しまなくて済むよう支援を続けています。さまざまな場所へ相談しても解決できなかった方々にとって、「最後の受け皿」となれる存在でありたいと考えています。
患者としての経験が経営の原点に
――経営の道へ進まれたきっかけを教えてください。
転機となったのは2011年の東日本大震災です。当時は私自身の病状が思わしくなく、北海道で療養していましたが、同じ難病を抱える知人から「美容ディーラーの仕事を手伝ってほしい」という連絡を受け、関西へ向かいました。
美容室を回るなかで、美容師の方々から患者への対応について多くの相談を受けるようになりました。一般的な営業では対応しきれない相談も多く、患者当事者としての経験が現場で求められていることを実感したことから、「自分の経験を社会課題の解決に活かせるのでは」と考えるようになりました。
そして、その想いを形にするため、一般社団法人や株式会社メーキャップラバーズを設立しました。
ともに活動を立ち上げたパートナーは2018年に亡くなりましたが、創設時の理念を受け継ぎながら、現在も支援活動を続けています。
――経営判断で大切にしていることは何でしょうか。
私たちの活動は社会貢献の側面が強いため、何よりも「継続すること」を大切にしています。
資格講座の運営、啓発・啓蒙活動、そして医療機関や学校、行政などとの外部協力を柱に活動を続けてきました。近年では製薬会社や学会などからも協力の依頼をいただく機会が増え、活動を支える基盤も少しずつ広がっています。
小さな組織だからこそ、派手さよりも「やめずに続けること」を大切にしながら、着実に歩みを重ねています。
次の10年へ向けた新たな挑戦
――今後の展望について教えてください。
10期を迎え、資格者の皆さんの質も高まってきました。今後は「臨床化粧療法」の概論づくりにも取り組んでいきたいと思っています。
これらを実現するためには、私たちだけでは難しい部分もあります。そのため、大学や医療機関、教育機関など、多くの外部機関との連携や支援を得ながら、活動の幅をさらに広げていきたいです。
――最後に、河村さんを支えている存在についてお聞かせください。
プライベートでは、夫と2匹のアメリカンショートヘアと暮らしています。私自身は現在も2か月ごとに約1週間の入院を繰り返していますが、家族や猫たちに会いたいという想いが、日々の支えになっています。
また、私に最も大きな影響を与えた存在は、ともに活動を立ち上げたパートナーです。難病の一当事者同士、想いを胸に、これからも一人でも多くの方が安心して相談できる環境づくりに取り組み、外見に悩む方々へ寄り添う活動を続けていきたいと考えています。