マーケティングを科学する――広告運用を越え、事業の本質に向き合う
Stella Marketing 代表 名波 知彦氏
Stella Marketingは、静岡県浜松市を拠点に、広告運用を起点としたマーケティング支援を行っています。小規模な予算にも対応し、データ分析やサイト改善、事業戦略まで踏み込むのが特徴です。本記事では、名波氏に独立の背景やマーケティングへの情熱、再現性を重視する経営、今後の展望を伺いました。
目次
広告運用にとどまらない、小規模事業者へのマーケティング支援
――現在の事業内容を教えてください。
当社は広告運用を中心に、サイト改善やオンライン・オフラインのデータ分析まで手がけています。Web上の情報と統合し、より確かな施策を考える支援です。
課題を整理し、広告が最適でなければ、SNSの活用や事業戦略の見直しを提案します。広告はあくまで入り口であり、事業者様の業績を伸ばすために幅広く対応しています。
お客様はBtoCが中心ですが、BtoBにも対応し、クリニックやスポーツ教室、モデル事務所、転職エージェント、テーマパーク、弁護士事務所、インバウンドサービスなどを支援してきました。
――他社との違いや強みを教えてください。
小規模事業者様を少額の予算から支援できる点が特徴です。地方では最初から多額の広告費を投じにくいため、数十万円単位から始めたい方にも対応しています。
単に広告費を増やすのではなく、マーケティング全体の予算配分や、事業におけるお金の使い方まで考えます。事業そのものに踏み込めることが強みです。
事業会社での経験を原点に、理想の支援を求めて独立
――これまでのキャリアを教えてください。
新卒でアミューズメント事業を手がける会社に入社し、20代半ばには店舗経営に関わる立場を任されました。本部から決められた予算が下りてくるのではなく、店舗ごとに予算を立て、売上や経費、営業利益、キャッシュフローまで管理する仕事です。
ただ、当時は経営に関する知識がほとんどなく、分からないまま手探りで取り組んでいました。数年間続ける中で、「このままでは、経営を十分に理解できないまま終わってしまうかもしれない」と感じるようになったんです。
ちょうど家庭のことも含めた人生の転機が重なったため、一度マーケティングの分野に進み、専門的なスキルを身につけてから、もう一度経営に戻りたいと考えました。そこで、浜松市にあるWebマーケティング会社へ転職しました。
事業会社で支援を受ける側にいた経験から、転職後は「支援される側は、こう感じていた」と意識して仕事に向き合ってきました。この2つのキャリアが、現在の支援方針や経営観の土台になっています。
――独立した背景を教えてください。
事業者様が広告について問い合わせるのは、広告そのものを求めているからとは限りません。
「集客が苦しいため、知っている手段として広告を選んだ」というケースが多くあります。本来は周辺の要素まで整理し、広告が妥当かどうかを判断する必要があります。
しかし、支援会社では受注した業務の範囲を越えて踏み込むほど、会社の利益とお客様の最善が一致しない場面も生まれます。そうした不自由さを感じ、必要だと思う支援を、自分の考えで提供したいと独立しました。
私自身がマーケティングがとても好きで、オタクのように探究し続けられることも独立を後押した形です。
好きという情熱と再現性を両立する経営
――経営するうえで、譲れないポリシーを教えてください。
外に向けて提供するものには、自分の「好き」という気持ちや誇りを込めます。単なるビジネスではなく、愛情や熱狂を持って世の中へ送り出せるかが重要です。
一方、自社の経営では再現性を重視しています。価値を継続的に届けるには、偶然や個人の感覚に頼らない仕組みが必要です。
まず経営を安定させ、そのうえで外向けの仕事には情熱を注ぎたいと考えています。
――「マーケティングを科学する」とは、どのような考え方でしょうか?
マーケティングは、センスや才能で片付けられがちな領域です。しかし私は、数学的・構造的に組み立てることで、再現性を持たせられると考えています。
たとえば、年齢や性別だけでペルソナを絞ると、同じ悩みを持つ別の層を取りこぼす可能性があります。大切なのは表面的な属性ではなく、消費者の悩みやニーズを捉え、それに合う文章や画像、動画で訴求することです。
さらに深堀ると消費者の方々は何かモノやサービスを選ぶ際に、ある一定の法則性も持って意思決定することが多いです。それは商材単価や人生でどのくらいの重要度を占めているかといった特性から決まることが多いです。例えば、「新築マンション購入と弁護士の先生選びは業界こそ違えど、選び方や選ぶ流れには共通項がある。その背景には単価や人生への関与度がある」といったものです。このように私たち消費者がどのような選び方をするかを紐解くことで、様々な業界のマーケティングでも一定の戦略、戦術を組み立てることは可能になります。
このようなアプローチが「マーケティングを科学する」という考えになります。
一人で届けられる範囲を広げるための課題
――現在の事業で直面している課題は何でしょうか?
現在の課題は、一人で会える事業者様の数に限界があることです。仕事はほぼ地上戦で獲得しており、直接お会いして話す中で依頼につながっています。
営業の効率化や発信強化を考える一方、空中戦へ振り切ることが自分のテーマに合うのか迷いもあります。屋号と私自身の認知度を高め、接点を増やす方法を探っています。
――認知度を高めるために、どのような発信を行っていますか?
SNSでは「マーケティングを科学する」をテーマに、研究の過程や得られた知見を発信しています。集客よりも、自分の考えを共有する感覚に近いです。
将来は自分のメディアを持ち、知見や価値観、研究結果を発信していきたいです。
――休日はどのようにリフレッシュしていますか?
休日は、3歳と2歳の息子たちに全力で向き合います。子どもたちと過ごす時間が、私にとってのリフレッシュです。
また、ギターを弾くこともリフレッシュになっています。時にはライブにも出ており、昔からずっと続けている趣味のひとつです。
マーケティングを誰もが扱えるものへ
――今後の展望を教えてください。
現在は個人事業を営む一方、静岡市のマーケティング会社に外部役員のような立場で参画し、リソースを半分ずつ配分しています。
個人事業では、マーケティングを突き詰める「研究所」のような形を目指しています。参画先では広告運用やチーム育成、売上づくり、部門連携、人材育成、採用など、会社全体を内側から伸ばす役割を担っています。
個人事業をどこまで拡大するかは検討中ですが、マーケティングに広く深く携わるためには拡大前提で動いていきます。但し、拡大する上で個人のテーマとしている「マーケティングに血を通わせる」にハードルが上がることも想定されます。その上で最大限のパフォーマンスを出せる体制と規模感を見極めたいです。
――3年後の事業規模をどのようにイメージしていますか?
現在の売上を1とした場合、3年後には5倍ほどを目指しています。現状維持ではなく、成長を目指します。
ただし、売上だけでなく、自分が深く介入できる状態との両立が欠かせません。個人事業と参画先の双方で、再現性のある成長を形にしたいです。
――マーケティングを通して、社会をどのように変えていきたいですか?
マーケティングは、まだ曖昧なものとして捉えられています。枝葉の手法に意識が向き、時間や予算を使っても成果が分からないケースも見てきました。
そのゆえにマーケティングは再現性のある強力な武器になることを広めていきたいです。一部の専門家だけのものではなく、考え方を理解すれば誰もが活用できます。
静岡県には、専門性を磨き、良い商品をつくる事業者様が多くいます。そこに顧客や市場から考える視点が加われば、可能性を広げられるはずです。
再現性のあるマーケティングが広まり、事業者様の業績が向上すれば、地域経済にも良い影響を与えられます。私の取り組みが、そのきっかけになればいいなと思っています。