経営と現場の「ズレ」を整え、人が「ゴキゲン」に力を発揮できる組織を増やす
株式会社ひびまる 代表取締役 小澤 槙人氏
株式会社ひびまるは、経営者や組織幹部を対象に、組織開発、人材育成、採用戦略、採用広報・ブランディング、マーケティング戦略などの支援を行っています。ウェディング、広告、スポーツ人材の各領域で、営業、コンサルティング、マネジメント、経営に関わってきた小澤氏。これまでの経験を活かし、人と組織の間に生じる「ズレ」を整え、一人ひとりが力を発揮できる環境づくりに取り組んでいます。
人と組織の課題に横断的に向き合う
――現在の事業内容について教えてください。
当社は、経営者や組織幹部の方々に向けた支援を行っています。具体的には、組織開発、人材育成、採用戦略、採用広報・ブランディング、マーケティング戦略などです。
当社が向き合っているのは、採用や育成といった個別施策だけではなく、経営者の考えと、現場の認識や行動の間に生じる「ズレ」です。
経営者がどのような会社をつくりたいのかを言語化し、それを採用、育成、マネジメント、組織づくりへ翻訳していきます。必要に応じて、採用広報やマーケティング施策まで一貫して支援できることが、当社の特徴です。
特に、創業者や社長自身の力で事業を成長させてきた一方で、次の成長に向けて、幹部育成や権限移譲、組織体制の整備が必要になっている企業からご相談をいただくことが多いです。
例えば、ある企業では、社長の考えが幹部や現場に十分伝わらず、意思決定や社員育成が社長に集中していました。そこで、社長や幹部への1on1を通じて、それぞれが思い描く組織の理想像や、担うべき役割について整理し、認識をそろえるための共通言語をつくるところから支援しています。
経営者がまだ言葉にしきれていない問題意識や構想を整理し、組織課題として構造化したうえで、採用・育成・マネジメントなどの具体的な施策へ落とし込んでいけることが、私の強みです。
――社名や事業に込めた思いを教えてください。
私は、笑顔で明るく毎日を過ごせる人を増やしたいと考えています。ある組織では力を発揮できなかった人が、別のチームや環境では大きく活躍することがあります。
マネジメントや環境、その人の強みとの相性を整えることで、「ゴキゲン」に働く人を増やしたいです。その先に、「ゴキゲン」に生きる人を増やしていきたいという思いがあります。
「ズレ」という言葉にもこだわりがあります。人間関係の小さなかけ違いが、組織では離職などの形で表れる場合もあります。小さなズレを補正するだけでも、もっと働きやすく、生きやすくなると考えています。
私たちは、心身の状態が良いという意味だけでなく、自分の強みを生かし、周囲と良い関係を築きながら力を発揮して働ける状態を「ゴキゲン」と呼んでいます。
多様な現場で実感した、環境が人を変える力
――これまでのキャリアについて教えてください。
私は新卒でウェディング企業に入社し、ウェディングプランナーを経験しました。その後、全国の結婚式場や婚礼事業者を支援する新設部署で、式場コンサルティング、アライアンス営業、自社ツールの販売などに関わりました。M&Aを通じて運営を引き継いだ結婚式場の支配人として、現場の立て直しを担ったこともあります。
その後、サイバーエージェントに転職し、アカウントプランナーとして企業のマーケティング戦略や施策を担当しました。さらに、スポーツ領域の人材紹介や研修などを行う企業へ移り、執行役員CMOとして全社のマーケティングを担うとともに、新卒人材紹介事業の事業部長を務めました。
――独立を決めたきっかけは何ですか。
さまざまな組織を経験するなかで、私自身、職種や上司、チームが変わることで、自分でも驚くほど成果や働き方が変わった経験があります。また、同じようなケースをたくさん見てきました。人は、個人の職務能力だけで成果が決まるのではなく、その人の強みと任される役割、周囲との関係性や環境などが、かみ合っていることが大事なのだと実感しました。
一方で、組織の内部にいると、利害関係や過去の経緯があるため、問題に気づいていても率直に話しづらいことがあると思います。そこで、経営者と現場の間に立ち、外部だからこそできる問いかけや翻訳を通じて、組織の変化を支えたいと考え、独立しました。
働く人が力を発揮できる場所や関係性をつくることで、社会に貢献していきたいです。
上下関係ではなく、役割の違いを尊重する
――現在の組織体制について教えてください。
現在は、私を中心に、複数の業務委託パートナーと連携しながら事業を運営しています。 コミュニケーションで大切にしているのは、役割や責任の違いを明確にしながらも、それを人としての上下関係にしないことです。
発注者と受注者という立場の違いはありますが、どちらかが人として上になるわけではありません。相互にリスペクトを持ち、それぞれの専門性を生かして仕事を進めることを大切にしています。
――組織の雰囲気を見る際、どのような点を重視していますか。
横柄な態度や、相手へのリスペクトを欠いた言動がある組織は、雰囲気が良くなりにくいと感じています。例えば、「アシスタントにやらせればいい」と言うのか、「アシスタントの方にお願いしよう」と言うのかで、組織の温度感は変わります。経営者や役職者の言葉や態度は特に重要です。
また、会議中は発言が少ないのに、会議室を出た途端に会話が増える組織には、意見の言いづらさがある可能性があります。私は、そうした空気感を感覚だけで終わらせず、チェックリストなどの形に落とし込もうとしています。
AI時代に、人だからこそ生み出せる価値
――今後、どのような事業を広げていきたいですか。
売上や組織規模を伸ばすことは重要ですが、規模の拡大だけを目的にはしていません。働く人やクライアントに無理を強いるのではなく、関わる人が力を発揮しながら、持続的に成長できる事業をつくりたいと考えています。何より、自分自身も含め、関わる人が幸せでいられる輪を広げていきたいです。
現在は、その一環として、個人向け営業(toC)に携わる人材の育成支援にも取り組んでいます。 単に営業手法を教えるのではなく、その人がどのような強みを持ち、営業という仕事を通じてどのようなキャリアを築きたいのかを整理しながら、成果と成長の両方を支援しています。
――AIが普及するなかで、人による支援にはどのような価値が残ると考えていますか。
業務の再設計や仕組み化、時間短縮など、AIで効率化できることは積極的に進めるべきだと思っています。私自身もAIには肯定的です。一方で、人と人との関係性や、その場の文脈を踏まえたコミュニケーションには、引き続き人が担う価値が残ると考えています。
「この場は空気が悪い」「表情から納得しきれていないように感じる」「この人は本音を言えていない」といったことを感じ取ることや、対話を通じて相手が自らの考えや本音に気づき、その気づきが行動や意欲につながっていくプロセスは、簡単には代替できません。
方法論の精度を高めることは必要ですが、人の感情や関係性に向き合う部分を抜いてしまえば、AIによる情報提供だけでも十分になってしまいます。一緒に悩んだ時間や、かけてもらった言葉が記憶に残り、10年後、20年後に「あのときは良かった」と思える。私は、そうした体験を生み出す育成や組織支援を目指しています。
人生の選択を支えた、人の言葉と音楽
――影響を受けた人物について教えてください。
母、ジョン・レノン、南壮一郎さん、藤原和博さんなどです。母は、何かを押し付けるのではなく、温かく見守ってくれました。人への接し方にも分別があり、私の妻も母を尊敬していると話してくれたことがあるほどです。
大学時代には、南壮一郎さんの講演を聞きました。スポーツ業界を本気で変えたいのであれば、まず一流のビジネスパーソンになってから来てほしいという言葉を受け、最初からスポーツ業界を目指すのではなく、まずビジネスパーソンとしての力を身につけようと考えたのです。その後、南さんが自ら語った夢を実現していく姿を見て、言葉にしたことを行動で形にする人として尊敬するようになりました。
藤原和博さんからは、教育に関わる方法は教師になることだけではないと気づかされました。ビジネスの経験や知識を身につけることで、異なる立場から教育に関わることもできるのだと学びました。
――音楽から受けた影響について教えてください。
私は小学生の頃から大学卒業までバンド活動をしており、特に、完成された理想像ではなく矛盾や葛藤を抱えながらも、平和や愛、その瞬間の思いを表現し続けたジョン・レノンの姿に、強く影響を受けました。
音楽には、その瞬間のライブだからこそ生まれる音があります。同じように、言葉にも、相手やタイミングによって魂が乗る瞬間があると思っています。
仕組みや方法を磨きながらも、人が人に向き合うことでしか生まれないものを大切にしたいです。これからも、その姿勢を薄めることなく、ひびまるらしい事業を広げていきます。