言葉が育む心の文化― 児童文化を未来へつなぐ お話の魔法使いの学校「おはなしかご」の挑戦

株式会社おはなしかご 代表取締役 大竹 麗子氏

子どもたちの心を育む児童文化を広める株式会社おはなしかご。絵本や語り、手遊びなどを通して「言葉の力」を届け、人の心を豊かにする文化を次の世代へつないでいます。長年にわたり独自の教材づくりと人材育成を続け児童文化の新たな可能性を切り拓いてきました。本記事では、代表取締役の大竹麗子氏に、事業へのこだわりや経営の考え方、今後の展望について伺いました。

子どもの心に「楽しい!優しい!美しい!」を届ける――おはなしかごならではの取り組み

――現在の事業内容と、その特徴について教えてください。

子どもたちや大人へ「言葉」を届ける仕事をしております。

子供の心に「楽しい!優しい!美しい」文化を届けることで子供の心の中の「寂しい 苦しい 悲しい」が消えてゆくのです。生きる力に変わってゆくのです。

「お話」、手遊び、人形、持たずに読める絵本のイノベーション「くるくる絵本」

パネルシアターなどを通して、一人ひとりの心に届く文化を懸命に伝えています。

約40年かけて制作した教材は500種類以上にのぼり、そのすべてがオリジナル作品です。

著作権の制約を受けることなく活用でき、教材の販売だけでなく、心に届く届け方を学べる講座も開いています。

2024年に「子供の権利条約」が施行されその31条には

「子どもはそれぞれの年齢にそった質の高い文化を享受する権利がある」

「ソーシャルワーカ・子供に関わる仕事をしている人はその文化を学び届ける責務がある」と記されています。そのことにより「子供への文化」が注目されるようになりました。

しかしまだまだソ-シャルワーカ達のほとんどが個人読み用の絵本を読む「読み聞かせ」という世界にいるのです。つまり社会の子供のいる場ではまだまだその文化力を獲得できて

いない現状です。まさに文化の緊急事態です。各現場で文化力を持った人を育てることも、おはなしかごの実に大切な役割です。

――他社にはない強みはどのような点でしょうか。

最大の強みは、教材もプログラムもオリジナルであることです。手遊びや語り、人形なども自ら企画・制作してきたため著作権の制約を受けることなく、自由に活用できます。

年齢や場面に合わせて自由に組み合わせられるため、保育や教育の現場だけでなく、大人向けの語りや発達障がいのある子どもたちへの講座にも広がっています。

おはなしかごは「言葉のデーズニーランド!ドラエモンハウス!」と言われております。

「こんなものいいな、あったらいいな・・あります!」

 「こんなこといいな、できたらいいな・・できます!」

子供の喜ぶ一つひとつを確実に実現してきました。

今世界の各地で戦争が行われております。その国の子供達はどんな日々を過ごしていのでしょうか?大人たちは子供達をどのように守っているのでしょうか?

第二次世界大戦の最中オランダの母親たちは

「私たちはどんな戦火の中でも毎晩必ず子ども達に心楽しいお話しを届けます。

それが私たちの戦争反対の声です。平和への道なのです」

と言ってそれを実践してきました。

今、戦火ではないひとまずの平和な日本の大人たちが子供の心へ美しい文化を届ける

ことは大人として人間として当たり前のことです!

児童文化の世界への転機――人生を変えた天からの声

――経営者になられたきっかけを教えてください。

社会での初めての仕事は銀行勤務でした。しかしある日、仕事中に心の中で突然子どもたちの笑い声が聞こえてきたのです。「子供達が私を呼んでいる!」と思いました。

天からの声だと思いました。

その後、幼稚園教諭の資格を取得し、幼稚園の先生になりました。

結婚後は家庭の事情で退職しましたが、自宅で近所の子どもたちにお話を届ける活動を始めると、「楽しい!」という噂がひろがり「教えてほしい」という声が大きくなりました。

もともと会社をつくるつもりはなかったんです。それでも活動を続けるなかで講座の開設や教材の普及の必要から法人化する流れになりました。今のおはなしかごは、そうした歩みのなかから生まれました。

――仕事をする上で大切にしている価値観を教えてください。

全盲だった父が遺した言葉は「言葉は人の心を温めたり励ましたりするために神様が人間へくれたものだ。ドッジボールするな。言葉はけっしてぶつけるな。相手の人の心に美しく 暖かく届く確かなキャッチボールをしてゆけ」でした。

この言葉が一粒の種になり、やがて社会の大きな桜の木になったのだと思います。

座右の銘は「海の水に砂糖一粒」です。

社会全体を一人で変えることはできませんが、今自分にできることを精一杯する・・

その小さな一歩を積み重ねることで、必ず未来は変わっていくと信じています。

文化を届ける人を育てる――受け継がれる「言葉の力」

――組織づくりで大切にしていることを教えてください。

現在は一人で運営していますが、ホームページ制作や撮影、教材制作などは専門家の力を

借りながら進めています。また、講座を修了した方々が「チームおはなしかご」として、

それぞれの地域で活動しています。

大切にしているのは「本物の文化を届ける人」を育てることです。

同じ教材でも目線や間の取り方声の使い方によって子どもたちの反応は大きく変わります。だからこそ、その技術まで伝え、一人でも多くの子どもたちへ質の高い児童文化を届けて

ほしいと思っています。

――経営の判断をするときに大切にしていることは何でしょうか。

経営において何かを判断するときは、「その仕事の結果が精神的に良い結果を生むかどうか」を何よりも大切にしています。会社にとっても、利用してくださる方にとっても、その取り組みが心にとって本当に良いものなのか。それを最大のエビデンスとして、一つひとつ向き合っているんです。

売上や利益だけでなく、子どもたちや保育者、保護者が「やってよかった」と思える結果につながるかを常に問い続けています。

実際に保育現場では、お話や手遊びを通して子どもたちの心や行動が変わり保育士の方から喜びの声をいただいております。そうした積み重ねが、未来の平和を創る心を育てることになるのです。

必要とするすべての人へ――文化を届ける新たな挑戦

――今後挑戦していきたいことを教えてください。

今後は、視覚障がいのある子どもたちにも、より楽しんでもらえる教材づくりに取り組みたいと思っています。父が全盲だったこともあり、「目の見えない子どもたちへ何が届けられるか」は、長年抱き続けてきたテーマなんです。言葉遊びや語りなど、聴覚を通して楽しめる内容をさらに充実させるとともに、実際に教材に触れられる工夫も進めていきたいです。

また、不登校や発達障がいのある子どもたち、子育てに悩む保護者などへ、こどもホスピスの子供達他すべての子供のいる場に心楽しい文化が届く取り組みに力を入れていきます。

スポンサーとの連携も視野に入れながら、より多くの保育園や家庭へ届けられる環境を整えていきたいです。児童文化を必要としている方へ、もっと身近な形で届けていけたらと思っています。

――経営のなかでこれだけは譲れないという想いはありますか。

最も譲れないのは、「精神的に黒字であること」です。

経費の面では赤字になる仕事でも、心にとって価値のある結果を生み出せるのであればその仕事には意味があると思っています。反対に、利益が出ても精神的に黒字にならないので

あれば、本当の意味で良い仕事とは言えません。

だからこそ経済的な損益だけではなく「精神的に黒字かどうか」を常に問い続けています。それが、私の経営で何よりも大切にしている考え方です。

那須の自然が育む、新しい「お話」の種

――休日のリフレッシュ方法を教えてください。 

仕事と生活はほとんど一体で、おはなしかごのことを考えない日はありません。

那須にも「おはなしかご」の拠点があります。自然に囲まれた那須で過ごす時間は、

大切なひとときです。鳥の声や木々が風に揺れる音に耳を澄ませると、新しい心の声が聞こえてくるのです。

これからも「海の水に砂糖一粒」の思いで誰もがみんな子供の心に

「楽しい!優しい!美しい文化」を届けられる日に向かいたいと思います。

人は飛ぶ生き物ではないのですが

「願ったことに本気で全力で挑戦した時人は飛ぶ」・・のです。

自分にできることを一つひとつ積み重ねながら、これからも一人でも多くの子どもたちや

大人へ、残りの命のすべてを賭けて児童文化を届けていきます。

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