現場に根差した伴走支援で、中小企業の事業承継と人事制度改革を支える
伊澤コンサルタントオフィス株式会社 代表取締役 伊澤 弘子氏
中小企業診断士として、中小企業を対象にコンサルティングを行う伊澤 弘子氏。現場へ足を運び、経営者の思いや事業の状況を丁寧にくみ取ることを重視しています。事業承継やM&A、人事制度の構築など、企業が変化を迫られる場面に寄り添い、将来につながる道筋をともに考えています。空論ではない、実際の現場を知ったうえで道筋を考える伊澤氏に、支援で大切にしていることや、事業の組織体制、休日の過ごし方について伺いました。
目次
経営者の思いに寄り添い、現場から進むべき道を見つける
――現在の事業内容について教えてください。
私は中小企業診断士として、中小企業を対象にコンサルティングを行っています。現在は、埼玉県内での仕事が中心です。神奈川県に住んでいますが、中小企業診断士になって最初の約1年半、埼玉県で仕事をさせていただきました。その後も埼玉県の協会に所属し、活動を続けています。
埼玉県には、ものづくりを中心に発展してきた地域が多くあります。長年培ってきた技術を守りながら、時代に合ったものづくりへと進化させている企業も少なくありません。
経営者の皆さまは、事業や技術に強いこだわりや思いを持っています。一方で、それらをどのように展開するべきか、悩んでいる方も多くいらっしゃいます。経営者は孤独になりやすい立場です。私は近くで寄り添い、少しでも力になりたいと考えています。
――支援を行う上で大切にしていることは何ですか。
私は、空論ではなく、現場に根差した助言をすることを大切にしています。豊富な知識や高度な専門性があっても、現場では理論どおりに物事が進むとは限りません。
実際に現場へ入り、そこで起きていることを見た上で、進むべき道筋を考えます。経営者が何を望み、何に困っているのかは、現場を見て、話を重ねることでわかることがあります。
以前、ある事業者を訪問し、約2時間お話をしました。その後、公的事情により私が対応できる範囲が限られることをお伝えしたところ、「有事のときはお願いします」と言っていただきました。1回の訪問でも信頼していただけたことから、支援における信頼関係の大切さを実感しました。
家業の苦労を目の当たりにし、経営者を支える道へ
――中小企業診断士を目指したきっかけを教えてください。
私の実家は、もともと商売をしていました。しかし、事業承継がうまくいかなくなり、最終的には別事業に転換することになったのです。
父は公務員でしたが、母の実家の事業を継いでくれました。資金繰りや従業員との関係、特に職人の方々との付き合い方には、苦労していたと思います。
私は父の姿を身近で見ていたため、経営者の力になりたいという思いを持つようになりました。経営に関する知識を持って助言できる立場になり、1人でも多くの経営者を支えたいと考えたのです。
――資格取得に至った経緯を教えてください。
私はコンサルティングとは別の事業も行っており、その事業を父から受け継いでいます。実際に引き継いだ際、単独で事業を続けることに難しさを感じました。
企業に勤めていた頃には、経理や資金繰りに関わる仕事を経験していたものの、経営そのものに携わった経験はなく、経営判断に必要な知識が十分ではありませんでした。
そこで感じたのが、経営者として判断するためには、基本を学ばなければならないということです。そこで中小企業診断士の勉強を始め、資格を取得しました。
――経営や支援における判断軸は何ですか。
私は、知識を持った上で、物事に誠実に向き合うことを大切にしています。難しい問題に直面したときでも、間違ったことをせず、誠実に対応すれば、解決への道は見つかると考えています。
私はテナントビルの運営にも携わり、さまざまな中小企業を見てきました。20年、30年と生き残る企業は、世の中の進歩に合わせて変化しています。変化を見極めるための判断材料を提供しながら、経営者や事業に誠実に向き合うことが私の基本姿勢です。
家族のように信頼し合える関係を築く
――現在はどのような体制で仕事をしていますか。
基本的には、私1人で仕事をしています。案件に応じて、ほかの中小企業診断士の方に業務委託でお願いしながら進めています。
中小企業診断士になってからは、研修会や懇親会を通じて、多くの方と出会いました。私はお酒を飲めないため、当初は懇親会が得意ではありませんでしたが、それでも参加することで、声をかけていただいたり、支えていただいたりする機会がありました。
自分では気づかないところで見守り、支えてくださる方々がいたからこそ、仕事を続けてこられたと感じています。
人件費の上昇を見据え、企業に合った人事制度を構築する
――今後、力を入れていきたい取り組みを教えてください。
私は今後、人事制度の構築や見直しに力を入れたいと考えています。人件費の上昇が避けられないなか、中小企業にとって、生産性の向上や人事制度の変革は重要な課題です。
補助金などによる支援があっても、それが永続するわけではありません。数年後に人件費の負担が経営を圧迫する状況になる前に、早い段階から準備する必要があります。
――どのような人事制度を提供したいと考えていますか。
具体的には、等級制度の構築や再構築を想定しています。ただし、規模の小さい企業では、大がかりな人事制度が必ずしも適しているとは限りません。
小規模な企業であれば、スキルマップを中心に、必要な制度を組み合わせる方法もあります。現在は、半年ほどかけて事業者と一緒に人事制度を考え、制度として形にするためのパッケージづくりを進めています。企業ごとの規模や状況に合った仕組みを提供したいと考えています。
ベリーダンスを通じて心と身体を整える
――仕事以外で取り組んでいることを教えてください。
現在は、ベリーダンスに取り組んでいます。もともとはデスクワークによる腰痛がひどく、インナーマッスルを鍛えるために始めました。続けるうちに夢中になり、発表会にも参加するようになりました。
これまでにもさまざまなダンスを経験してきましたが、ベリーダンスは人生を表すような、ドラマチックな踊りだと感じています。普段使わない筋肉を動かすことができ、現在では大切な気分転換になっています。
――これから経営者を目指す方へ、伝えたいことはありますか。
私は人生の前半で、多くの苦労を経験しました。実家の事業を畳み、建物をテナントビルとして活用するまでには、1億円以上を借り入れた経験もあります。両親も病弱だったため、私が1人で両親を支え、経済的にも踏ん張らなければならない時期がありました。
とてもつらい時期でしたが、その経験は、人生の後半で必ず返ってくると考えています。これから経営者になる方にも、荒波や事業の危機はあると思います。それでも、知識を身につけ、物事に誠実に向き合い続けることが大切です。
絶対に明けない夜はありません。これからも、経営者が困難を乗り越え、その先へ進むための力になりたいと考えています。