「最後は人」が経営を動かす――訳あり不動産とハラスメント予防、株式会社SAが貫く人への向き合い方
株式会社SA 代表取締役 酒井 康博氏
株式会社SAは、「訳あり不動産」を扱う不動産事業と、ハラスメント予防を目的とした民間資格「雇用クリーンプランナー」の普及という2つの事業を展開しています。一見異なる分野ですが、その根底にあるのは「人」を大切にする姿勢です。事業を築いた背景やハラスメント予防への思い、独自の採用方法、今後の組織づくりについて、酒井氏に伺いました。
目次
ニッチな市場で、真面目に取り組むことを強みに
――現在の事業内容について教えてください。
大きく2つあります。1つは不動産事業で、建築できない土地や、極端に大きい・小さい土地など、一般的な不動産会社では扱いにくい「訳あり不動産」が中心です。そうした不動産を買い取り、権利関係などを調整して“訳あり”を解消し、売却しています。
もう1つが、ハラスメントを予防する民間資格「雇用クリーンプランナー」の普及です。資格を通じてハラスメントについて学び、職場で意識する機会をつくっています。
――他社にはない強みは、どのような部分でしょうか。
訳あり不動産は市場自体がかなりニッチなので、そこは差別化になっています。ただ、競合企業もいますし、特別な販売ルートがあるわけでもありません。
資金力やノウハウの違いはあっても、最後はやっぱり「人」なんですよね。一生懸命、真面目に働く。それが最終的な差別化になっていると思っています。
自身の失敗から生まれた、ハラスメント予防への取り組み
――ハラスメントに関する事業を始めた背景を教えてください。
ハラスメントは、何でもそう捉えてしまうのも違いますし、本当のパワーハラスメントなどは当然なくさなければいけません。難しいのは、その境界が人や会社によって異なることです。だからこそ、みんなで学び、認識を共有することが大事だと考えています。
私自身、業績を伸ばしたいと思って一生懸命やっていたものの、受け手には違う捉え方をされた経験があります。振り返ると、配慮が足りなかった部分もあったと思うんです。
そこでハラスメントについてみんなで勉強し、お互いに気をつけるようにしたところ、離職率が一気に下がり、業績も上がりました。その経験から、この資格をつくって広めようと思いました。
――社内コミュニケーションで大切にしていることは何ですか。
同じ言葉でも、やる気が出ることもあれば、嫌な気持ちになることもあります。だから、お互いに言い方には気をつけようと伝えています。
ただ、仕事の良し悪いまで曖昧にするわけではありません。事業にはきちんと向き合いながら、伝え方や接し方ではお互いを尊重する。それを大事にしていますね。
出世を目指した会社員から、経営者の道へ
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
大学卒業後は、不動産の研究機関に入り、出世しようと思って頑張っていました。ところが10年目に出向制度を利用し、大手金融機関で働く機会をいただいたんです。
そこで同年代や年下にも、「こんなに仕事ができる人がいるのか」と驚くような人たちに出会いました。頭の回転だけでなく、コミュニケーション能力も高い。そういう人たちを目の当たりにして、会社員として上り詰めることへの意欲がなくなっていきました。
もともと社長になりたかったわけではありません。それでも会社員としてのモチベーションが下がったなら、別の道を選ぼうと。ある意味、消去法的に独立を決めました。
――訳あり不動産を選んだのはなぜでしょうか。
結論から言えば、偶然です。私は物やサービスを「売る営業」が苦手だった一方、買い取りなら相手にこちらからお金を払う「買う営業」です。それなら自分にもできるのではないかと考え、不動産の買い取り再販を始めました。
ただ、起業したばかりで資金がなく、一般的な不動産は買えません。そこで買えたのが、建築できない土地などの訳あり不動産でした。問題を解消して売却することを繰り返すうちに、困っている方が多く、競合が少ないことも分かり、事業として形になっていったんです。
採用で見るのは「会社の文化に合うか」の一点
――採用では、どのような人と働きたいと考えていますか。
以前は能力ややる気を重視していましたが、今は「会社の文化に合う人かどうか」を見ています。会社にマッチしている人のほうが、結果的に伸びていると感じるからです。
うちの会社が良い、悪いという話ではなく、相性なんですよね。社内を見たり、人と話したりして、「この会社なら楽しく仕事ができそうだ」と思ってもらえるか。今はそこを一番大切にしています。
――採用にはかなり力を入れているそうですね。
お金以上に、時間を圧倒的に使っています。街中でも「この人はいいな」と感じたら、直接話しかけることがあるんですよ。
たとえば、雨の中で工事現場の誘導をしていて、自分の担当以上のことまで一生懸命やっている人や、誰も見ていない場所を丁寧に掃除している人。そういう姿を見ると素敵だなと思います。
名刺を渡して、「一度会社で話す機会を持てるなら連絡してください」と伝えるだけです。こちらから連絡先は聞きません。それでも実際に連絡をくれる方がいて、入社が決まった人もいます。
若い人に経営を任せる「イントレプレナー」という挑戦
――今後、取り組んでいきたいことを教えてください。
「イントレプレナー」という考え方が好きなんです。企業内で独立するようなイメージですね。
事業を任せる人に予算を預け、自分で採用し、やりたい事業を進めてもらう。事務所費や採用費などは会社側で用意しますが、本人には子会社の社長のような感覚で動いてもらいます。
すでに若い人を2人採用していて、入社後すぐに採用活動にも取り組んでもらっています。今後はまず3人ほど、この形で事業を任せられる人をつくっていきたいですね。
――現在、経営上の課題として感じていることはありますか。
結局、採用です。やりたいことがあっても、会社にマッチする人と出会えなければ進められません。採用に一番時間を使っているのに、一番悩んでいるところでもあります。
私自身、人を育てることが得意だとは思っていません。だからこそ、イントレプレナーのような形で権限を任せ、そのポジションにはトップ営業というより、人を育てたり、チームをつくったりするのがうまい人を置きたいと考えています。
休日も頭にあるのは、やっぱり仕事
――休日の過ごし方やリフレッシュ方法を教えてください。
YouTubeを見たり、本を読んだりしています。ただ、結局は仕事に関係するものを見てしまうんですよね。組織論や新規事業など、そのとき悩んでいる分野について調べています。
仕事を完全にゼロにして旅行に行けばリフレッシュできるかというと、逆に心配になってしまうと思います。ガツガツとパソコンに向かうわけではありませんが、仕事のことを考えている時間が、今の自分にとってはリラックスに近いのかもしれません。
仕事が趣味なのかと言われると、それも少し違います。これから夢中になれる趣味が見つかるかもしれませんし、今はまだ探している途中ですね。
これからも人との縁を大切にしながら、目の前の仕事に真面目に取り組んでいきたいと思います。
株式会社SA
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