給食を軸に食の可能性を広げる、現場主義と誠実さで築く西澤 健作氏の経営
株式会社年輪 代表取締役 西澤 健作氏
株式会社年輪は、給食事業を主軸に、福祉・医療分野への食事提供、高校の食堂、飲食店、子ども食堂、農業など、「食」に関わる事業を幅広く展開する企業です。創業11年目を迎え、昨年にはセントラルキッチンを新設し、OEM事業にも進出しています。食事のおいしさと取引先との信頼関係を土台に成長を続ける西澤氏に、これまでの歩みや組織づくり、今後の展望について伺いました。
目次
給食を起点に広げる「食」の事業
――現在の事業内容について教えてください。
当社の主な事業は給食です。福祉や医療、障害福祉の分野などへ食事を届けるほか、高校の食堂、飲食店、子ども食堂、農業にも取り組んでいます。
昨年はセントラルキッチンを立ち上げました。それまで各現場で行っていた調理を工場へ集約し、人件費や食材の削減につなげています。また、セントラルキッチンを持ったことでOEM事業も始めました。今後は、この事業をしっかり伸ばしていきたいと考えています。
――御社ならではの強みは何でしょうか。
強みは、食事のおいしさと取引先との関係性です。当社は営業活動をしておらず、パンフレットも用意していません。それでも口コミからオファーをいただき、事業を伸ばしてきました。
給食業界では単年契約が多いなか、当社は創業から11年の間に契約終了となったのは当社から申し入れた2件にとどまっています。現在は30数件の契約先と継続してお付き合いをいただいている状況です。
依頼をいただいた際も、最初から「できない」とは言わないようにしています。まずやってみてから考えるという姿勢です。そうした柔軟さやレスポンスの速さも、評価していただいている部分だと思います。
――今後、どのような企業を目指していますか。
一般的な給食事業者とは異なる、新しい給食事業者を目指したいです。本業は給食ですが、そこにひもづく事業を広げていきたいと考えています。
お米づくりや子ども食堂もその1つです。飲食店では、嚥下障害のある方など、外食したくても食べられる店が少ない方に向けて、嚥下食をコースで食べられる店を運営しています。
施設運営や保育園運営も視野に入れています。まったく関係のない分野へ広げるのではなく、これからも「食」に携わる事業を続けていく考えです。
「自分だったらこうする」が経営者としての原点
――経営者になったきっかけを教えてください。
人から指示を受けて動くのが苦手だったからです。いろいろな経営者の方と出会うなかで、「私だったらこうするのに」と感じることが多くありました。それなら、自分で歩くしかないと思ったのがきっかけです。
創業時は、私と栄養士、調理補助の3人で始めました。最初の契約先は、私を信じて契約してくださったドクターです。福祉の現場でもおいしいものを食べてもらいたいという思いが一致し、「一緒にやろう」とスタートできたことが大きかったです。
――経営判断の軸になっている価値観は何でしょうか。
創業当初は誰からも相手にされず、食材を取り扱う業者や銀行にも自分から足を運びましたが、ほとんど相手にされませんでした。だからこそ、「見返したい」という反骨心は強かったです。
好きな言葉に「成功が最大の逆襲」があります。周囲から「経営なんてできるのか」と見られてきたからこそ、1つずつ結果で覆していきたいという気持ちは今も変わりません。
ただ、経営はお金儲けだけではないと考えています。福祉や子ども食堂のような事業にも取り組み、きちんと税金を払い、従業員を幸せにする。そうしたクリーンな経営を目指すという軸は、創業時から変えていません。
――経営を続けるなかで、特に大切になったことはありますか。
一番は「誠実さ」です。経営をするようになってから、真面目に、真摯に、誠実に向き合うことの大切さを強く感じるようになりました。
背伸びをせず、格好をつけず、ありのままで向き合うことを意識しています。福祉や医療の分野では、大手の理事長やドクターと接する機会もあります。そうした方々に認めていただくためにも、誠実に、真摯に向き合うことが大切だと思っています。
私は、ひたすら現場と仕事に向き合い、石橋を叩きながら真面目に取り組んできました。それが今につながっていると感じています。
役職よりも「仲間として横一線で働く」を重視する
――従業員とのコミュニケーションで大切にしていることはありますか。
一番は、上に立つ人間がしっかり現場に足を運ぶことです。現在は従業員が230人ほどいて、そのうち約220人が現場で働いている状況です。私自身も今なお現場に入っています。
一緒に働くことで、パートさんや新入社員がどのように感じているのかがわかります。役職がついているからといって、偉いわけではありません。仲間として横一線で仕事をする意識を大切にしています。
――現在、組織面で課題に感じていることはありますか。
人が一気に増えたことで、経理や総務など、企業を内部から支える体制にはまだ弱さを感じています。これまでも数値化は行ってきましたが、さらに深く分析し、感覚だけではなく数字で表現できる経営にしていく必要があります。
OEMと組織基盤を強化し、次の成長へ
――今後、特に力を入れていきたい事業を教えてください。
まずはOEM事業です。給食事業を始めたときと同じように、実績を1つずつ積み上げていく段階だと捉えています。
大手メーカーとも協力体制ができてきているので、事故がないよう着実に実績を積んでいきたいです。セントラルキッチンは現在1つですが、今後はもう1つ工場を建てたいとも考えています。
――今後の成長について、どのように考えていますか。
以前は売り上げ50億円、100億円という数字も考えていました。ただ、今は数字だけではなく、しっかり利益を残し、従業員へ還元することのほうが大切だと感じています。
従業員の幸せの指数が高い企業にすることが、これからは重要だと思います。一方で、企業を大きくしたいという思いは変わっていません。今後は、ある程度形ができている事業を買収していくことも考えています。
父親として大切にする「今しかできない経験」
――休日はどのようにリフレッシュしていますか。
4歳と6歳の子どもがいるので、子どもたちと遊ぶことが一番のリフレッシュです。父親として、今しか一緒にできないことがあると思っています。2人とも男の子なので、ゲームで遊ぶよりも外で過ごすことが多いです。海、山、川などのアウトドアへ行き一緒に走り回っています。
――最後に、これから実現していきたいことを教えてください。
やりたいことはたくさんあります。保育園運営など、これから挑戦したいこともありますし、個人的には、いつかWikipediaに名前が載ることも目標の1つです。
創業者として、やる以上は行けるところまで行きたいです。ただ企業を大きくするだけではなく、しっかり利益を残し、従業員に還元しながら、企業の中身も良くしていきたいと考えています。
「食」を軸に事業の可能性を広げ、1つずつ着実に挑戦を重ねていくつもりです。