世界へ広がる“日本の家庭料理”――わしょクック株式会社が伝える食卓の価値
わしょクック株式会社 代表取締役 富永紀子氏
日本の家庭料理を通じて、世界へ日本文化の魅力を発信するわしょクック株式会社。外国人向け料理教室の運営や講師育成に加え、ニュージーランドでの事業展開にも取り組んでいます。本記事では、創業の経緯や事業への想い、今後の展望について伺いました。
命をつなぐ食卓を世界へ届ける
――現在の事業内容について教えてください。
当社では、外国人向けの料理教室を運営しています。日本では10年以上にわたり、外国の方々へ日本の家庭料理を教えてきました。個人レッスンだけでなく、団体や企業研修にも対応しています。
講師の育成にも力を入れており、現在は世界各地に70名ほどの講師がいます。自宅でフランチャイズ形式の料理教室を開いている方も少なくありません。
2023年にはニュージーランドに会社を設立しました。料理教室のほか、和食レストランや日本の伝統工芸品を扱うショップの運営にも取り組んでいます。
――他社にはない強みや特徴を教えてください。
当社の強みは、日本の家庭料理に特化していることです。外国人向けの和食教室は以前からありましたが、多くは寿司や懐石料理など、レストランで提供される料理が中心でした。私たちは日常の食卓で親しまれている家庭料理を大切にしています。
また、国内外に広がる講師ネットワークを活かし、個人レッスンから企業研修まで幅広く対応できる点も特徴です。日本とニュージーランドの両方に拠点があることで、日本の家庭料理をより広く世界へ届けられる環境が整っています。
――理念やビジョンについてお聞かせください。
私自身、ニュージーランドに来たことで、日本の家庭料理や季節感、日本人ならではの価値観の素晴らしさを改めて実感しました。現地の方々は日本文化に大きな価値を感じてくださっています。一方で、日本ではそうした魅力が当たり前になり過ぎているようにも感じるんです。
そこで当社では「命をつなぐ食卓」をビジョンに掲げています。グローバル事業、食育事業、ウェルネス事業の3つを柱に、日本の家庭料理や食文化の価値を国内外へ伝えていきたいと考えています。
和食の素晴らしさだけでなく、日本人が育んできた文化そのものを世界へ伝えていきたいと思っています。
家庭料理との出会いが人生を変えた
――創業のきっかけについて教えてください。
私は薬学部出身ですが、薬剤師として働いたことはありません。学生時代からマーケティングに興味があり、化粧品や医薬品業界でマーケティングの仕事に携わってきました。
料理教室を運営していますが、実は料理教室に通った経験もほとんどないんです。家庭料理を学んだのは、義母との同居がきっかけでした。義母の料理をレシピ化し、外国人の同僚に振る舞ったところ、とても喜ばれたんです。
その後、ニュージーランドで家庭料理に触れる機会がありました。レストランの料理とは違い、そこには家族の価値観や土地の文化が詰まっていました。その温かさに触れたことで、「家庭料理には人と人をつなぐ力がある」と実感したんです。
もともと日本の家庭料理を世界に広げたいという想いがありました。義母との暮らしや海外での体験が重なり、この事業を立ち上げることになりました。
――なぜニュージーランドを拠点に選ばれたのでしょうか。
訪れた際に、人の温かさや自然の豊かさに魅力を感じました。礼儀や謙虚さなど、日本人と通じる部分も多かったんです。
将来は家族と同じ方向を向きながら働きたいという想いもあり、この地を選びました。
人とのつながりが組織を成長させる
――組織づくりで大切にしていることは何でしょうか。
私が大切にしている考え方の一つが「ギバーズゲイン」です。目の前の相手からすぐに見返りを得ようとするのではなく、与えたものは巡り巡って返ってくる。そんな考え方を大事にしています。
また、年齢を重ねるにつれて、人とのつながりの大切さをより強く感じるようになりました。若い頃は自分一人で走り続けることも多かったのですが、今は自分だけでは届かない場所があることも分かっています。講師やスタッフに支えてもらいながら進んだ方が、結果として遠くまで行けると感じています。
コミュニケーション面では、会社の方向性を共有することを特に重視しています。私たちがどこへ向かうのか、どんな未来を目指しているのかを伝えることで、メンバーもワクワクしながら取り組めるようになります。
オンラインでのやり取りも多いですが、実際に会うことも欠かせません。便利さだけでは得られない信頼関係があります。やはり顔を合わせることで、より深くつながれると感じています。
――どのような人と一緒に働きたいですか。
まず、日本の家庭料理や文化を世界へ広げたいという志を持っている方です。そして、自分自身の目的や目標が明確な方にも魅力を感じます。
その目標と当社の活動が重なることで、お互いの可能性がさらに広がると思うんです。加えて、行動が早い人も好きですね。自ら考えて動き、レスポンスよく挑戦できる方と一緒に仕事をしたいと思っています。
和食の価値をもっと広く届けたい
――今後の展望について教えてください。
今年から「命をつなぐ食卓」というビジョンをより明確に打ち出しました。今後は食育とウェルネスの領域をさらに強化していきたいと考えています。
ニュージーランドへ移住してからの数年間は、新しい環境での挑戦の連続でした。ようやく少しずつ土台が整ってきたので、これからは日本での活動にも力を入れながら、食育や健康に関する取り組みを広げていきたいですね。
また、世界中に日本文化を発信できる拠点を増やしたいという想いもあります。料理教室だけでなく、講演などを通じて和食や日本文化の価値を伝えていけたらうれしいです。
現在の課題は、ニュージーランドで運営しているレストラン事業です。私自身、レストラン経営の経験はありませんでした。そのため、日々学びながら挑戦を続けています。スタッフも増えてきたので、より良い運営体制を築いていきたいですね。
さらに、オーストラリアやニュージーランドでは和食への関心が高まっている一方で、教えられる人材はまだ多くありません。だからこそ、フランチャイズ展開を進めながら和食の普及に取り組んでいきたいと考えています。
まずはやってみる。その先で判断する
――経営において大切にしている価値観を教えてください。
私はできるだけ「NO」を言わないようにしています。
やってみなければ分からないことはたくさんあります。いただいたチャンスを最初から断るのではなく、まず挑戦してみる。そして自分で納得したうえで判断する。その姿勢を大切にしてきました。
また、よく「60%できたらGO」と言っています。100%の準備を待つのではなく、まず動いてみる。足りない部分は後から改善していけばいいと思っています。
――最後に、読者へメッセージをお願いします。
ぜひ海外へ目を向けてほしいと思います。私自身、海外で暮らしたことで視野が広がり、日本の良さも改めて実感しました。
夢を言葉にすると、人とのつながりや新しい機会が生まれます。これからも日本の家庭料理を通じて、人と文化をつなぐ活動を続けていきたいと思います。