教育と“省”のものづくりで、現場をシンプルにする――E-SAVE技研株式会社の挑戦とは

E-SAVE技研株式会社 代表取締役 小野 孝治 氏

技術が高度化し、装置もシステムも複雑になったいま、現場のオペレーターは「使いこなすこと」そのものに苦労し、ひとたびトラブルが起きれば復旧に時間がかかる――。そんな課題意識から、技術者教育と自動化機器の製造販売を二本柱に掲げるのが、E-SAVE技研株式会社です。86歳の代表・小野孝治氏が目指すのは、最先端技術を活かしながらも“誰もが扱えるシンプルさ”を貫くこと。これまでのキャリア、会社の現在地、そして未来への設計思想を聞きました。

教育と製造、二本柱で「現場の困りごと」に向き合う

——まず、御社の事業内容を教えてください。

当社の事業には柱が二つあります。一つは技術者教育です。通信教育や企業向けの教育など、電気・電子・制御回路といった分野を中心に、学びの機会を提供してきました。

もう一つが、自動化のための機器の製造販売です。こちらは2024年から新たに部門として加えました。

——製造販売を始めた背景は何だったのでしょうか。

教育だけではなく、現場で求められている商品を研究開発して、実際に形にして届けたいと思ったのが大きいです。私は長年、電気系の製造メーカーで制御機器や自動化に関わる仕事をしてきました。

最近はコンピュータ技術や電子部品、半導体の発展で、より小型に、より安価に、より安全に商品化できるようになっています。そうした技術を活用し、世の中にあまりない、もしくは世の中にあってもさらに工夫を加えて“省効果のある商品”を開発しようと考えました。

——強みやポジショニングはどこにありますか。

小型で、安価で、安全に――という方向性を徹底している点です。加えて、現場で「難しすぎて扱えない」とう状況をつくらないことも重視しています。

コンピュータやマイコンを使うと、現場では難しいと感じられがちです。だからこそ、工夫が必要です。たとえば、設置や取付け時、あるいは取扱い時にお客様に負担をかけないことを前提に設計にするなど、扱いやすさに力を入れています。

社名にもしている「セーブ(省)」という考え方――省工数、省資源、省スペース――を前面に出して製品開発、ものづくりの基準にしています。

クレーム処理から始まった「間違わない仕組みづくり」

——小野さんのこれまでのキャリアを、差し支えない範囲で教えてください。

私は電気系の製造メーカーで長く働いてきました。会社は何度か変わりましたが、一貫して電気系のメーカーです。その中で一番長く在籍していたのが、和泉電気(現:IDEC)です。

入社当初は設計部門を希望していましたが、配属されたのは技術を活かした営業窓口の部署でした。そこで、技術的な問題が起きた際に「私がやりましょうか」と動いたところ、営業所内で非常に好評だったんです。

工場や開発部門に頼まなくても、その場で解決できる要員がいるのは便利だということで、技術要員の設置が各支店に広がっていったんです。

——その頃、どんな仕事が中心だったのでしょうか。

平たく言えばクレーム処理です。メーカーですから、もちろん製品側の問題もありますが、お客様の選定ミスや使い方の間違いで苦情になることも結構多くあります。

対処するだけだと修理屋になってしまうので、私は「そもそもクレームを無くすにはどうしたらいいか」を考えました。お客様が間違わないように、最初から商品を開発する。取り扱い説明書やカタログも工夫を凝らして、選択しやすいようにする。そういう販売資料(仕様)の改善にも力を入れてクレーム率の低減に寄与してきました。

——教育事業につながる原点はどこにありますか。

代理店教育です。当時、代理店が500社ほどあり、新入社員向けには合宿形式で寝泊まりをしながら商品を学んでもらうような教育もやっていました。

さらに、通信教育の専門会社から依頼があり、文部省公認の通信教育で、電気・電子・制御回路などの講師も数十年続けています。2000年からは公益社団法人・大阪府工業協会で、電気回路・電子回路・制御回路の講座も継続して担当しています。そうした積み重ねが、いまの教育事業の土台になっています。

法人化の決め手は「一緒に走れる技術者」との出会い

——会社設立の経緯を教えてください。

会社としては2024年8月に設立しました。それまでは「小野メカトロ技研」として個人事業でやっていました。

法人化の大きな動機は、公益社団法人・大阪府工業協会で同じ講師をしている仲間が見つかったことです。電気電子制御に強い若い技術者で、同じように事業をやるなら、教育事業に加えて「受講者や現場から要望のある商品も一つ作ってみよう」となり、立ち上げました。

——途中でターニングポイントになった出来事はありますか。

いま主流になっているコンピュータ技術、マイコン技術を駆使した商品化へ方向転換したことです。

以前はリレー主体のリレーシーケンス制御の装置・機器が中心でしたが、半導体とソフトウェア技術を使い、より小型に、安全に、しかも低価格化の方向にシフトしました。時代の変遷に合わせた部分もありますが、現場で役に立つ形にするための転換でした。

——ものづくりで意識している点は、技術以外にもありますか。

デザインです。日本の技術は素晴らしいけれど、価値が伝わりにくいことがある。そう感じたのがきっかけで、74歳のときに京都芸術大学の写真コースに入り、デザインや芸術も学びました。

制御機器はどうしても箱になりがちですが、コストが上がらない範囲で工夫を凝らして、安らぎのある見せ方にもこだわりたいと思っています。

2人の中核体制。求めるのは「創造できる人材

——現在の組織体制はどうなっていますか。

役員としては私と、共同でやっている若手技術者の2人です。彼は34歳で、私は86歳です。2人だけでは回らないので、アルバイトや臨時の人材にも入ってもらいながら進めています。

——直面している課題は何でしょうか。

ズバリ人材です。特に、制御系が理解できて、コンピュータ技術に精通した人が必要です。ただプログラムができるだけではメーカーとして物足りません。

工夫する力、創造する力が必要なので、こうした面で努力できる人を探しています。白紙の状態でも構いません。素材の良い人を教育していきますから。

——日々の運営面では、どのように体制を整えていますか。

規模として、数万点の商品を扱うわけではありませんので、今は海外でいうレップ制度的な営業を関東圏と関西圏に配置しています。

その方たちに活躍してもらい、さらに充実させたいと考えています。いずれにしても、自社の核になるのは技術です。そこを厚くすることが最優先です。

シンプルイズベスト――止まらない現場をつくる設計思想

——今後、どのような会社にしていきたいですか。

業界を見ていると、高度化と複雑化が行き過ぎて、現場のオペレーターが困っている。さらに、トラブルが起きたときの改善・改修に時間がかかりすぎている状況です。そこを何とかしたいと思っています。

だから、装置はできるだけシンプル化したり、ユニット化して故障時にはプラグイン式で短時間で差し替えられるようにしたり、また、重要な回路や装置は二重化することも重要だと思っています。

トラブルを最小限に抑え、起きても短時間で復旧できる――その思想を、私たちの商品すべてに織り込みたいです。

——技術は最先端ほど良い、という考え方ではないのですね。

最先端技術を使いながらも、「世の中にあまりない分野」に寄りすぎると、本当に困ることが起こります。だから、できるだけ避けたい。どこにでもある部品をうまく組み合わせて装置や回路を作る工夫をします。

シンプルにすればコストも下がる。ただ、そのためには技術が必要です。そこが腕の見せどころだと思っています。

——売上目標についてもお聞かせください。

今年に入ってから大きな引き合いが3件ほど来ています。目標としては、今年は数千万円、来年は数億、3年後はその数倍というところを見込んでいます。

機械メーカーさんとタイアップできる形にもなってきており、私たちの開発思想を受け入れていただけている実感があります。数ヶ月のうちに、いまの引き合い案件をほぼ決定という形にしたいですね。

学び直しと写真が、毎日を前へ進める

——小野さんは「学び直し」の経験が豊富だと伺いました。

高校卒業後すぐに就職しましたが、働きながら夜間大学の工学部電子工学科に入りました。専門家として胸を張れる立場になりたかったからです。その後、60歳で大学・大学院にも行き、同じ大学で非常勤講師もしていました。まだ勉強したいという気持ちは、いまもあります。

——リフレッシュ方法や、仕事以外で力を入れていることは何ですか。

写真です。70歳を過ぎてから京都芸術大学で学んだこともあり、カメラが趣味です。2〜3年前には、スイスで標高が高く氷山が残る山に登ったり、南アフリカのサバンナで動物の写真を撮ったり、ギリシャでは数万トンの大型クルーズ船に乗って数泊しながら島めぐり体験もしました。

作品が美術館で展示されたこともあります。風景や“その場の空気”を切り取るのが好きですね。

——その行動力の源はどこにありますか。

人生を最大限楽しむことです。それから、人を裏切らない。裏切られても裏切らない、恨まない。もう一つは、お金は残さない。自分のためだけではなく、会社のため、人のためにも使い切るという考え方です。

そうしていると、毎日が本当に楽しい。だからこそ、現場が困らないための「シンプルで、短時間で復旧できる仕組み」を、これからも形にしていきたいと思っています。

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