未来へつなぐ里山の知恵――地域から世界へ広がるネイチャーポジティブの挑戦

特定非営利活動法人唐津Farm&Food 代表理事 濵口 のぞみ氏/副理事 小嶋 宏明氏

佐賀県唐津市を拠点に、環境教育と循環型経済の実践に取り組む特定非営利活動法人唐津Farm&Food。地域の自然資源を守りながら、次世代へ持続可能な社会の在り方を伝える活動を展開しています。副理事の小嶋宏明氏に、団体設立の背景や現在の取り組み、そして2030年に向けた展望について伺いました。

地域から始まる環境教育と循環型社会づくり

――現在の事業内容について教えてください。

当法人は、環境教育を軸に活動しています。SDGsやESD(EducationforSustainableDevelopment)の取り組みを進める学校や大学と連携し、先生方のサポートを行っています。ESDの拠点として活動しながら、2030年までの目標達成に向けた教育実践を後押ししています。

単に知識を伝えるのではなく、地域資源を活用した体験型の学びを重視している点が特徴です。子どもたちが自分たちの暮らしと環境問題を結びつけて考えられるよう、ワークショップや実践活動を行っています。

――理念や大切にしている想いについてお聞かせください。

私たちのミッションは「Think globally,act locally」です。もともとは「地域で活動する」という意味合いで掲げていましたが、現在はそこから一歩進め、地域での経験を「進化」させ、世界を変える力にしていきたいと考えています。

ここでいう「進化」は、単に進むのではなく「深く化ける」こと。地域の豊かな自然環境や生態系、伝統文化を守りながら、持続可能な社会を築いていく。そのために環境教育とサーキュラーエコノミー(循環型経済)を基盤とした活動を展開しています。

プレシャスプラスチックから広がった学びの輪

――環境教育の具体的な取り組みを教えてください。

代表的なプロジェクトが「プレシャスプラスチック」です。これはオランダ発のオープンソースプロジェクトで、プラスチック問題を地域から変えていこうという取り組みです。

設計図をダウンロードし、自分たちでリサイクル機械を製作できます。私たちも唐津市の補助金を活用してマシンを製作し、農業で出るプラスチック資材を再資源化し、再び農業資材として活用できないかという挑戦を始めました。

――そこから教育活動へと広がったのでしょうか。

はい。事務所が海の近くにあることもあり、ビーチクリーン活動に取り組む学校から声がかかりました。子どもたちにリサイクル体験をさせたいという依頼を受け、ワークショップを実施したのが大きな転機でした。

その学校の校長先生が他校にも紹介してくださり、徐々に活動が広がりました。現在では、ESD教育の一環として複数の学校と連携しています。

海洋プラスチック問題と国際的な連携

――海洋ごみ問題への関わりについても教えてください。

長崎県対馬に流れ着く海洋プラスチックごみの量を目の当たりにしたことが、大きなきっかけでした。毎年多額の費用をかけて回収しているにもかかわらず、次々と流れ着いてくる現実があります。

ビーチクリーンも大切ですが、根本的には海に出る前に発生を防ぐことが重要です。そのため、中国や韓国など海外との交流を通じて、発生抑制の方法を共に考えていきたいと考えています。

現在、「プレシャスプラスチック」は56カ国に広がっており、海外企業とのコラボレーションの話も進んでいます。海外からの寄付や問い合わせも増え、活動は唐津の枠を超えつつあります。

自然共生サイトとネイチャーポジティブへの挑戦

――最近力を入れている取り組みについて教えてください。

私たちが管理する横枕地区が、県内初の自然共生サイトに認定されました。ここは生態系と伝統文化が息づく草原と山が広がる地域で、日本の原風景ともいえる場所です。

自然と人の営みが調和した暮らしを守り、その価値を未来へつなぐことが私たちの役割だと考えています。

――ネイチャーポジティブの取り組みについても伺えますか。

世界では「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」という目標が掲げられ、2030年までに陸と海の30%を保全しようという動きが進んでいます。日本では自然共生サイトとして認定される形で広がっています。

ネイチャーポジティブは、生物多様性を回復させることで経済的な損失を防ぐという考え方でもあります。今後は企業とのマッチングや寄付を通じ、自然共生サイトに貢献できる仕組みづくりも進めていきたいと考えています。

単なるボランティア活動では持続が難しいため、自然共生サイト内で生産された農産物の販売など、経済的合理性も確立していきたいと考えています。

地域の暮らしが自然を守っていた

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

日本の里山という言葉は、日本独自の価値を持っています。かつては「田舎だから自然が残っている」と思っていましたが、地域の方々と関わる中で、人々の暮らしそのものが自然を守っていたのだと気づきました。

日本の美しい景観や豊かな自然、里山の知恵を次世代へつないでいきたい。そのために、地域から始まる取り組みを世界へと広げていきたいと考えています。

一人でも多くの方が、この日本の原風景の価値に目を向け、ともに未来を築いていけたら嬉しく思います。

Contact usお問い合わせ

    お問い合わせ内容
    氏名
    会社名

    ※会社・組織に属さない方は「個人」とお書きくだい

    役職

    ※会社・組織に属さない方は「一般」をお選びください

    メールアドレス
    電話番号
    どこでお知りになりましたか?
    お問い合わせ内容

    プライバシーポリシーに同意して内容を送信してください。