食材に向き合い、基本を積み重ねる――小川亭が守り続ける欧風料理のかたち
有限会社小川亭 西村氏
有限会社小川亭は、地域に根ざしたレストラン多くのお客様に料理を提供してきた飲食店です。国産食材へのこだわりや手間を惜しまない仕込み、そしてお客様に心地よく過ごしてもらうための接客――その一つひとつを積み重ねながら、変化する時代のなかでも飲食店としての価値を磨き続けています。本記事では、同店の西村氏に、独立までの歩みやスタッフの育成、これからの展望などについて伺いました。
料理人として培った経験を、自分の店で形に
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
当店は、飲食店としてレストランを営んでいます。もともと私はフレンチの世界で修業してきましたので、これまで学んだ技術や考え方を土台にしつつ、地域のお客様に親しんでいただける店づくりを意識してきました。料理そのものの質はもちろんですが、気軽に足を運んでいただける雰囲気や、「また来たい」と思っていただける居心地のよさも大切にしています。料理だけではなく、店全体で満足していただける場所でありたいと考えながら営業を続けています。
――独立するまでのご経験について、詳しくお聞かせください。
最初は、規模は小さいものの忙しいフレンチ料理店で働きました。まずは現場のスピード感や、限られた時間のなかで品質を保ちながら料理を出す力を身につけたかったからです。その後は、大量の仕込みが必要な店や宴会料理、パーティー料理など、規模の大きい現場も経験しました。
大人数分の料理を効率よく仕上げる現場では、段取りや準備、チームワークの重要性を学びました。また、大きな食材を扱う経験や、多様なお客様に対応する経験も積めたことで、料理人としての視野が広がったと感じています。
――独立を志した理由は何だったのでしょうか。
若いころから、自分の店を持ちたいという想いがあったんです。20代のころにはすでに独立を意識しており、「いつか自分の考える料理や自分のやり方で店を運営したい」と考えていました。
昔から、人に使われるだけではなく、自分で責任を持ってやってみたいという気持ちがありました。経営には、大変なこともありますが、自分の判断で方向性を決められる面白さがあります。勤めている立場では経験できないやりがいや苦労も含めて、一度は自分の力で挑戦したいと思いました。
妥協はせず、ていねいに――小川亭の料理哲学
――これまでのキャリアで影響を受けた出来事はありますか。
基礎を学んだ修業時代と、実践で鍛えられた東京時代――その両方が、今の私を形づくっています。
修業時代では、特にソースの基本をしっかり学ばせてもらった経験が、今の自分の料理の原点になっていると思います。当時は軽めのソースなどが流行していた時代でしたが、私はやはり、基本からきちんとつくる本格的なソースを身につけたいと思っていました。そこで学んだ技術は、今でも当店の味づくりに活きています。流行の技法だけではなく、長く通用する基礎を学べたことが、その後の自分を支えてくれました。
東京では、比較的重要なお客様向けの料理を任せてもらう機会があり、高級食材を使った料理や特別な席の対応など、多くの経験を積ませてもらいました。責任ある仕事を任されることで、技術だけでなく判断力や度胸も身についたと思います。限られた機会のなかで、どれだけ満足していただける料理を出せるかを考え続ける時間は、大きな財産になりました。
――お店として大切にしている理念やこだわりは何でしょうか。
一番大切にしているのは、食材へのこだわりです。国産のものを中心に選び、安心安全であることを前提にしています。
お客様にお出しする以上、何を食べても安心していただけることが大切です。見た目がよくても、素材に不安があっては意味がありません。お客様がご家族や大切な方と一緒に食事を楽しむ場だからこそ、信頼できる食材を使うことを大事にしています。
そしてもう一つのこだわりは、やはりソースです。自分で一からだしを取り、しっかりと仕込んでつくっています。昔ながらの基本に忠実なソースを大切にしていて、そこは手を抜きたくありません。
料理はメインの食材だけで完成するものではなく、ソースによって全体の味わいが決まると思っています。食材選びやソースづくりには時間も手間もかかりますが、そのひと手間が料理の奥行きにつながるものですので、今後も流行に左右されず、土台となる味を守り続けていきたいです。
――他店との差別化につながっているのはどのような点でしょうか。
派手さや奇抜さではなく、基本を崩さず、ていねいに料理をつくり続けているところだと思います。新しいことを取り入れるのも大切ですが、まずは「きちんとおいしいものを出す」という当たり前を守り続けることが、結果として他店との違いになると感じています。
人柄を見て採用し、惜しまず育てる
――現在の体制を教えてください。
現在は、アルバイトを含めて全員で5名の体制です。大きな会社ではありませんので、アルバイトを含めて私自身が面接をしています。
やはり一緒に働く以上、人柄はとても大切です。人間性がよさそうか、周囲と協力できそうか、気持ちよく挨拶ができるか――そうした点を見ながら採用しています。
小さな組織ほど、一人ひとりの存在が店全体の雰囲気に影響します。技術はあとから教えることができますが、人柄の部分は簡単には変わりません。だからこそ、経験や技術だけでなく、周囲との関係性まで含めて見ています。
――育成ではどのようなことを意識していますか。
教えずに抱え込むより、スキルや知識を共有して全体の力を上げるほうが、結果的に店のためになると考えています。できる限りどんどん教えて、早く成長してもらうのが理想です。調理も接客も、早く覚えてもらえれば現場全体のレベルが向上しますし、本人にとっても力になります。
独立していったスタッフもいますが、それはむしろ喜ばしいことです。ここで学んだ経験を活かして自分の道を進んでくれるのは、非常にうれしいですね。
変化に合わせて店のあり方を見直していく
――現在の課題は何でしょうか。
一番大きいのは、物価高です。食材価格が上がるなかで、どのように仕入れを組み立てていくかは非常に難しい問題です。品質を落とさず、価格とのバランスも取りながら営業していく必要があります。
また、この地域は車社会であるため、アルコール需要が都市部ほど強くありません。そうした地域の状況や世の中の変化に合わせて、柔軟に対応していくことが求められています。
――最後に、今後取り組んでいきたいことを教えてください。
今は、お客様の年齢層や地域性に合わせて、店の方向性を見直しているところです。若い方ばかりをターゲットにするよりも、年配のお客様にゆっくり過ごしていただける店づくりの方が合っているのではないかと感じており、量を少し抑えて質を高めたり、席数を減らして落ち着いた空間にしたりといった方向性も考えています。
ただ料理を出すだけではなく、食事の時間そのものを楽しんでいただける店にしていきたいため、地域のお客様に長く選ばれるには、時代に合わせた変化も必要だと感じています。