地元に愛される魚屋をつくる──ゼロから始めた道の駅経営と挑戦の軌跡

株式会社和星水産 共同代表 大西 和博氏

鳥取県・琴浦町の道の駅「琴の浦」で、鮮魚販売と飲食を軸に事業を展開する株式会社和星水産。設備も人手もない状態からスタートし、多くの来客で賑わう店舗へと成長してきました。本記事では、創業の経緯や経営への想い、今後の展望について、大西和博氏に伺いました。

地元に愛されることから始まる──港町・琴浦で続ける商いのかたち

――現在の事業内容について教えてください。

「道の駅 琴の浦」で、鮮魚の販売とフードコートでの食事提供をメインいます。いわゆる魚屋と飲食、この二つを軸にした形ですね。

――どのような思いで事業を展開されていますか。

やっぱりこの琴浦町って港町なので、昔から魚を食べる文化が根付いているんですよね。地域の人たちも個性が強くて、そういう土地柄の中で商売をする以上、「まずは地元に愛される企業であること」が一番大事だと思っています。

観光のお客さんももちろん来られますが、地元の方に受け入れてもらえないと長く続かない。その意識は常に持っていますね。実際に日々お店に立っていると、地元の方の反応がそのまま店の空気に出ると感じています。

「今日はいい魚が入ったな」とか、「この前のあれ美味しかったよ」とか、そういう何気ない会話が積み重なっていくことで、少しずつ信頼ができていく。その積み重ねが、今の形につながっているのかなと思います。

また、観光で来られた方が「また来たい」と思ってくれるかどうかも、結局はその場の空気や接客次第だと感じています。だからこそ、商品だけでなく人の温度も含めて、地域らしさを感じてもらえる場所でありたいですね。

異業種の経験と出会いが導いた決断──ゼロから踏み出した経営の第一歩

――起業に至ったきっかけを教えてください。

もともと大学時代から起業したい気持ちはありました。ただ、当時はバブル崩壊の時期で、なかなか動き出せなかったんです。

一度は町役場に就職して、その後もいろいろな仕事を経験しました。何が求められているのかをずっと考えながら過ごしていた中で、昔アルバイトをしていた漁協の経験が頭にあったんですよね。

そこで今の共同代表と出会って、「魚で何かできないか」と話がまとまりました。それが経営としてのスタートです。

――創業時の状況はいかがでしたか。

正直、かなり慌ただしかったです。もともとは卸売をやろうとしていたんですが、たまたま道の駅の鮮魚店が撤退することになって、行政から声がかかりました。

ただ、設備も何もない状態で、冷蔵庫すらなかった。コロナ禍での創業だったこともあって、いろんなところにお願いして機材を譲ってもらいながら、なんとか形にしていきました。あの時はとにかく必死でしたね。

限られた時間の中で「やるしかない」という状況だったので、迷っている余裕もなかったです。気づいたらオープン日が決まっていて、そこに向けて突き進むしかなかった。そのスピード感の中で、仲間と一緒に形をつくっていった感覚は、今振り返っても強く残っています。

振り返ると、不安がなかったわけではないですが、その不安よりも「どうにかしてやろう」という気持ちのほうが強かった気がします。環境に背中を押される形で踏み出した一歩でしたが、それが結果的に今につながっています。

「任せる」と「活気」でつくる現場──若い組織を動かすコミュニケーション

――組織づくりで大切にしていることは何ですか。

特別なことをしているわけではないですが、まずは挨拶ですね。そこができていないと何も始まらない。

あとは、あまり細かく管理しすぎないこと。基本的にはやりたいようにやってもらって、行き詰まった時に声をかけるようにしています。

――社員との関係性についてはいかがでしょうか。

若いメンバーが多いので、仕事以外の話も大事にしています。家庭のことだったり、日常のことだったり、そういう会話の中で距離が縮まることも多いですね。

魚屋って本来は元気なイメージがあると思うんですけど、今は静かな店も多いんです。だからこそ、うちは活気を大事にしています。元気に声を出して、お客さんを迎える。その雰囲気が店全体を良くしていくと思っています。

また、仕事ができるかどうかよりも、まずは元気があるかどうかを重視しています。声を出すことで自然とやる気が出てくるし、その空気に周りも引っ張られていく。そういう連鎖が生まれる環境をつくりたいと考えています。

実際に、最初は控えめだったメンバーが少しずつ声を出すようになっていく変化を見ると、環境の力は大きいと感じます。個人を変えるというより、空気で引き上げていくイメージに近いかもしれません。

口コミから広がる手応え──10店舗展開に向けた次の挑戦

――今後の展望について教えてください。

今、食堂のほうがありがたいことに人気になっていて、特に情報発信をしていないんですが、お客さんがSNSで広めてくれているんです。

その流れもあって、まずはこの食堂を中国地方に広げていきたいと考えています。10店舗くらいまで展開できたらいいなという計画ですね。

――今後の課題についてはどう考えていますか。

一番は人材の確保です。どの会社も同じだと思いますが、やっぱり人がいないと回らない。

あとは加工場の整備ですね。販売だけでなく加工も強化していく必要があるので、その体制づくりはこれから取り組んでいきたい部分です。

今はありがたいことにお客様の声で広がっている状態ですが、それを継続していくためには、仕組みとしてしっかり整えていく必要があると感じています。店舗を増やすだけではなく、一つひとつの質を落とさないこと。そのバランスをどう取っていくかが、これからの大きなテーマになりそうです。

同時に、今の良さをそのまま別の場所でも再現できるかという難しさも感じています。人と空気で成り立っている部分が大きいからこそ、それをどう広げていくかがこれからの挑戦ですね。

経営の支えは家族にある──働き方が変わって見えた大切な軸

――プライベートやリフレッシュ方法について教えてください。

昔は野球やゴルフが好きで、かなり動いていました。ただ、今はほとんどやっていません。お酒も以前ほど飲まなくなりました。

今はどちらかというと、家族と過ごす時間を大切にしています。経営をしていると会社のことばかり考えがちですが、今の自分があるのは家族の支えがあってこそだと感じているんです。

だからこそ、自分の時間というよりは家族との時間を優先するようになりました。仕事も大事ですが、それを支えてくれる存在を大切にすることが、結果的にいい経営につながっていると思っています。

サラリーマン時代とは違って、今は自分の判断がそのまま会社に影響します。その責任の重さを感じる場面も多いですが、そういう時こそ家族の存在が支えになっている。そう思えるようになったことも、自分の中では大きな変化だと感じています。

経営という立場になって初めて見える景色も多いですが、その中で何を大切にするかを考えたとき、やはり最後に残るのは家族なんだと、今は自然と思えるようになっています。

これからも、家族への感謝を忘れずに、自分らしいバランスを大切にしながら、仕事にも向き合っていきたいです。

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