食を起点に社会価値を創る――GROW UPの挑戦
株式会社GROW UP 代表取締役 津村茂之氏
株式会社GROW UPは、関西を中心にケータリング、お弁当、飲食、スイーツに関わる事業を展開してきた会社です。もともとは「面白そうだからやってみる」という軽やかな気持ちから始まった事業でしたが、事業拡大やコロナ禍による大きな変化を経験する中で、会社のあり方や社会に対する価値の出し方を見つめ直してきました。現在は、目の前のお客様一人ひとりに喜んでもらうことを大切にしながら、飲食の枠を超え、福祉や農業とも掛け合わせた新たな挑戦にも取り組んでいます。今回は津村茂之氏に、事業の歩みや大切にしている考え方、組織づくり、今後の展望について伺いました。
喜びをつなぐ食のかたち
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
現在は、関西でケータリング、お弁当、飲食・スイーツの事業を主に展開しています。
ケータリング事業をメインに、わらびもち専門店「とろり天使のわらびもち」の運営、シュークリーム専門店「5/5 gobun no go」を運営をしております。
――大切にしている理念や考え方を教えてください。
目の前のお客様一人ひとりに喜んでもらうことです。学生時代に飲食店でアルバイトしていたとき、アルバイト先の店長から「一燈照隅」という言葉を教えていただきました。「自分のお店や自分の料理を喜んでくれた人が、その喜びをまた誰かに伝えていく。そうした積み重ねが世の中をより良くしていくのではないか――その言葉の意味に強い衝撃を受け、仕事とはそういう気持ちで向き合うものだと考えるようになりました。
――事業の強みはどこにありますか。
型にとらわれない提案にあると考えています。弊社ではケータリング事業を行っておりますが、予算や人数、イベントの内容に応じて、どんな料理や見せ方がふさわしいかを考え、お客さまの事情に合わせて提案していきます。例えば、若い方が多い場と年配の方が多い場では求められるものは異なりますし、男女によっても違います。決まった型にはめるのではなく、その場ごとに最適な形をつくることを大切にしています。
急成長と転機を越えた決断
――経営者になられた経緯を教えてください。
もともと私は商社で働いていましたが、友人と料理を作って人に提供するようなことを遊びの延長のようにしていました。ある時、たまたま来られた経営者の方から「これを事業にしたら面白いのでは」と声をかけていただいたことがきっかけで、友人と共に立ち上げました。最初から社会的な使命を強く掲げて始めたわけではなく、「面白そうだからやってみよう」という気持ちが出発点でした。2018年ごろにスタートし、依頼が増えたことで2019年9月に法人化しました。その後、会社員を辞めた仲間たちと本格的に拡大を目指しましたが、コロナ禍で一気に仕事がなくなりました。ケータリングも店舗も厳しくなる中で、キッチンカーを始めました。ある時、そのキッチンカーを出店していた場所の近くで、オーナーを募集している空き店舗があり、自分たちもやることがありませんでしたので、知人からお金を集めて始めたのが「天使のわらびもち」でした。始めてみると思った以上に集客ができました。「FC展開してみたら?」との声もいただき「とろり天使のわらびもち」に名称を変更し、2021年2月にFC展開をスタート。すると1年後には一気に100店舗、1年半後には190店舗まで拡大しました。
――もの凄い急成長ですね。その後、会社はどのように大きくなっていったのでしょうか?
まずわらび餅の前に、タピオカのブームがあり、一気に衰退していった姿を見ていたので、「いつかわらび餅も同じようになるだろう」と私たちは想定していました。そこで「わらび餅に代わるものはないか?」と見つけたのが、5/5のシュークリームでした。オーナーさんも、このブランドを広げて行くことに苦労されており、「一緒に運営しませんか?」と声をかけていただきました。しかし、取り組んでみて、5/5のシュークリームは誰でも作れるものではなく、パティシエが必要で、多店舗展開をするにはハードルが高いことに気づきました。そこで、アルバイトさんでも再現性できるものはないか、と考えて新たに始めたのがスコーンの専門店「THE BUTTER&SCONE」でした。
――順調にも見えますが、ご苦労もありましたか?
色々なものに手を出しすぎてしまった結果、各事業の細部に目を行き届かせることができなくなりました。赤字店舗がどんどん増え初め、スタッフの離職なども相次ぎ、一気に会社が傾きかけました。創業時のメンバーも自分以外は全員辞めてしまいました。
「面白そう」とスタートした会社ですが、ある程度会社が復活したタイミングで、改めてどういう会社にしていきたいかを見つめ直し、社会に対して価値を出すとか、意味のあるものにしていきたいなと思い、2025年の3月から方針をいろいろ変えてきて、今に至るというところです。
伝える責任が組織を変える
――組織運営で意識していることを教えてください。
今はスタッフに直接伝えることを大事にしています。以前は、マネージャーを通じて伝える体制だったものの、現場の声が上まで届きにくくなったり、認識のずれが起きたりすることがありました。そこで、今は自ら課題や方針を伝え、マネージャーがその意図をフォローする形に変えています。その背景には、スタッフの離職が起きたことにあります。個人の問題ではなく仕組みの問題だったと捉えていて、体制・仕組みそのものを変える必要があると。やはり厳しさとフォローの両方が必要であり、その役割分担を明確にすることで、組織としての伝達や関係性を整えようと今は考えています。
掛け合わせで生まれる新しい価値
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
まず飲食事業では、関西で培ってきたケータリングを名古屋でも展開し、別の地域でも形にしていきたいと思っています。うまくいけば関東まで伸ばしていきたいです。
また、飲食×福祉×農業の掛け合わせで何か新しいものを作れないかと考えています。
具体的にまずは、2026年から「防災備蓄おにぎり」の販売を開始しております。「防災備蓄おにぎり」は飲食で発生するフードロスを何かの形に変えたいと思って取り組み始めた商品で、まだフードロスを実際の備蓄食にできるところまで実証はできていませんが、まずは販売をスタートし、将来的には、飲食で残った米を使用し、就労支援事業で商品化していきたいと考えています。それが地域の米を使って取り組むことができれば、飲食x福祉x農業の新なビジネスになるのではと考えています。
ぜひ私たちに興味を持って一緒に取り組んでくれる方がいらっしゃれば嬉しいなと思っています。
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
ありがたいことに、私は小学生から大学時代まで友達が多くいます。友達としがらみなく、喋れる時間がリフレッシュになっています。歳をとると、人から指摘されることが少なくなるので、ああしたら、こうしたらと言ってくれる存在はありがたいと、最近は身にしみて感じることが多いです。