アスリートの未来を拓く教育──ネクストキャリアを支える仕組みづくり

株式会社A.B.United 代表取締役 中田 仁之 氏

スポーツに人生をかけてきたアスリートが、引退後も社会で活躍できる環境をつくる──。そんな思いから、アスリートに特化したビジネススクールの運営や就職・起業支援を行っているのが株式会社A.B.Unitedです。スポーツで培った力を社会で生かす教育の場を提供し、アスリートの可能性を広げる取り組みを進めています。本記事では、事業の特徴や創業の背景、組織づくり、今後の展望について、中田仁之氏に伺いました。

アスリートの教育から就職・起業までを支える事業

――現在の事業内容について教えてください。

私たちは、アスリートに特化したビジネススクールを運営しています。対象は現役のプロ選手や体育会系の学生、働きながら競技を続けている方、引退した方などです。競技に打ち込んできたアスリートが社会に出る前に、ビジネスの基本を学べる環境を用意しています。

アスリートは引退後、「就職するか、自分で事業を始めるか」という選択に直面するケースが多いです。就職を希望する場合は、アスリートを採用したい企業に弊社の会員として参加していただき、人材を紹介しています。一方で起業を目指す人には、会社設立から事業が軌道に乗るまで伴走支援を行っています。私は中小企業診断士でもあるため、事業計画の作成など創業支援も含めてサポートしています。教育から就職・起業までを一貫して支えている点が私たちの特徴です。

――御社の強みはどこにあるとお考えですか。

アスリートを企業に紹介する人材サービスは数多くありますが、私たちは紹介だけで終わらない点が大きな違いです。アスリートの就職状況を調べると、就職後半年から一年ほどで辞めてしまうケースが少なくないことが分かりました。理由を詳しく聞くと、社会の仕組みやビジネスの基本を理解していないことが背景にある場合が多かったのです。

そこで私たちは、引退前から社会やビジネスの基礎を学ぶ機会を提供しています。スポーツで培った非認知能力に気づき、それを社会でどう生かすかを理解することで、社会に出たときの視野は大きく変わります。こうした教育を先に行うことが、私たちの大きな差別化ポイントだと考えています。

一人の若者との出会いが生んだ事業

――この事業を始めたきっかけを教えてください。

きっかけは、一人の若いアスリートとの出会いでした。野球で甲子園に出場し、スポーツ推薦で大学へ進んだ学生が、肩を壊して競技を続けられなくなったのです。その結果、大学を中退し、将来が見えないまま私のところに紹介されてきました。

彼は「自分の人生のピークは20歳だ」と話していました。私はそれを聞いて、そんなことはないと伝え、しばらく会社で一緒に働きながらビジネスのことを教えました。学校の勉強は得意ではなかったようですが、ビジネスの話には強い興味を持ち、どんどん吸収していきました。

その後、ある企業に紹介したところすぐに内定が決まり、現在もその会社で働いています。彼から「自分のように未来が見えなくなっているアスリートは多い。みんなを救える仕組みを作ってほしい」と言われたことが、この事業の原点です。その言葉をきっかけにアスリートの就職状況を調べ、多くの話を聞く中で、教育の必要性を強く感じました。

――スクールではどのような学びが行われているのでしょうか。

授業はオンラインでの集合研修形式で行っています。スクールには約30科目の講座があり、受講生が興味や目的に合わせて選択できます。ビジネスマナーや営業スキルを学ぶ人もいれば、財務や事業計画など起業に関する講座を受講する人もいます。講師と受講生が少人数で学ぶスタイルで、それぞれの進路に合わせて学び方を選べるのが特徴です。

すべてをさらけ出す組織づくり

――組織づくりや社内コミュニケーションで大切にしていることは何ですか。

私が大事にしているのは、良いことも悪いこともすべてさらけ出すという姿勢です。経営者である私自身が包み隠さず話すことで、メンバーも遠慮なく意見を伝えられる環境になると考えています。会社員として働いていたころ、組織では上に情報が上がるにつれて都合の悪い話が削られていく場面を何度も見てきました。それでは正しい判断ができません。だからこそ、言いにくいことほど早く共有する関係性を大切にしています。

現在、従業員は3名ですが、業務委託のメンバーも含めると多くの人が関わっています。元オリンピック出場選手や海外でプレーしている現役アスリートなど、多様な背景を持つメンバーがチームに参加しています。

――どのような人と働きたいとお考えですか。

自分の志を持っている人と働きたいですね。将来こうなりたい、そのためにここで働きたいという思いを持っている人です。同じ場所で長く働きたいという人よりも、自分の目標に向かって挑戦し続ける人に魅力を感じます。

アスリートに対しても同じで、私は人の志を応援することが好きなんです。その目標を実現できるよう背中を押す存在でありたいと思っています。また、アスリートにとってのメンターのような存在として、第三の場所で相談できる存在であり続けたいと思っています。

アスリート支援を世界へ広げる未来

――今後の展望について教えてください。

私たちは5年後に上場を目指しています。そのためにも、現在のアスリート支援の仕組みをさらに広げていきたいと考えています。すでに海外から受講しているアスリートも増えているので、この仕組みを海外にも展開していきたいと思っています。

同じような課題はスポーツだけに限らないとも感じています。例えば、文化芸術やエンターテインメントの世界でも、才能があっても生活が難しい人は多くいます。そうした人たちにも教育の機会を提供し、企業とのつながりをつくる仕組みを広げていきたいと考えています。

実際に、アスリートの受講生は年々増えており、年間で100人ほどのペースで増加しています。今年でスクールを始めて6年になりますが、受講者はのべ600人に近づいています。一方で、今後の課題として感じているのは、アスリートを採用したい企業の会員をさらに増やしていくことです。学びの場を広げるだけでなく、活躍できる場をしっかり用意することが重要だと考えています。

アスリートが社会に出たあとも能力を発揮できる環境をつくること。そのための仕組みをさらに整えながら、教育と企業の橋渡し役としての役割を広げていきたいと思っています。

野球指導が生むリフレッシュの時間

――お仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

私は大阪で女子中学生の硬式野球チームの監督をしています。クラブチームなので、週末の土日や平日の夜に指導へ行くことが多く、正直休みはほとんどありません。

ただ、野球に向き合う時間は仕事のことを完全に忘れられる貴重な時間です。体はかなり疲れますが、頭の中が切り替わり良いリフレッシュになっています。

経営者はどうしても四六時中仕事のことを考えてしまうものですが、そうした時間があることはありがたいと感じています。

これからも野球を通して気持ちを切り替えながら、仕事にも向き合っていきたいと思っています。

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