製造現場を人財育成で支える――エヌエス・テックが描く持続可能なものづくり支援
エヌエス・テック株式会社 取締役 高橋 広也氏
製造業の現場を支える人材サービス企業として、全国に拠点を展開するエヌエス・テック株式会社。同社は派遣事業を軸に、単なる労働力提供にとどまらず、人材の育成や雇用の安定にも力を入れています。近年では設備保全分野への進出や研修体制の強化など、新たな取り組みを積極的に推進しています。本記事では、取締役の高橋広也氏に、事業の特徴や経営の考え方、今後の展望について伺いました。
製造現場に寄り添う人材サービスのかたち
――現在の事業内容について教えてください。
当社の主力事業は派遣事業であり、売上のほとんどを占めています。取引先は主に製造メーカーで、派遣社員はものづくりの現場、特に製造部門で業務に従事しています。いわゆるブルーカラー領域を中心とした人材サービスが特徴です。
近年は新たな取り組みとして、設備保全分野への派遣も開始しました。特徴的なのは、経験者を外部から採用するのではなく、自社の派遣社員の中から希望者を募り、研修によって育成する点です。
名古屋にある東海トレーニングセンターでは、約2か月間の研修を通じて設備保全の国家資格取得レベルのスキルを身につけ、その後、取引先の保全部門へ配属しています。さらに東北にも新たなトレーニングセンターを開設し、育成体制の拡充を進めています。
――他社にはない強みはどのような点にありますか。
本社含む、全国24拠点を持ち、必要な場所に必要な労働力を提供できる点が強みです。一方で、派遣業に対して「繁忙期だけ雇用し、閑散期には契約を終了する」というイメージを持たれがちですが、当社では雇用の維持を重視しています。取引が終了しても雇用を継続し、次の配属先へとつなぐことで、働く人の安心を確保しています。
また、地方の製造拠点に人材を送り込む際には、住居も会社側で用意し、安心して働ける環境を整備しています。こうした取り組みにより、派遣社員の定着率も向上しており、現在では無期雇用の割合が約7割にまで増加しています。
「人材は財産」――理念に込められた想い
――企業理念について教えてください。
当社の社是は「信頼と創造力、真実を求め社会に貢献」です。社会や顧客、社員からの信頼を第一に考え、創造力を持って革新を続けながら、最終的には社会に貢献することを目的としています。
特に印象的なのは、「人材の“材”は材料ではなく財産の“財”である」という考え方です。人を単なる労働力として扱うのではなく、価値ある存在として捉える姿勢が、当社の事業の根幹にあります。
――ビジョンについてはいかがでしょうか。
当社は日本のものづくりに貢献し続けることをビジョンに掲げています。単に製品を生み出すだけでなく、「人を育てること」も重要な役割と捉えています。研修やスキル習得を通じて個々の価値を高め、それが結果として日本の製造業全体の発展につながるという考えです。
変化の激しい時代においても、ものづくりの価値は変わらない。その中で人材育成を通じて産業を支える存在であり続けることを目指しています。
変化に備える経営判断と挑戦
――経営判断の軸について教えてください。
景気の変動などにより厳しい判断を迫られる場面でも、常に「その後どう立て直すか」を考えることを重視しています。事業縮小や拠点閉鎖といった判断が必要な場合でも、回復に向けた道筋を描いた上で意思決定を行うことが重要だと考えています。
また、創業から長年にわたり製造現場を支えてきた当社ですが、今後の存続と成長のためには新たな領域への挑戦が不可欠です。設備保全分野への展開に加え、ITエンジニアの育成プログラムも開始しており、人材サービスの枠を広げています。これらはすべてトライアンドエラーを前提とした挑戦であり、成功だけでなく試行錯誤の積み重ねが重要だと捉えています。
さらに、今後は経営層だけでなく管理職層からの企画提案も取り入れ、組織全体で新規事業を創出していく方針です。
対話と理解を重視した組織運営
――社内コミュニケーションで大切にしていることは何ですか。
オンラインでのやり取りが増えた時代においても、直接会うことの重要性を重視しています。各拠点を訪問し、社員や顧客と対面でコミュニケーションを取ることで、信頼関係を築いています。
また、会社からの一方的な指示ではなく、「なぜそれを行うのか」という目的や背景を丁寧に伝え、社員が納得した上で行動できるようにすることを心がけています。社員の声にも耳を傾け、双方向のコミュニケーションを大切にしています。
――どのような人材を求めていますか。
自分の仕事だけにとどまらず、周囲との関係性を理解しながら行動できる人材を求めています。自分の業務が組織全体にどのような影響を与えるのかを理解し、その目的に向かって主体的に動けることが重要です。
単に与えられた業務をこなすのではなく、その先にある会社の成長や成果を意識して行動できる人が、当社にとって理想の人材像です。
人材育成と採用力強化への取り組み
――今後の展望について教えてください。
トレーニングセンターでの取り組みは大きな柱の一つです。設備保全の研修については、愛知県から職業訓練校としての認定を取得しており、公的な裏付けのある教育体制として強化を進めています。今後は東北拠点でも同様の認定取得を目指しています。
また、未経験者でも製造業で活躍できるよう、基礎から学べる研修体制を整えています。製造業に対する「きつい・汚い」といったイメージを払拭し、安心して働ける環境であることを発信していく考えです。
さらに、自動車や半導体など特定分野に特化した研修カリキュラムの開発も進めており、取引先のニーズに応じた人材育成を行っています。
――現在の課題について教えてください。
最大の課題は採用です。人口減少の影響により、人材の確保は年々難しくなっており、採用力の低下も実感しています。単に求人を出すだけでは人が集まらない時代において、企業としての魅力向上が不可欠です。
そのため、働きやすい環境づくりや福利厚生の充実、コンプライアンスの徹底などを進めています。具体的には健康促進施策や各種休暇制度の整備などを行い、社員が安心して働ける環境を整備しています。また、外部への情報発信も強化し、企業価値の向上を図っています。
夢と行動が未来を切り拓く
――影響を受けた考え方について教えてください。
「人生すべからく夢なくしては叶いません」という言葉に強く影響を受けています。周囲から困難だと言われるような挑戦であっても、志を持ち続けることで実現に近づくという考え方です。
また、「走りながら考える」という姿勢も大切にしています。迷って立ち止まるよりも、まず行動し、その中で改善していく。失敗を恐れるよりも、挑戦しなかった後悔を避けたいという想いが、意思決定の原動力となっています。