AIと物理セキュリティの融合で社会課題に挑む――ユニファ・テックが描く100年ビジョン
株式会社ユニファ・テック 代表取締役CEO兼CTO 神﨑 康治氏
セキュリティ領域における課題は、サイバーと物理の両面にまたがりながら複雑化しています。株式会社ユニファ・テックは、その課題に対し「セキュアブース」という独自のソリューションを軸に、新たな価値提供を進めている企業です。本記事では、代表の神﨑康治氏に、事業の着想から現在の取り組み、そして100年先を見据えた構想まで詳しく伺いました。
目次
見えない脅威に「物理」で向き合う新発想
――現在の事業内容と、その特徴について教えてください。
当社はセキュリティ性の高い「ブース型空間」を提供することで、情報漏洩リスクを物理的に防ぐソリューションを展開しています。従来のセキュリティ対策はサイバー領域が中心でしたが、実際には人が物理的に情報を持ち出すことで漏洩が起きるケースも多く、そこに着目しました。
このブースは、必要な人だけが入室し、必要最小限の情報のみを扱う「ニードトゥノー原則」に基づいて設計されています。情報を分離し、アクセスできる範囲を限定することで、構造的に漏洩を防ぐ仕組みです。現金輸送における金庫のように、「守るべきものを限定し、物理的に守る」という考え方に近いですね。
――この事業を思いついたきっかけは何だったのでしょうか。
大きなきっかけは、銀行システムに携わっていた頃の体験です。夜中にシステム障害が発生し、緊急対応のため出社しなければならない状況がありました。しかし、明け方でタクシーがつかまらず、現場に行けない。高いセキュリティ環境に「出社しないとアクセスできない」という制約に疑問を持ったんです。
そこで、セキュリティ環境そのものをブース化し、どこでも再現できるようにすればいいのではないかと考えました。これが現在の事業の原点です。
エンジニアから起業へ――環境が変えた意思決定
――経営の道に進まれた背景を教えてください。
もともとは起業志向ではなく、いわゆる「一般的なキャリア」を歩むつもりでした。ただ、2018年に経済産業省の起業家育成プログラムに参加したことで、大きく意識が変わりました。周囲には「世界を変える」と本気で語る人たちがいて、最初は違和感がありましたが、次第に自分も影響を受けていきました。
結果的に、気づけば自分が最も熱量を持っている状態になり、起業に踏み出しました。人や環境が意思決定に与える影響は非常に大きいと感じています。
――独立に至るまでの経緯もユニークだったと伺いました。
実は、前職時代に自ら制度を作り、その制度を使って事業をスピンアウトしました。最初は社内で認められなかった事業でしたが、制度そのものを設計し、そこに自分で応募する形で外に持ち出したんです。
結果として、自分のやりたいことを実現できる環境を自ら作ることができました。好きなことを軸にキャリアを築けている点は、非常に幸運だったと思います。
セキュリティの本質は人間」。強みと市場の変化
――御社の強みや、業界における優位性はどこにありますか。
最大の強みは、サイバーと物理の両面からセキュリティを捉えている点です。サイバー対策だけでは、人が関与する限り完全な防御はできません。スマートフォンによる盗撮や内部不正など、人間が関わるリスクは必ず残ります。
そのため、物理的に制御された環境を組み合わせることで、より実効性の高いセキュリティを実現しています。
――市場のニーズについてはどのように感じていますか。
近年はランサムウェアや情報漏洩事件の増加により、セキュリティ意識が急速に高まっています。特にサプライチェーン全体での対策が求められるようになり、中小企業にも対応が必要になってきています。
これまでセキュリティを後回しにしていた企業も、対応せざるを得ない状況になりつつあり、大きな変化の波が来ていると感じています。
AI時代の組織づくりと人材戦略
――今後の組織づくりについて教えてください。
現在は組織体制を一度リセットし、「AIネイティブな組織」を構築しようとしています。AIの進化によって、人間が担っていた業務の多くが代替されつつあり、人材の価値も大きく変わっています。
特に重要なのは、「AIを使いこなせる人材」です。知識やノウハウはAIによって補完できるため、それを実行に移す力や、学び続ける姿勢がより重要になります。
――どのような人材を求めていますか。
「違和感を持ち、考え、行動し、学ぶ」というサイクルを回せる人材です。これは子どもが自然に行っている行動でもありますが、大人になるにつれて失われがちです。
その意味で、学生起業家のような存在に注目しています。素直さと行動力を持ち、AIを活用して急速に成長できる人材です。インターンとして関わってもらいながら、思考やスキルを身につけてもらい、その後は社会で活躍していく――そうした循環を作ろうとしています。
100年先を見据えた事業構想
――今後の展望について教えてください。
「令和100年計画」という長期ビジョンを描いています。これは、自分の子どもが生きる100年後まで社会に責任を持つという考えから生まれたものです。
前半では、人口減少や労働力不足といった課題に対し、AIやテクノロジーを活用して解決していきます。セキュアブースを通じて働き手を増やし、そのデータをAIに学習させることで、最終的には人間の労働そのものを減らしていく構想です。
――非常に壮大なビジョンですね。
最終的には、人が「働くこと」から解放され、本来の意味で人生を楽しめる社会を目指しています。そのために、まずは自分たちの事業で市場を作り、さらに自らその市場を壊すことで次のステージへ進む戦略を取っています。
競合が増える前に、自分たちで進化し続けることが重要だと考えています。
――現在の課題は何でしょうか。
最大の課題は、人材です。AI時代において本当に価値を発揮できる人材をどう見極め、どう集めるか。ここを誤ると、会社の存続にも関わります。
逆に言えば、ここで正しい選択ができれば、大きく成長できる可能性もあると考えています。
社会と向き合い続けるために
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
これからの時代は、AIとどう向き合うかで大きく差がつきます。重要なのは、AIに使われる側ではなく、使いこなす側になることです。そのためには、自分で考え、行動し、学び続ける姿勢が欠かせません。
私自身もまだ挑戦の途中ですが、技術と人間の可能性を信じながら、社会に価値を提供し続けていきたいと考えています。