沖縄から広げる「意味のあるものづくり」。自然、伝統、手仕事を未来へつなぐ挑戦
株式会社OLIFE 代表取締役 大坪 育美 氏
アパレルの小売販売とOEMなどを手がける製造業を展開する大坪氏。沖縄を拠点に、自社ブランドの展開と、ものづくりの現場に関わる事業を進めています。大切にしているのは、自然や伝統文化、手仕事の価値を感じてもらえる「意味のあるものづくり」。日本の技術や地域に根づく文化を見つめ直しながら、新しい形で次につないでいく大坪氏に事業の今と、将来のビジョンについて伺いました。
目次
自然と伝統を、今のものづくりにつなげたい
——現在の事業内容について教えてください。
会社の事業内容としては、アパレルの小売販売と、OEMなどを手がける製造業を展開しています。製造の部分では、デザイン業務を行っていて、パターンからデザイン、サンプル縫製、量産に向けた縫製まで、製品づくりを一貫して担っています。
小売では、「EQUANCE(イクゥアンス)」という自社ブランドを展開していて、沖縄で自社店舗での販売や卸販売を行っています。
——どのような思いでブランドづくりをされていますか。
自然や伝統文化を感じてもらえる商品のラインナップやプロダクトをつくることを大事にしています。沖縄を拠点にしているので、沖縄の自然なものを使った商品づくりや、伝統工芸などを取り入れながら、現代のファッションや製品へと昇華させることで、日々の暮らしの中で身近に感じてもらえるような展開を目指しています。
技術が進み便利な世の中になる半面、自分たちのルーツや歴史、受け継がれてきた文化を見つめ直したものづくりをしたいという思いが強くあります。
時代の変化と共に、貴重な文化や手仕事が途絶えようとしている今、そこに眠る価値を現代の形に変えて届けていきたいと考えています。
——会社として大切にしている理念やビジョンは何ですか。
「意味のあるものづくりをしていきたい」という考えです。ただ着るための服ではなく、どういう人たちが、どういう過程で、どんな思いを持ってつくっているのかまで含めて伝えていきたいと思っています。
ものづくりの背景を分かち合うことで、作り手の想いを買い手が受け取り、一時的な消費に終わらない、その価値が未来へと受け継がれていく。作り手が経済的にも精神的にも豊かであり続け、それを受け取る買い手の人生もまた彩られていく。そんな、循環するものづくりを目指しています。
コロナ禍をきっかけに、原点に立ち戻る
——これまでのキャリアについて教えてください。
私は関西出身で、兵庫県の田舎で生まれ育ちました。その後、大阪や東京で学び、アパレル企業でデザイナーとして働いてきました。デザイナー時代には、国内工場を見たり、生産の現場に関わったりしながら、ものづくりに携わってきました。
当時は海外生産も多く、海外特有の手仕事の魅力に触れる一方で、日本の技術力の素晴らしさを再確認すると同時に、その技術の衰退が加速している現実に強い危機感を抱きました。
背景を深掘りしていくと、大量生産・大量廃棄や労働問題など、環境や人に負荷をかける生産体制が常態化しているという、アパレル産業が抱える構造的な課題に行き当たりました。こうした現状を目の当たりにし、ものづくりの在り方を根本から見直したいという思いがより一層強くなりました。
その後、コロナ禍に突入したことで自分自身と向き合う時間が増え、「本質的なものづくり」を求めて都会を離れ、自然豊かな沖縄に移住し起業することを決意しました。
——沖縄に移住して、起業しようと思ったきっかけは何ですか。
起業したいという思いは、20代の頃からあったものの、まだまだ漠然としていました。行動につながったきっかけは、やはりコロナ禍だったと思います。
コロナ渦で生きていることは当たり前ではないんだと強く感じました。そのときに、やりたいことがあるのに何もせず終わってしまったら後悔すると思ったんです。
沖縄への移住も、もし無理だったら帰ればいいだけだと思いました。人生は一度きりなので、楽しみながらやりたいことをやってみようと考えて動き出したという経緯があります。
一人で始めたからこそ、連携しながら少しずつ広げていく
——現在の組織体制について教えてください。
今は一人会社という形で経営しています。最初から大きな規模で一気に始めるのは難しかったので、まずは一人で立ち上げました。
現在は連携先の事業者や外部のデザイナー、縫製アルバイトが増え、現在拡大の準備をしているところです。
——人との関わりの中で進めている取り組みはありますか。
2024年から連携先の工場と縫製の技術を残すための取り組みを行いました。シングルマザーやその他縫製に興味のあるかたを集め縫製カリキュラムを学び縫えるようになってもらい、その先で工場への就職につなげる取り組みです。
単なる技術習得にとどまらず、手に職を持つことで得られる経済的な自立と、地域の貴重な縫製技術を守り抜くことの両立を目指しています。
つくり過ぎない仕組みと、見える工房を形にするために
——事業を進める中で印象的だったことは何ですか。
大量生産・大量廃棄が当たり前となっている業界の構造に対し、『ただ作るだけでは無駄になってしまう』という強い危機感を抱いたのです。
今はSDGsという言葉が普及していますが、環境負荷や作り手の労働環境を考えたとき、今こそ生産体制そのものを抜本的に変える必要があると感じています。
だからこそ弊社では、必要なものを必要な分だけ届ける『受注生産』などの仕組みを取り入れ、作りすぎない、無駄を出さないものづくりを追求しています。
——今後、どのようなことに挑戦していきたいですか。
今後のビジョンとして、ものづくりの工程を可視化した『ファクトリー型の拠点』をつくりたいと考えています。単なる販売や作業の場にとどまらず、沖縄の自然素材を用いた染色や伝統工芸を、見て、触れて、体感できるアグリツーリズムの拠点づくりを目指しています。
地域資源の価値を再発見してもらい、作り手と使い手が直接つながる新しい循環の形を、ここ沖縄から発信していきます。
沖縄から世界へ。ものづくりの可能性をもっと広げたい
——これからの展望について教えてください。
今考えていることの一つに、プラットフォーム事業があります。まだまだ構想段階ではありますが、沖縄だけでなく、各地方、さらには海外にも広がるような仕組みをつくれたらと思っています。それぞれの地域の強みを活かしながら繋がり、連携し合うことで、技術を残し、モノづくりの可能性を広げたいと考えています。
私は、その地域だけで課題を解決しようとすると、どうしても規模が小さくなると感じています。
だからこそ、今ある技術やネットの力も使いながら、事業者同士が連携しやすくなるような仕組みができれば、もっと意味のあるものづくりが広がっていくのではないかと思っています。
自然の中で自分と向き合い、次の一歩へ向かっていく
——リフレッシュ方法を教えてください。
自然が大好きで、リフレッシュしたいときには海辺を散歩しに行ったり、森や自然を感じられる場所に行きゆっくり過ごす時間を大切にしています。
海や自然がすぐにある沖縄の環境だからこそ、休みの日は自然の中でアーシングする時間が最高のリフレッシュ時間になっています。
——最後に、読者へのメッセージをお願いします。
やりたいことがあるなら、ぜひ一歩踏み出してみてほしいです。私自身も、やりたいという思いがあっても、動き出すまでには時間がかかりました。でも、一歩踏み出してみると、意外と難しくないと感じることもありますし、今まで見えなかった世界が見えてきます。
私は行動して本当によかったと思っています。なので、皆さんもぜひ、その一歩を踏み出してみてください。