“文脈”と“共感”で空間に価値を宿す──株式会社partierが描く、長く続くデザインのかたち

株式会社partier 代表 野澤 隼人 氏

空間設計やインテリアデザインを軸に、多様なプロジェクトを手がける株式会社partier。見た目の美しさにとどまらず、その場で営まれる体験や未来までを見据えた設計を重視しています。本記事では、事業の特徴や独立の背景、組織づくりの考え方、そして今後の展望について野澤隼人氏に伺いました。

空間の“文脈”を読み解く──partierの事業と価値観

――現在の事業内容について教えてください。

住宅や飲食店、宿泊施設、商業施設など、さまざまな空間のインテリアデザインや空間設計を主軸にしています。ただ、単に見た目がかっこいいとか、おしゃれだというところで終わらせるつもりはありません。その場所でどんな体験が生まれるのか、どう未来につながっていくのかまで意識して設計に取り組んでいます。

――他社との違いや強みはどのような点でしょうか。

大切にしているのは「文脈」と「共感」の2つです。文脈というのは、その場所が持っている歴史や文化、背景をしっかり掘り下げることです。表面的なデザインではなく、そこに至るまでの流れを読み取ったうえで設計に落とし込みます。

もう一つの共感は、クライアントの言葉だけをそのまま受け取るのではなく、その裏にある意図まで理解しようとする姿勢です。要望をそのまま形にするのではなく、背景まで含めて考え、時にはオーナー以上に悩みながら最適な答えを探していく。そうした向き合い方を意識しています。

空間は完成した瞬間がゴールではないと考えています。そこに人が集まり、時間が流れ、使われ続けていく中で価値が育っていくものだと思っています。そのため、短期的なインパクトよりも、長期的に残る強さを持った空間づくりを意識しています。見た目の良さだけではなく、使い続けたくなる理由を持たせることが、自分たちの役割だと捉えています。

違和感からの独立──“長く続く空間”へのこだわり

――独立されたきっかけを教えてください。

以前は企業に所属し、店舗デザインや遊休不動産の利活用などに関わっていました。約10年ほど在籍していたのですが、事業規模が大きくなるにつれて、均一化されたものを数多くつくる方向にシフトしていきました。

きれいに整えられた空間ではあるのですが、どこか違和感があったんです。その場所にしかない歴史や文脈をもっと大事にしたいという思いが強くなりました。

――その思いが独立につながったのですね。

そうですね。派手さはなくても、長く続く強度の高い空間をつくりたい。その責任を自分で持ちたいと思ったのが大きな理由です。単にバズるような空間ではなく、時間が経っても価値が残るものをつくる。その考えを軸に、独立という選択をしました。

規模が大きくなるほど効率や再現性が求められるのは理解していますが、それだけでは満たされない部分がありました。一つひとつの場所に丁寧に向き合い、その土地ならではの意味を持つ空間をつくりたいという気持ちは、働く中で徐々に強くなっていきました。自分の判断でその方向に舵を切れる環境を求めた結果が、現在の形につながっています。

“パーティー”という考え方──チームでつくる空間

――組織づくりやパートナーとの関係で大切にしていることは何でしょうか。

社名の「partier」は“パーティー”という言葉の語源が由来になっています。特定の目的に向かって集まる仲間、いわばチームという意味です。設計という仕事は、ひとりで完結するものではありません。

照明、家具、音響、香りに至るまで、それぞれの分野に専門家がいて、みんなで一つの空間をつくり上げていきます。自分がすべてをコントロールするのではなく、それぞれのプロフェッショナルと並列で関わりながら、一つのゴールに向かう。そういうチームづくりを意識しています。

――一緒に働く人に求めることはありますか。

言われたことだけで終わらない人ですね。例えばクライアントとの商談に、予定していた成果物に加え、もう一つお土産を持っていこうとするような気遣いができる人がいいと思っています。

設計の現場では、お客様がまだ言葉にできていないニーズがたくさんあります。それを先回りして引き出すことが大切です。昔の上司から「設計はおせっかいを焼く仕事だ」と言われたことがあって、その言葉は今でも強く残っています。

それぞれの専門家が力を発揮するためには、ただ集まるだけではなく、同じ方向を見ていることが重要だと感じています。そのため、目的や意図を丁寧に共有しながら進めることを意識しています。役割は違っても、全員が一つの空間をつくる当事者として関わる。その関係性が、結果として空間の質にも表れてくると考えています。

地方に眠る価値を未来へ──新たな挑戦と課題

――今後の展望について教えてください。

地方に眠っている古い建物の価値を見つめ直し、それを未来につないでいく取り組みは引き続き続けていきたいです。単なる設計業務にとどまらず、自社事業として宿泊施設などの場づくりにも取り組んでいこうと考えています。

――現在感じている課題はありますか。

一人で会社を運営しているので、営業から設計、契約、経理まで全てを担っている点ですね。その大変さは日々実感しています。

ただ、その中でAIの活用は大きな可能性を感じています。業務を効率化し、余剰の時間を生み出すことを目指しています。週に一度は必ず振り返りを行い、やることとやめることを整理しながら、生産性を高めています。

また、建築や設計の業界自体が長時間労働になりやすい構造を抱えている点も課題だと感じています。そうした環境が若い世代の減少につながっている側面もあると考えています。だからこそ、自分自身の働き方を見直しながら、無理のない形で価値を生み出し続けることが重要だと感じています。効率化と質の両立を目指しながら、持続可能な働き方を模索しています。

譲れない価値観と日常──仕事と人生のバランス

――経営において譲れない価値観を教えてください。

感覚的な部分も大きいですが、違和感を覚える相手とは仕事をしないということは決めています。特に、礼節を欠く人とは関わらないようにしています。最初に感じる小さな違和感は、その後の関係にも影響することが多いので大事にしています。

――リフレッシュ方法についても教えてください。

圧倒的に息子と過ごす時間です。現在は自宅の一室で仕事をしていることもあり、一緒にいる時間が長いのですが、それが自分にとって大きな支えになっています。

自由な働き方を選んだ理由の一つでもありますし、その時間が彼にとっても良いものになっていればいいなと思っています。仕事と生活が近いからこそ得られるものもあると感じています。

仕事において自由であることは、自分にとって重要なテーマの一つです。働き方を自分で選べることで、無理なく続けられる状態を保てています。その結果として、家族との時間も大切にできていると感じています。仕事と生活が切り離されるのではなく、自然につながっている感覚が、今の自分には合っていると考えています。

これからも、自分らしい働き方と家族との時間を大切にしながら、無理なく続けられる形で仕事に向き合っていきたいと考えています。

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