「たらい回し」をなくす――親の老後を、ひとりで抱え込まないために

一般社団法人町田市地域支援協会 代表理事 庄司 有毅氏

一般社団法人町田市地域支援協会は、東京都町田市を拠点に、終活支援・成年後見制度の 活用・遺言・死後事務委任契約など、高齢期にまつわる手続きをまるごと支援する団体です。 

「たらい回しをやめて、相談先をひとつに」という考えのもと、行政や士業では埋められな かった「整理と伴走」の役割を担っています。本記事では、代表理事の庄司氏に、事業の特徴や創業の背景、今後の展望について伺いました。

「何から手をつければいいか分からない」を終わらせる

――現在の事業内容と特徴について教えてください。

当協会のサービスを一言で言うと、「相談先をひとつにする窓口」です。 親の老後や終活に関わる問題は、介護・施設・お金・遺言・相続・死後の手続きと、同時 多発的に起きます。でも今の仕組みだと、それぞれの相談窓口がバラバラで、たらい回しになってしまう。

「介護の相談は地域包括支援センター、遺言は司法書士、施設は紹介業者・・・」という具合に、家族がいくつもの窓口を自分でつないでいかなければならない状況があ ります。 

当協会が担うのは、その「前処理」です。何を優先すべきか整理し、必要な専門家へつな ぎ、全体の進行を管理する。終活に関する相談をワンストップで受けられる体制を整えてい るのが、最大の特徴です。

――どのような方を主なターゲットとしているのでしょうか?

40〜60代の子ども世代です。頭では「親の終活を何か準備しておいた方がいい」と分かっていても、仕事や家庭があっ て後回しにしてしまう。そして実際に何かが起きたとき、初めて本気になる。この構図は、 私が体験してきたこととまったく同じです。

「親が認知症気味で、でも何から手をつければいいか分からない」「突然入院の連絡が来て、仕事を休んで駆けつけたけど手続きが山積みで 途方に暮れた」という状況に追い込まないことが目的です。  

そして、高齢者ご本人様です。ご高齢者様に共通しているのが、「子どもに迷惑をかけたくないから、元気なうちに自分で整えておきたい」という思いです。 実はこれは、子ども世代の気持ちと完全に重なっています。

親は「迷惑をかけたくない」、 子どもは「親に後悔させたくない」向いている方向は違っても、根っこにあるのは同じ家族への思いです。その両方の気持ちに応えられる場所を作りたいというのが、当協会の出発点でもあります。

原体験から生まれた終活支援という事業

――終活支援事業を始めたきっかけを教えてください。

原体験は、祖父母の老後と死に向き合った経験です。 母方の祖父が亡くなった後、祖母が一人で生活を続けてから施設に入ることになりました。 その過程で痛感したのが、手続きの多さと窓口の分散です。役所、施設、金融機関、専門家 ……それぞれに別々で対応する必要があり、当時は親族が奔走していましたが、全員が疲弊 していく様子が記憶に残っています。 

さらに父方の祖母が施設に入った後、コロナ禍で面会のたびに予防接種証明・許可証・各種書類が必要になり、思うように会えない状況が続きました。結果として、最期に立ち会う ことができなかった。 

この二つの経験から感じたのは、「個々の手続きが大変」というより、相談の窓口が分断 されている構造そのものが、家族を疲弊させているということです。対処法が間違っている のではなく、設計が間違っている。そう気づいたことが、この事業を始める動機になりまし た。

――その「構造」を変えるために、具体的にどんな仕組みを作ったのでしょうか?

まず、相談の入り口をひとつにすることです。「介護のことはここ、お金のことはここ」 と窓口が分かれるのではなく、どんな内容でも最初は当協会に相談していただき、私たち が全体を整理して優先順位をつける。その上で、必要な専門家(税理士・司法書士など)や 施設につないでいく。 

私一人が何でもこなすのではなく、「設計と進行管理は当協会が持ち、実務は専門家が担う」という役割分担が機能する体制が、当協会の基本的な構造です。

信頼関係を築くためのコミュニケーションの在り方

――お客様とのコミュニケーションで意識していることは何ですか?

「たらい回し」の反対にあるのは、「信頼できる人がいる」という安心感だと思っています。そのためにまず大切にしているのは、素のままで向き合うことです。

 特に高齢の方に対しては、子どものように感じてもらえるくらいまで距離を縮めることを 意識しています。嘘をつかない、取り繕わない、素で話す。警戒心の強い方もいるので、実 際には何度も足を運び、1カ月、長い場合は半年かけて関係を築いていくこともあります。

 成年後見制度の活用や死後事務委任契約など、センシティブな内容を扱うからこそ、まず 人として信頼していただくことが出発点なんです。

――組織体制や連携の仕組みについて教えてください。

現在は社員という形ではなく、代表である私が中心となり、理事として税理士や司法書士と連携しています。案件に応じて相談を受け、必要な支援を行う体制です。

今後は協業先を増やし、相談の入り口を広げていきたいと考えています。すでに連携している施設もあり、さまざまな関係者と協力しながら支援の幅を広げていきたいです。

次世代への啓発とワンストップ支援の拡張

――今後取り組んでいきたい展開を教えてください。

これまでは主に高齢者本人との関係構築を中心にサービスを提供してきま した。今後は、子ども世代へのアプローチをより強化していきたいと考えています。

現役世代にとって、終活はまだ自分ごとになりにくいテーマだと感じています。実際にその場面に直面するまでは、必要性を意識しにくいからです。

親に何かあったとき、手続きと対応に追われて、仕事も家族も自分のことも後回しになる。そうした状況を防ぐためには、「何かが起きてから動く」ではなく、「起きる前に整えておく」という考え方を広める必要があります。

提供するサービス自体は大きく変わりませんが、対象を現役世代へと広げることで、「万が一のときに困らないためのワンストップ支援」としての役割を強化していく方針です。

「親の終活、何から始める?」という疑問を持った人が、たらい回しに遭わずに最初から 正しい相談先にたどり着ける環境をつくる。そのために、note.comでの情報発信やWebメデ ィアへの露出も含め、オンラインでの接点づくりにも注力していきます。

地域全体をつなぐ窓口を目指して

――現在感じている課題や改善したい点はありますか?

大きな視点では、行政の枠組みとの連携に課題を感じています。

高齢者支援は各自治体の支援センターが担っていますが、運営は委託されているケースが多く、対応の質や方針にばらつきがあります。そのため、統一されたサービスが提供されているとは言いにくい状況です。

当協会は、行政の仕組みを「置き換える」のではなく「補完する」存在だと考えています。 地域包括支援センターなど既存の支援機関と連携しながら、制度の隙間を埋める役割を担い たい。 行政がたらい回しになってしまう構造上の限界は存在します。それを批判するのではなく、 民間として補い合う関係をつくることが、地域の高齢者支援の質を上げることにつながると思っています。

――休みの日のリフレッシュ方法を教えてください。

アウトドアが好きなので、山登りやロードバイクなどで体を動かしています。

子どもと一緒にソフトテニスをすることもあり、外で汗をかく時間がリフレッシュになっています。

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